サパルマン・ソディメジョ、通称ムバ・ゴト(1870年12月31日生まれ - 2017年4月30日)と呼ばれるインドネシアの男性は、確証はないが140歳以上まで生きたとされる人物であった。報道では生年を1870年とする資料が示され、2017年の死去時には140歳台後半と報じられたこともある。もし真であれば記録上の最高齢を大きく更新することになるが、公的な長寿記録としては認められていない。

背景と主張された証拠

Mbah Gotho自身は幼少期の正確な生年月日を覚えていないとされるが、1880年代に建設された地元の砂糖工場についての記憶を語っていたと報じられている。地元当局は2010年に彼を「140歳以上」として登録し、2014年に発行された身分証(ID)には生年月日として1870年と記入された。このためメディアやSNSを通じて「140歳超」の話が広まった。

検証の問題点

  • 公式な出生日を裏付ける一次資料(出生証明書、教区簿、当時の戸籍や国勢調査記録など)が提示されていない。長寿記録の国際的な審査機関はこうした一次資料を厳密に要求する。
  • 身分証に記載された生年は、後年になって作られた書類に基づくものであり、発行時に申告された年齢がそのまま記載されるケースがある。即ちIDの記載だけでは生年の信頼性に限界がある。
  • 19世紀のオランダ領東インド(現インドネシア)では、地域や宗教によって戸籍制度の整備に差があり、特に農村部では出生記録が残っていないことが多い。これが検証を難しくしている。

科学的・専門家の見解

公的に「世界最高齢」と認められるには、継続的で矛盾のない系譜記録や当時の公式書類の提出が必要である。年齢の確認を専門とする団体(例:Gerontology Research Groupやギネス世界記録など)は、出生記録、婚姻記録、子どもの出生記録、政府発行の各種証明書などを総合して年齢を検証する。ムバ・ゴトの場合、こうした必要十分な証拠が公表されていないため、世界最高齢としては認定されていない。

年齢の検証が厳しい理由には、記録の欠落だけでなく、家族の口伝や記憶の混同、戸籍登録時の誤記載や故意の年齢申告の可能性などもある。科学的には、人体の寿命には上限があるとする研究と、極めて稀な超高齢者の報告が存在するが、検証可能な事例のみが公式記録として採用される。

比較例

現在、年齢が証明された最高齢の人物として広く認められているのはジャンヌ・カルマンで、彼女の検証された最高年齢は122歳である。ムバ・ゴトの主張が正しければこの記録を大幅に上回るが、前述の通り十分な一次資料がないため正式な記録更新とはなっていない。

まとめ

ムバ・ゴトの話は、記録の不備や口承文化が残る地域では長寿に関する主張が発生しやすいことを示している。文化的・地域的な背景や個人の記憶は重要な史料ではあるが、国際的な長寿記録として認められるには厳密な文書的証拠が必要である。ムバ・ゴトのケースは注目に値する興味深い事例だが、現時点では「確認された世界最高齢」としては扱えない点に留意されたい。