防振とは|振動制御・ベースアイソレーションの仕組みと用途
防振の基本と仕組み、振動制御・ベースアイソレーションの実用例を分かりやすく解説。機械や建築の振動対策・選び方と導入効果を実務視点で紹介。
防振とは、機械や構造物を振動する支持体から切り離すための装置やシステムを指します。振動源から伝わる衝撃や周期的な揺れを抑え、対象物やその周囲に及ぶ悪影響(疲労破壊、騒音、精度低下、人体への不快感など)を低減することが目的です。防振は単に振動を受け流すだけでなく、振幅を小さくする・共振を避ける・エネルギーを吸収する、といった複数の手段を組み合わせて実現されます。
例えば、右の写真のソーは、ハンドルとエンジン、カッティングバーを分離し、オペレーターの揺れを軽減しています。ここでは、スプリングマウントがこの防振システムの一部となっています。小型工具ではゴム系のマウントやスプリング・ダンパーの組合せが多く用いられ、人の手や機器内部の精密部品を保護します。
防振の仕組み(基本原理)
- 隔離(アイソレーション): 支持体と対象物の間に柔らかい要素(スプリング、ゴム、エラストマーなど)を入れて、振動を伝えにくくする。
- 減衰(ダンピング): 振動エネルギーを熱などの形で吸収して振幅を素早く小さくする。粘性ダンパーや摩擦ダンパーが使われる。
- 質量と固有振動数の調整: 対象物の質量や支持剛性を設計して、外来振動の周波数と共振しないようにする(例えば、チューンド・マス・ダンパー)。
主な防振部材と方式
- ゴム・エラストマーマウント(振動吸収性に優れ、機械的支持と防振を両立)
- スプリングマウント(低周波の振動を効果的に隔離)
- 粘性ダンパー・油圧ダンパー(動的なエネルギーを効率よく吸収)
- チューンド・マス・ダンパー(建物や機械の特定周波数での振動を抑制)
- ベースアイソレーション(下部にアイソレータを入れて建物全体の地震応答を低減)
用途と事例
- 小型機器:工作機械、発電機、エンジンなどの防振で精度維持や作業者の快適性を確保
- 建築・インフラ:高層ビルや重要施設での地震対策としてのベースアイソレーションやダンパー設置((ビルや橋など)には、防振をベースアイソレーションと呼ぶこともあります。)
- 精密機器:半導体製造装置や医療機器ではナノレベルの振動制御が必要
- 輸送機器:列車や航空機の乗り心地向上、機器保護用の防振設計
ベースアイソレーションと防振の違い
ベースアイソレーションは、特に建物や橋などの比較的大きな構造物に対して用いられる防振手法で、支持基礎と構造物本体の間にアイソレータ(鉛ダンパー、積層ゴム支承、モノブロックアイソレータ等)を挿入して地震動などの入力を低周波側にシフトし、建物の応答を低減します。一般的な機械系の防振が機器単位での振動伝達を抑えるのに対し、ベースアイソレーションは構造全体の運動特性を変える点が特徴です。防振は、振動制御と呼ばれる保護技術の一分野であり、用途やスケールに応じて手法を選びます。
設計上のポイント
- 振動の周波数スペクトルを把握する(入力振動の周波数成分と強度)
- 対象物の質量・剛性・取り付け条件を考慮して支持要素を選定
- 固有振動数を入力周波数から十分離す(アイソレーション効果を得るための目安:支持系の固有周波数が入力周波数の1/√2以下などの指標があります)
- ダンピング値(減衰比)を適切に設定し、過大な共振応答を防ぐ
- 温度や荷重変動、経年劣化を考慮した安全余裕の確保
保守・点検と寿命
ゴム部材や油圧部品は経年で性状が変化するため、定期点検が重要です。割れ、硬化、漏れ、固定部の緩みなどを早期に発見して交換・補修することで、防振性能を長期間維持できます。また、設置後の挙動をモニタリングして想定外の振動モードが発生していないか確認することも推奨されます。
まとめ
防振は単に振動を「減らす」だけでなく、用途や対象物に応じて隔離・減衰・共振回避を組み合わせる工学技術です。小型機械から橋梁や建物のような大規模構造まで幅広く適用され、適切な設計・部材選定・保守によって安全性・快適性・精度を大きく向上させます。

エンジンから切り離されたのこぎり。
歴史
当初から、一般的な防振理論、特に免震理論は、重い減衰と周波数分離という2つの柱で成り立っていました。しかし残念なことに、重減衰は下部構造と上部構造との間の一種の強い結合であり、このような結合の助けを借りて両者を切り離そうという考えは無意味であることを誰も気に留めなかった。
関連ページ
- 減衰
- 振動
- 地震対策用プロテクター
百科事典を検索する