メルビン・エリス・カルビンMelvin Ellis Calvin、1911年4月8日 - 1997年1月8日)は、アメリカの化学者で、光合成における炭素固定の反応経路を解明したことで知られる。カルビンは、アンドリュー・ベンソン、ジェームズ・バスシャムと共同で現在「カルビンサイクル(Calvin–Benson–Bassham cycle)」と呼ばれる一連の反応を明らかにし、この業績により1961年にノーベル化学賞を受賞した(1961年のノーベル化学賞はカルビン個人に与えられた)。カルビンは、キャリアの長いあいだカリフォルニア大学バークレー校で研究と教育に従事した。

カルビン教授らの最大の貢献は、炭素同位体(炭素-14)をトレーサーとして用いる実験手法を駆使し、光合成中の炭素の流れを時間分解して追跡した点にある。実験では、植物(あるいは藻類)に短時間だけ放射性の炭素-14を含む二酸化炭素を供給し、反応を瞬時に停止させて生成物を抽出、紙クロマトグラフィーやオートラジオグラフィーなどで中間体を同定した。これにより、二酸化炭素がどのような中間体を経て最終的に炭水化物などの有機化合物になるかを時間的に「マッピング」することが可能になった。

この方法で、最初に固定される安定な産物として3-ホスホグリセリン酸(3-PGA)が見いだされるなど、カルビンと共同研究者たちは反応経路の主要段階を示した。全体の反応は一般に次の三段階に整理される:(1)炭素固定(CO2の付加)、(2)還元(ATP・NADPHを用いた炭素骨格の還元) 、(3)再生(CO2受容体であるリブロース-1,5-ビスリン酸の再生)。彼らの成果は、太陽光がクロロフィルによって集められたエネルギーを化学エネルギー(有機化合物)に変換する具体的な化学過程を示した点で画期的だった。

カルビンらの研究は、光合成の基礎的理解を大きく前進させただけでなく、農学・環境科学・気候変動研究・バイオエネルギー開発など多方面に応用的な影響を与えた。カルビンサイクルの詳細が分かることで、作物の炭素同化や効率向上の研究、光合成を利用した二酸化炭素吸収や合成生物学の設計などが進展した。

カルビンは研究業績により1961年にノーベル化学賞を受賞したが、共同研究者であるアンドリュー・ベンソンやジェームズ・バスシャムらの貢献も重要であったことが広く認識されている。のちにカルビンは自らの研究や科学人生をまとめた自伝、『光の軌跡をたどって:科学の旅』を著している。

また、1950年代には一般的な複合システムや相互作用を扱う研究に関わり、一般システム研究学会の初期メンバーの一人でもあった。1963年には分子生物学の分野でも教授職に就き、学際的な研究と教育に寄与した。

カルビンは1997年1月8日に亡くなったが、その業績は現在も光合成研究の基盤として生き続けている。彼の名前は学術用語としての「カルビンサイクル」に残り、植物生理学や生化学の教育でも基本的な内容として教えられている。

  • 主要業績:カルビンサイクルの解明、炭素-14を用いたトレーサー実験手法の確立
  • 受賞:1961年 ノーベル化学賞(単独受賞)
  • 影響:光合成研究の基礎確立、農業・環境・バイオエネルギー分野への波及効果