スティーブンソン2-18(St2-18)—散開星団近傍の太陽2150倍の赤色超巨星
スティーブンソン2-18 — 散開星団近傍の赤色超巨星。太陽の2150倍の半径、M6、約6,000pcに位置する極めて巨大で明るい天体の謎。
スティーブンソン2-18 (St2-18, Stephenson 2-DFK 1, RSGC2-18) は、赤色超巨星 (RSG) として分類される極めて大きな恒星で、スティーブンソン2(Stephenson 2、別名 RSGC2)という散開星団の近傍に位置しており、そのメンバーである可能性が示唆されています。地球からは約6,000パーセク(約20,000光年)の距離にあり、銀河系内の赤色超巨星の中でも特に巨大・高光度な天体の一つと考えられています。
基本的な物理量
- スペクトル型:M6 — 超巨星としては遅い(低温側)のタイプで、可視光では赤く見えます。
- 有効温度:約3,200 K(低温に対応)
- 半径:半径は太陽の2,150倍(推定)
- 体積:太陽の約10億倍(10^10倍)に相当するとされる大きさ
- 光度:直接測定には距離や降光の不確定性が伴いますが、一般的に赤色超巨星として数×10^5〜10^6倍の太陽光度と推定されます。
天体の特徴と進化的意義
St2-18 のような赤色超巨星は進化の晩期段階にある高質量星(初期質量は数十太陽質量と推定される場合が多い)であり、燃料消費に伴って外層が膨張し低温化した状態です。M6という後期型のスペクトルは表面温度が低く、分子吸収帯(チタン酸化物など)が強く現れることを示します。
この種の星は強い質量放出(高い質量損失率)を示すことが多く、周囲に塵やガスの殻(降着円盤や分厚い外層)を形成します。これにより赤外線で明るくなったり、可視光での暗化(降光)を引き起こしたりします。さらに、赤色超巨星は将来的に鉄コア崩壊型の超新星を起こす候補と考えられており、St2-18 も銀河系内で興味深い「超新星前兆」を観測する対象となっています。
観測上の注意点と不確定性
- 距離や星団への所属の確定には高い不確実性が伴います。降光(星間塵による減光)やスペクトルの特殊性により、光度や半径の推定値には誤差が含まれます。
- 散開星団スティーブンソン2は大量の赤色超巨星を含むことで知られ、群としての年齢や金属量の評価も個々の星の物理量推定に影響します。St2-18 の所属が確定すれば、より正確な初期質量・進化段階の推定が可能になります。
- 観測には赤外・電波(メーザー)・分光観測が有効で、塵に覆われた領域や質量放出の証拠を調べるために多波長観測が重要です。
総じて、スティーブンソン2-18 は銀河系内で最も大きな恒星の一つとして注目される対象であり、その極端なサイズ(太陽の約2,150倍)や低い表面温度(約3,200 K)、高光度という特性から、高質量星の晩期進化や超新星前段階の理解に重要な手がかりを与えます。観測面では距離・減光・星団所属の不確実性が残るため、今後の詳細な分光・高分解能観測や距離測定の改善が期待されます。
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