5145フォルス(ケンタウルス天体)とは?軌道・発見・性質の解説
5145フォルス(ケンタウルス天体)―赤い「ビッグレッド」の正体、独特な軌道と希少な接近、発見経緯と起源、サイズや性質を詳しく解説。
5145 フォルスは、近日点が土星軌道より内側に入り、遠日点が海王星軌道より外側に達する、引き伸ばされた軌道を持つ太陽系のケンタウルス族小天体です。軌道の性質から惑星軌道の間を横切ることがあり、惑星近傍にしばしば入り込むわけではないため、他の小天体とは異なるダイナミクスを示します。長期の軌道計算によれば、フォルスは紀元前764年以降いずれの惑星にも1天文単位(約1億5000万km)以内に接近した記録がなく、5290年までは再びそのような近接は起きないと推定されています。天文学者はこの天体が元々はカイパーベルト領域で形成され、その後外惑星の摂動によって現在のケンタウルス軌道に転送されたと考えています。
発見と命名
フォルスは、アリゾナ大学のスペースウォッチ計画の観測でデビッド・L・ラビノウィッツ(David L. Rabinowitz)によって発見されました。発見後、ギリシア神話に登場するケンタウルスの一人「フォルス(Pholus)」にちなみ命名されました。ケンタウルス族小天体の命名は2060年のカイロン(Chiron)にならい神話上のケンタウルス由来の名前が用いられる伝統に従っています。
軌道の特徴
フォルスの軌道は高い離心率を持ち、近日点は内側(木星や土星に近い領域)へ入り、遠日点は海王星外側まで伸びます。こうした軌道は外惑星の重力の影響を受けやすく、長期的には軌道要素が大きく変化する可能性があります。ケンタウルス天体として、将来的に彗星のような振る舞いを示す可能性や、逆に外側へ放り出される可能性など、さまざまな進化経路が考えられます。
物理的性質
フォルスは非常に赤い表面色をしていることで知られ、しばしば「ビッグレッド(Big Red)」と呼ばれます。この強い赤色は、表面に存在する複雑な有機化合物(放射化学的に生成された「ソリン」や「ソリン類似物質(tholins)」など)が太陽風や宇宙線によって変化した結果と考えられています。スペクトル観測では有機物由来とみられる吸収特徴が示唆される一方で、明確な氷の特徴は他の天体に比べて弱いことが多いです。
直径は観測と熱赤外データの解析から約185±16kmと推定されています。アルベド(反射率)は低めであると報告されており、それが暗く赤い見かけにつながっています。
彗星活動の有無
2060年のカイロンが時折彗星のような活動を示すのに対し、フォルスはこれまでの観測で明確な彗星活動(ガスやダストの放出)を示していません。これは表面が古く被覆物に覆われているために揮発成分が表面まで出てきにくい、あるいは現在の軌道で表層の揮発物がほとんど失われているためと考えられます。
起源と将来の進化
フォルスのようなケンタウルス天体は、一般にカイパーベルトや散逸円盤領域で形成され、その後外惑星との重力相互作用で軌道が乱されて内側へ移動してきたと考えられています。ケンタウルスの動的寿命は通常数百万年程度とされ、長期的には太陽系外縁へ追い出されるか、木星などによって内側へ投げ込まれ彗星活動を起こす可能性があります。
観測と研究の重要性
- 表面組成の手がかり:強い赤色やスペクトル特性は、太陽系外縁での有機化学や放射化学の作用を理解する手がかりになります。
- 太陽系の進化史:ケンタウルスはカイパーベルトと内側太陽系を結ぶ重要な中間体であり、その軌道・物理特性の研究は小天体の供給源や太陽系形成後の物質移動を解明する助けとなります。
- 将来ミッションの候補:比較的大きく明るいケンタウルスは将来の探査ミッションの候補にもなり得ます。フォルスのような天体を直接観測すれば、表面の化学組成や地質学的履歴をより詳しく調べられます。
まとめると、5145 フォルスはその極端に赤い表面と外惑星を横切る伸びた軌道により、太陽系外縁の化学過程や小天体のダイナミクス研究で重要な存在です。今後も光度測定や分光観測を通じて表面組成や回転特性の解明が進められています。
質問と回答
Q: 5145フォルスとは何ですか?
A: 5145 フォルスは、近日点(太陽への最接近)が土星より小さく、遠日点(太陽からの最接近)が海王星より遠い、伸びた軌道を走る太陽系のケンタウルス(小惑星)である。
Q: 5145フォルスの発見者は誰ですか?
A: 5145 フォルスは、アリゾナ大学のスペースウォッチ・プロジェクトに所属していたデビッド・L・ラビノウィッツ(当時)によって発見されました。
Q: なぜ「ビッグレッド」と呼ばれているのですか?
A: 「ビッグレッド」と呼ばれているのは、非常に赤い色をしていることがすぐにわかったからです。この色は、表面にある有機化合物のせいだと天文学者は考えています。
Q: 5145 フォルスが最後に1天文単位(約1億5千万km)以内の惑星に近づいたのはいつですか?
A: 5145 フォルスが最後に惑星から1天文単位(約1億5千万km)以内に入ったのは、紀元前764年です。
Q: 次に惑星から1天文単位(約1億5千万km)以内に入るのはいつですか?
A: 5145フォルスが次に惑星から1天文単位(約1億5千万km)以内に入るのは、5290年です。
Q: この天体から彗星活動の兆候は出ていますか?
A:いいえ、この天体から彗星活動の兆候はありません。
Q: この天体の直径はどのくらいと推定されていますか?
A: 天文学者は、フォルスの直径は約185±16kmだと考えています。
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