ベリンバウとは ブラジルの伝統単弦打楽器とカポエイラでの役割

ベリンバウポルトガル語発音:[beɾĩ baw])は、ブラジルの単弦打楽器、音楽弓である。カポエィラでは、カポエィリスタがロダを演奏する際、ベリンバウがその動きをリードし、ベリンバウが速く演奏されるほど、カポエィリスタも速く動く。

概要と特徴

ベリンバウは一本の弦(しばしば古タイヤのワイヤーを流用)をたわませた弓状の木材と、共鳴体として取り付けられたカバサ(くり抜いたひょうたん)から成るシンプルながら表現力の高い楽器です。演奏者は片手で弦を弾き、もう一方の手で共鳴体の位置や金属片(石やコイン)を押さえ音程や音色を変化させます。

主な構成要素

  • ヴェルガ(verga):しなる木の弓本体(伝統的には柔軟な木材を使用)。
  • アラメ(arame):張られる弦(金属ワイヤー)。
  • カバサ(cabaça):共鳴体となるひょうたん。胴体に当てて音色を作る。
  • ドブラオン/ペドラ(dobrão/pedra):音程を変えるために弦に当てるコインや石。押し付ける位置で高さが変わる。
  • バケタ(baqueta):弦を叩く細いスティック(通常は木製)。
  • カシシ(caxixi):オプションの小さなシェイカー。ベリンバウと一緒に持ってリズムを補強する。

演奏法の基本

演奏者はベリンバウを斜めに構え、カバサを体に密着させて共鳴をコントロールします。右手(または利き手)でバケタを使って弦を叩き、同時に左手でドブラオンやペドラを弦に当てて音程を変化させます。カバサの距離を体に近づけたり離したりすることで、音量・音色が変わります。カシシを持つ場合は、弦を叩く手と同時に振って高音域のパーカッシブな響きを加えます。

種類と役割(カポエイラ内)

カポエイラの演奏では、ベリンバウは複数で役割分担をすることが多く、一般に以下の3つのタイプがあります。

  • グンガ(gunga):最低音域を担当する大型のベリンバウ。リズムとテンポを安定させる役割。
  • メディオ(medio):中音域。グンガとビオーラの橋渡しをする。
  • ビオーラ(viola):高音域でメロディックな装飾や呼びかけを担当することが多い。

これらが合わさることで、ロダ(カポエィラの円形の場)の雰囲気やゲームの種類、参加者の動きが決まります。ベリンバウは単に伴奏するだけでなく、どのトゥッキ(toque:リズム)を演奏するかによってゲームの速度やスタイル(アンゴラ、レジオナル等)を決定します。例えば、ゆったりとした「Angola」系のリズムなら低く遅い動きのゲームに、速い「São Bento Grande」系のリズムなら激しい動きのゲームになります。

歴史と文化的背景

ベリンバウは主にアフリカ系の伝統にその起源を持つとされ、植民地時代にアフリカからブラジルに渡った楽器・演奏法が発展して生まれました。特にアンゴラ地方の弓状楽器との関連が指摘されています。カポエイラという武術・舞踊・音楽が融合した文化の中で、ベリンバウは宗教的・社会的役割も帯びながら重要な位置を占めてきました。

現代での利用と影響

今日ではベリンバウはカポエイラの枠を超えて、ブラジル音楽全般やワールドミュージックの中でも用いられています。改良や多様な奏法の導入により、伝統的な表現を守りつつも新しい音楽的可能性が広がっています。また、素材や制作技術の工夫によって、家庭で簡単に作れる道具としても広まり、教育的・文化保存の観点からも注目されています。

備考(演奏を始める人へのヒント)

  • まずはリズム(toque)をよく聞いて、グンガの拍を感じること。
  • ドブラオンやペドラの押し方を変えると微妙に音程が変わるので、少しずつ押さえる位置を試して好みの音を見つける。
  • カバサの位置を動かして共鳴の変化を体感すること。体に当てる角度や位置で音色が大きく変わる。
  • カシシを使う場合は、弾く手と振る手のタイミングを合わせリズムを安定させる練習をする。

ベリンバウは見た目は素朴でも、奏者の微細な操作で豊かな表現が可能な楽器です。カポエイラの中心的存在として、音楽と身体表現を結びつける重要な役割を担っています。

ヴィオラ、メディオ、グンガZoom
ヴィオラ、メディオ、グンガ


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