ヴァン(トルコ東部の都市)—ヴァン湖沿岸の歴史・地理・人口概要
トルコ東部ヴァン市とヴァン湖沿岸の歴史・地理・人口を豊富な資料で分かりやすく解説。観光・文化背景まで網羅した総合ガイド。
ヴァン(Armenian Վան)は、トルコ東部の都市で、ヴァン県の県庁所在地であり、ヴァン湖の東岸に位置している。2005年の人口は284,464人である。東洋百科事典によると、クルド人が多数を占めるが、トルコでは民族に基づく国勢調査が行われたことはない。
地理
ヴァンは内陸の高原地帯にあり、標高はおよそ1,700メートル前後である。都市はトルコ最大の湖であるヴァン湖の東岸に位置し、湖はアルカリ性(ソーダ湖)で知られているため独特の生態系を持つ。湖には島が点在し、中でもアクダマル島(Akdamar)には有名な聖十字教会(Akdamar Kilisesi)があり、多くの歴史的・観光的価値を有する。
歴史
ヴァン周辺は古代から人が定住した地域で、古代ウラルトゥ王国(Urartu)の中心地のひとつであった。中世以降はアルメニア人やセルジューク朝、オスマン帝国などがこの地域を支配してきた。20世紀初頭にはアルメニア人コミュニティが大きな存在感を示しており、多くの宗教建築や文化遺産が残されたが、第一次世界大戦前後の情勢変動により人口構成は大きく変化した。
人口・民族
歴史的にはアルメニア人が多く暮らしていた時期もあるが、近現代ではクルド人が多いとされる。上にある通り、トルコの公的統計では民族別の国勢調査が実施されていないため、正確な民族比率は公表されていない。都市化や経済的要因により近年は人口が増加しており、周辺地域からの移住も見られる。
経済・産業
地域経済は農業・畜産が中心で、干し草や家畜、穀物栽培が盛んである。ヴァン湖の特性に合わせた漁業も行われており、特に地元にとって重要な魚種である「inci kefali(パール・マレット)」は、湖から河川へ遡上して産卵する習性で知られている。近年は観光も成長分野で、歴史遺跡や自然景観、湖の観光が注目されている。
文化・名所
- ヴァン城(Van Kalesi):古代から続く城跡で、湖を見下ろす立地にあり遺跡として保存されている。
- アクダマル島の教会(Akdamar Kilisesi):アルメニア建築の傑作の一つで、壁面彫刻が有名。
- ヴァン猫(Van cat):白地で部分的に色のついた毛色、異色の瞳を持つことがある猫で、この地域のシンボル的存在。
- 伝統的な朝食文化や乳製品(チーズ類)などの食文化も特色があり、訪問者に人気がある。
交通
ヴァンには国内線の空港(Ferit Melen Havalimanı)があり、国内の主要都市と結ばれている。湖を横断するフェリーや周辺都市への道路網により、地域内外との連絡が確保されている。地理的にイラン国境にも比較的近いため、国際的な交易路としての役割も持つ。
気候
標高の高い内陸性気候で、冬は寒く降雪も多く、夏は乾燥して比較的暖かい。気温差が大きいため、四季の変化がはっきりしている。
近年の出来事
近年、地震など自然災害による被害を受けたことがあり、復興・再建の取り組みが続いている。またインフラ整備や観光振興を通じて地域の活性化が図られている。
この地域の歴史的・文化的背景は複雑であり、多様な民族と宗教の痕跡が残る。訪問や研究にあたっては、歴史的事実と現地の状況を丁寧に把握することが重要である。

ヴァン旧市街にある遺跡。
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