バリントン・サマース・ペロウン(Barrington Somers Pheloung、1956年ニューサウスウェールズ州シドニー生まれ)は、オーストラリアの作曲家で、かつてはイギリスに在住し、2019年に逝去した。テレビ、映画、舞台、ダンス作品、さらにはコンピュータゲーム音楽まで幅広い分野で活躍し、特にテレビドラマのテーマ音楽で広く知られている。
経歴と活動の概略
シドニー生まれのペロウンは、若い頃から音楽に親しみ、後に英国の制作現場を中心に活動の場を広げた。オーケストラ作品から小編成の室内楽、電子音響を取り入れたスコアまで幅広く手がけ、その確かな旋律感とドラマを支える効果的な編曲で高い評価を得た。
テレビ作品
ペロウンの名を一躍広めたのは、英国の長寿推理ドラマ群のために作曲した音楽である。1991年の英国アカデミー・テレビ賞で「最優秀オリジナル・テレビ音楽賞」にノミネートされたモース警部のテーマと付帯音楽は特に有名で、続編のルイスや前日譚のエンデバーでも同様に印象的な音楽を提供した。これらのテーマはシリーズの象徴として定着し、作品世界の気配や人物描写を音楽で的確に表現している。
また、BBCのテレビシリーズ「Dalziel & Pascoe」のテーマ音楽も担当し、英国テレビドラマの音楽分野で重要な存在となった。
映画・ゲーム・舞台の仕事
映画音楽では、チェリストの生涯を描いた『ヒラリーとジャッキー』のスコアが高く評価され、第52回英国アカデミー映画賞では「アンソニー・アスキース賞(映画音楽賞)」にノミネートされた。その他の映画作品には、A Previous Engagement、The Little Fugitive、Shopgirl、Touching Wild Horses、Twin Dragons、Shopping、The Manglerなどがある。
コンピュータゲームの分野でも活動しており、Revolution Softwareのアドベンチャーゲーム「In Cold Blood」や「Broken Swords」の最初の2作の音楽を担当した。これらの作品ではドラマ性と雰囲気作りに長けた作風が、ゲームの物語表現を支える重要な要素となっている。
舞台・ダンスの分野でも作品を提供しており、ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・シアターをはじめとするダンス・カンパニーや、ミレニアム・ドームのオープニング・ナイトのための音楽など、大規模イベント向けの作曲も手がけた。ほかにもシドニー・オペラハウスの20周年記念式典の音楽や、彼自身も出演した映画『Truly, Madly, Deeply』の音楽など、多岐に渡る活動歴がある。英TVシリーズBoon(邦題:ブーン)の第1シリーズの付帯音楽も作曲している。
作風と評価
ペロウンの音楽は、印象的な主題(テーマ)を中心に据え、それを様々な編成や色彩で展開する手法が特徴的である。ドラマの感情や登場人物の内面を繊細に表現する能力に長け、弦楽器や木管、ピアノなどアコースティック楽器を効果的に用いることで、叙情性と緊張感を同時に醸成する。テレビや映画の世界において「語り」を補完する音楽家として高い評価を受けた。
受賞・ノミネート
- 1991年:英国アカデミー・テレビ賞(BAFTA)「最優秀オリジナル・テレビ音楽賞」ノミネート(モース警部)
- 第52回英国アカデミー映画賞:映画音楽部門ノミネート(『ヒラリーとジャッキー』)
遺した影響
ペロウンの作ったテーマ音楽は、放送終了後も繰り返し演奏され、テレビドラマの世界観を象徴するものとして記憶され続けている。映像作品のための作曲家として、ストーリーと人物を音楽で支える手腕は多くの後進作曲家に影響を与えた。ジャンルを横断する幅広い活動は、彼の実力と柔軟性を示している。