ビハインド・ザ・フロント』は、1998年6月30日にインタースコープから発売されたアメリカのヒップホップグループ、ブラック・アイド・ピーズのデビュースタジオアルバム。オリジナルメンバーはラッパーのウィル・アイ・アム、タブー、アプライド・アルプ、R&B歌手のキム・ヒルで、ヒルはグループの一員だったがアルバムには写真がなく、アルバム中の数曲にのみ参加している。一部の曲はwill.i.amとapl.de.alpのグループAtban Klannのデビュー予定アルバム『Grass Roots』のデモで、リリースされなかったが、Tabooがラップを追加したものである。
背景
ブラック・アイド・ピーズはロサンゼルスを拠点に1990年代初頭から活動しており、メンバー各自がラップ、プロデュース、ヴォーカルを担当することで知られていた。デビュー作『ビハインド・ザ・フロント』は、彼らが主に自主制作で磨いてきたサウンドをレーベルに持ち込み、より広いリスナー層に届かせた最初の正式リリースである。アルバムの制作にはグループ内のwill.i.am(プロデューサー兼ラッパー)とapl.de.apの関与が深く、既存のAtban Klann時代のデモ曲を再構築したトラックも収録されている。
音楽性と制作
音楽的には、ジャズやソウルの要素を取り入れたオルタナティヴ/コンシャス・ヒップホップ寄りのサウンドが特徴で、ブームバップのビート、サンプリング、ライブ感のある楽器アレンジが組み合わされている。歌詞は社会問題や自己表現、コミュニティへの視点などを中心に据え、当時の主流ポップ寄りのヒップホップとは一線を画す内容が多い。プロダクションは主にグループ内部で手掛けられ、外部のゴーストプロデューサーに依存せずに独自の音作りを行った点が評価されている。
リリースと批評・商業的反応
発売当初は大きな商業的成功を収めたわけではないが、批評家からは制作力とリリックの誠実さが評価された。アルバムはアンダーグラウンド寄りのヒップホップファンを中心に支持を得て、グループの音楽的基盤を固める役割を果たした。チャート上の大ヒットには至らなかったものの、その後のキャリアにおける転機(2000年の2作目『Bridging the Gap』、および2003年以降のポップ/ダンス寄りの大ブレイク)への布石となった点で重要視されることが多い。
メンバーとゲスト
- 主要メンバー: will.i.am、apl.de.ap、Taboo、キム・ヒル(当時の一員)
- キム・ヒルはグループの一員として数曲に参加しているが、アルバムの写真やプロモーションで大きく取り上げられることは少なかった。
- 一部の楽曲は、will.i.amとapl.de.apが在籍していたAtban Klann時代のデモを基にしており、Tabooが後からラップを加えて完成させたものが含まれている。
影響とその後
『ビハインド・ザ・フロント』はブラック・アイド・ピーズの初期音楽性を示す作品として評価されており、後年のポップ寄りの大衆路線へと移行する前の“原点”を知るための重要なアルバムである。アルバム後、グループは2000年にセカンドアルバム『Bridging the Gap』を発表し、さらに2003年の『Elephunk』でメンバー構成や音楽性が変化、商業的大成功を収めることになる。キム・ヒルはその後グループを離れ、ブラック・アイド・ピーズはFergie加入を経てポップシーンでの地位を確立した。
補足
本作は当時のローカルなヒップホップ・シーンと黒人コミュニティに根ざした視点を持ちつつ、プロダクション面で既に将来性を感じさせる内容になっている。現在ではコアなファンやヒップホップ史の観点から再評価されることも多く、バンドの歴史を語るうえで欠かせない一枚とされている。