COBOLとは?歴史・特徴・バージョン・近年の拡張をわかりやすく解説
COBOLの歴史・特徴・主要バージョンからオブジェクト指向など近年の拡張まで、初心者にも分かりやすく丁寧に解説。
COBOLは1959年に開発されたプログラミング言語です。これは初期の業務向け言語の代表で、読みやすさを重視した設計が特徴です。名前はCOmmon Business-Oriented Language(共通業務指向言語)の略で、当時「ハードウェアに依存しない形で業務処理を記述できる言語」が求められていたことから生まれました。構文はSQLのように自然言語に近く、例えば ADD YEARS TO AGEは有効な式です。COBOLにはいくつかの異なるバージョンが存在し、標準化の歴史を通じて機能が拡張されてきました。
歴史と標準化の流れ
COBOLは1959年の仕様策定に始まり、その後複数回の標準化を経ています。初期の仕様はCODASYLや米国政府の委員会によって整備され、1960〜70年代に広く普及しました。公式の標準化はANSI/ISOによって行われ、代表的な改訂には1968年、1974年、1985年、2002年、さらに2014年の改定などがあります。これらの改訂で機能追加や構文の近代化が進められてきました。
言語の特徴
- 英語に似た記述:可読性が高く、業務担当者や非専門家でも意味が取りやすい文法を持ちます。
- 固定小数点(商用計算)への適性:金額計算などで誤差の少ない十進演算(パック十進など)をサポートします。
- レコード/ファイル指向の入出力:業務系の大量トランザクションや帳票処理に向いています。
- プログラム構造:伝統的に次のような分割で記述します。
- IDENTIFICATION DIVISION
- ENVIRONMENT DIVISION
- DATA DIVISION
- PROCEDURE DIVISION
- 固定書式とフリーフォーマット:旧来は列位置に依存する固定書式でしたが、近年の標準ではより自由なソース記述が可能になっています。
バージョンと互換性
COBOLの各標準は互換性に配慮されていますが、実装や拡張によっては互換性の問題が生じることがあります。一般的に、1985年以前の非常に古いコードは、1985年以降の新しい実装や標準と完全には互換しない場合があります。一方で、主要ベンダー(IBM、Micro Focusなど)は後方互換性を重視した実装や移行ツールを提供しており、既存資産の維持が図られています。
批判と擁護の声
1960〜70年代からプログラミング言語の設計に対する批判は存在し、例えばコンピュータ科学者でチューリング賞を受賞したエドガー・ダイクストラは1975年の編集者への手紙で、"How do we tell truths that might hurt?" と題して、"COBOLの使用は精神を麻痺させます;したがって、その教えは犯罪行為とみなされるべきです"と述べ、当時の言語設計や教育方針を強く批判しました。この手紙では他の言語についても触れられています。
これに対し、Howard E. Tompkinsというコンピュータ科学者は構造化COBOLを擁護しました。彼は「複雑な制御フローを持つCOBOLプログラムは、確かに『心が不自由になる』傾向がある」が、その理由は「構造化COBOLの恩恵を十分に教えられたことのないプログラマーによって書かれたこのようなビジネス・アプリケーション・プログラムがあまりにも多く存在するからである...」と述べ、教育や設計の改善で多くの問題は解決可能だと主張しました。
近年の拡張と現代化
近年、COBOLは次のような拡張や現代化の取り組みが行われています。
- オブジェクト指向の導入(標準以降の拡張):モジュール化や再利用性の向上を目的に、オブジェクト指向の概念が導入されました。
- ユーザー定義関数・データ型:カスタム関数や複合データ型を定義できるようになり、抽象化が促進されます。
- フリーフォーマット記述:古い列ベースの制限を緩和し、現代的なソースコード管理に適した記述が可能になってきています。
- 他システムとの連携:Java、.NET、Webサービス、REST、JSON/XML処理などとの連携をサポートする拡張やブリッジが普及しています。
- モダナイゼーション技術:既存のCOBOL資産をラップしてAPI化したり、コンテナやクラウドへリホスト(移行)したり、部分的に再実装することで保守性を高める方法が用いられています。
このような変化により、COBOLは単に「古い言語」ではなく、現代のIT環境でも活用可能な選択肢として継続的に進化しています。特にバッチ処理や大量トランザクションの基幹系処理には強みがあります。
用途・利点・課題
- 主な用途:銀行、保険、公共機関、給与・人事、会計などの業務系システムで多く使われています。
- 利点:十進演算の精度、膨大な既存資産(ソース・データ)、高い信頼性・スループット、長期運用実績。
- 課題:経験者(若手)の不足、古いコーディングスタイルの存在、モダンな開発ツールへの適応が必要な点。
代表的な実装・コンパイラ
- IBM Enterprise COBOL(メインフレーム向け)
- Micro Focus Visual COBOL / Enterprise Developer(クロスプラットフォーム、.NET/Java連携)
- GnuCOBOL(旧OpenCOBOL、オープンソース実装)
- その他ベンダー製品(Fujitsu、ACUCOBOL など)
移行と学習のポイント
既存のCOBOL資産を維持しつつ近代化するには、次のような選択肢があります。
- ラッピングして外部から呼び出す(API化)
- リホスト(例:メインフレームからクラウド/x86へ移行)
- 段階的にモジュールを置換する(マイクロサービス化)
- 完全に再実装する(コストとリスクが大きい)
学習面では基本的なデータ定義(PIC句など)やファイルI/O、手続き型の設計、最新の標準で導入された機能(オブジェクト指向、ユーザー定義関数等)を押さえるとよいでしょう。
最後に、COBOLは開発から半世紀以上にわたって業務システムを支え続けてきた言語です。古い批判や問題点もありますが、標準の進化やツールの充実により、現代のシステム環境でも実用的に使い続けられる技術となっています。
参考:一部の記述は歴史的・標準化情報に基づく一般的な説明です。詳細な標準仕様や各ベンダーの実装差については、各社のドキュメントやISO/ANSIの標準文書を参照してください。
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