複合果という語は学術的には厳密な用語ではなく、ある果実がどのタイプに属するのか判定しづらい場合や、いくつかの意味をまとめて指すときに日常的に使われることがあります。一般に「複合(複合的)な構成要素から成る果実」を漠然と表す言葉で、次のように三つの異なる概念で使われることがあります。
複合果の三つの意味と代表例
- 集合果(aggregate fruit):1つの花に複数の独立した心皮(卵巣)があり、それぞれが個別に発育して互いに集合したもの。例:ラズベリーやブラックベリーなどのキイチゴ類。イチゴはやや特殊で、表面に見える「つぶつぶ」は各小果(痩果)で、花床(花托)が肥大しているため、偽果(accessory fruit)ともされます。
- 多花果・合成果(multiple fruit / infructescence):多数の花が集まった花序(inflorescence)全体が成熟して、ひとつの大きな果実様の構造になるもの。各小果はそれぞれ別の花の子房から発生し、成長過程で融合または密に結合する。例:パイナップル、クワ(桑)、イチジク(イチジクは特異な構造の花序〈syconium〉内の小花群が成熟してできる)など。
- 合生心皮からなる単純果(単一の子房だが心皮が合着している):一つの花にある子房が、複数の心皮(=複合心皮・合生心皮)から成り、その子房全体が一つの果実となる場合。外見は単一の果実に見えますが、内部に複数の室があるなど複合的な形を示すことがあります。例:トマトやナス(茄子科の果実は合生心皮からなる典型的な単純果=ベリー)など。
ブドウは複合果か?
ブドウは確かに房(cluster)を作って成長しますが、一般には複合果とは呼びません。理由は、ブドウの一粒一粒はそれぞれ1つの花の1つの子房から発生した「単純果(berry)」であり、互いに癒着(融合)して1個の果実になっているわけではないためです。房は果実が集合した状態(infructescence)に過ぎません。
見分け方のポイント(簡易ガイド)
- 元の花の数を確認する:1つの花か、複数の花か。
- 子房(卵巣)の数や心皮の状態を見る:心皮が分かれている(離生)か合着している(合生)かで区別できる。
- 成熟後に個々の小果が癒着してひとつに見えるか、単に集合しているだけかを観察する。
- 花托(花床)など花以外の部分が果実の主要部分になっているか(偽果)も考慮する。例:イチゴやリンゴ(リンゴは花床や周辺組織が関与する偽果/集合的な構造を持つ)。
まとめ
複合果という言葉は便宜的・説明的に使われることが多く、植物学の厳密な分類語としては「集合果(aggregate)」「多花果(multiple)」および「合生心皮から成る単純果」など、どの意味で用いるかを明確にする必要があります。果実の由来(どの花・どの子房からできたか)、心皮の結合状態、花序構造、花以外の部分の関与の有無を見れば、どのタイプに当たるかを判断できます。


