クセノファネス(コロフォン出身): 古代ギリシャの哲学者・詩人・宗教・社会批評家
コロフォン出身のクセノファネス:古代ギリシャの哲学者兼詩人が宗教や社会を鋭く批評。詩片から紐解く思想と影響をわかりやすく紹介。
コロフォンのクセノファネスは、ギリシャの哲学者、詩人、社会・宗教批評家である。
彼の考え方は、後世のギリシャ人作家による引用として残っている彼の詩の断片から知ることができる。そこから判断すると、彼の詩は幅広い思想を批判し、風刺していることがわかる。ホメロスやヘシオドス、擬人化された神々のパンテオンへの信仰、ギリシャ人の陸上競技や運動競技への愛着などである。彼は、後世のために書いていることを明確に主張し、「ギリシャ全土に届く名声、そしてギリシャ的な歌が存続する間は決して死なない」ことを作り出した最も早いギリシャの詩人である。
生涯(概略)
クセノファネスは紀元前6世紀末から紀元前5世紀初頭(一般に約紀元前570年頃〜紀元前480年頃)に生きたとされる。小アジアの都市コロフォン(コロポーンとも表記)出身で、後にイタリア南部やシチリア島など地中海西部を旅したと伝えられる。多くの詩は散逸し、現存するのは他の作家による引用や断片のみである。
思想と主張
- 宗教批判と非擬人的神観:クセノファネスはホメロスやヘシオドスが描くような人間的欠点をもつ神々の描写を鋭く批判した。彼は、神は人間に似ているわけではなく、むしろ一つの偉大な存在(単一神)的な概念を提示する詩句を残している。神は全能で全知に近く、人間のような情欲や欠陥を持たないと論じた。
- 認識論的懐疑:「人は本当に知ることはできない、ただ推測するだけだ」という趣旨の断片を残し、確実な知識の限界を指摘した。彼は断定的な主張に慎重で、観察や論証の重要性を示唆している。
- 倫理的・社会的批評:詩を通じて、神話的な言説が道徳観や社会慣習に与える影響を問題視し、神話に基づく不道徳の正当化を批判した。また、虚栄や競争(体育祭など)を風刺する作品もある。
- 自然観察の萌芽:山に見られる貝殻の化石などを引き合いに出して自然や地理の変化を指摘する断片もあり、単なる神話批判にとどまらない自然現象への関心も示している。
文体と作品
クセノファネスはイアンボス(風刺詩)やエレギア(哀歌)などの詩形を用い、厳しい風刺と簡潔な表現で知られる。彼の作品は断片の形でしか伝わらないが、その言葉づかいは強い批判的トーンと論理的な示唆に満ちている。
代表的な断片(意訳)
- 「もし馬や牛やライオンが手を持って、彫刻や絵を描けたなら、馬は馬の形をした神を、牛は牛の形をした神を彫るだろう」 — 擬人化された神への批判を簡潔に示す有名な寓話。
- 「人は知ることはできない、ただ推測するだけだ」 — 知識の限界に関する重要な観点。
- 「一つの神、神々と人々の中で最も偉大な者、身体や精神が人間のようではない」 — ユニークな神観を示す断片。
影響と評価
クセノファネスは、後代の哲学者や詩人に少なからぬ影響を与えた。特に神の本性や知識の問題をめぐる議論において重要視され、パルメニデスなどの前ソクラテス派の思想史にも位置づけられることがある。宗教批評と哲学的懐疑を詩的に結びつけた点は、古代ギリシャ思想の多様性を示す好例である。
断片の伝承
現存する断片は他の作家や論者による引用として伝わるため、前後関係や原文の完全さに欠けることが多い。学術的にはこれらを総合してクセノファネスの思想を再構成する作業が行われているが、断片限りのため解釈に幅が残る。
フィロソフィー
クセノパネスが残した著作には、前4世紀に一般化した懐疑論が表れている。彼は、それ以前のギリシャの詩人や同時代の詩人たちの多神教的な信仰を風刺している。「ホメロスとヘシオドスは、人間の間で非難され、糾弾されるようなあらゆることを神々に帰結させた」とある。セクストゥス・エンピリカスは、このような考え方はキリスト教の弁解者たちに好まれていると報告している。アレクサンドリアのクレメンスにはクセノファネスが引用され、神々が基本的に擬人化された存在であるとする考え方に反論しているのが印象的である。しかし、もし牛や馬や獅子に手があり、
手で絵を描き、人間のように作品を作る
ことができるなら、
馬のような馬や牛のような牛も、
神の形を描き、その体を
彼ら自身の持つ形と同じようなものにするだろう..
....」と。
エチオピアの神々は鼻ぺちゃで黒いという。
トラキア人は、色白で赤毛だという。
一神教徒?
神は一つであり、神々と人間の中で最高であり、肉体的にも精神的にも人間とは違う」と述べたことから、彼が最初の一神教徒であるとする説がある。また、彼がまだ他の神々に言及していることを指摘する人もいた。
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