コムーネ(Comune)とは?イタリアの自治体・基本行政区分をわかりやすく解説
イタリアの基礎自治体「コムーネ」を発音・役割・行政構造から実例までわかりやすく解説。歴史や手続き、地域運営の違いも理解できる入門ガイド。
コムーネ(イタリア語発音:[koˈmu↪L2D0↩]、複数形:comuni [koˈni])は、イタリアの基本行政区分で、タウンシップや自治体にほぼ相当するものである。
概要
コムーネはイタリアにおける最も基礎的な自治体単位で、数百人規模の小さな山村から、ローマやミラノのような人口数百万の大都市まで規模は多様である。数としてはおおよそ8000弱(年度によって増減)にのぼり、それぞれが住民サービスの提供や地元行政を担っている。
組織と主要な役職
- 市長(Sindaco、イタリア語:sindaco):コムーネの行政トップ。多くは直接選挙で選ばれ、行政を代表して市政を執行する。
- 市議会(Consiglio comunale、consiglio comunale):条例の制定や予算承認などを行う議決機関。
- 執行委員会(Giunta comunale、giunta comunale):市長が指名する執行メンバーで、日常の行政執行を担う。
主な権限と業務
コムーネには住民の生活に直結する多くの行政機能が集中している。代表的なものは次のとおり。
- 住民登録・戸籍(Anagrafe・Stato civile):居住証明や出生・婚姻・死亡等の記録管理。
- 地方税と料金の徴収:不動産関連税やごみ処理料金など、一部の税・手数料を管理する。
- 都市計画・建築許可:土地利用計画(Piano regolatore)や建築許可の交付。
- 社会福祉・教育施設の維持:幼稚園などの管理や高齢者・福祉支援の実施(規模により州や県と共同の場合もある)。
- 道路・上下水道・ごみ処理などの公共サービス:日常的なインフラ管理や清掃業務。
- 地方警察(Polizia municipale):交通規制や地域の秩序維持。
財政と資金
コムーネの財源は、独自に課す税・手数料、国や州からの交付金、特定の事業収入などで構成される。財政基盤は規模や地域によって大きく異なり、小規模コムーネでは財政的制約が強いため、複数のコムーネが共同でサービスを提供する協定(Unione di comuni や共同事業)を結ぶことがある。
規模の差と特殊な形態
コムーネは人口・面積で大きな差があるため、制度上や運営方法で違いが出る。いくつかの特徴:
- 人口が少ないコムーネは、住民サービスの多くを近隣のコムーネと共有することが多い。
- 大都市は「広域都市(Città metropolitana)」や県(Provincia)と連携して、交通や都市計画など広域課題を扱う。
- 伝統的に「フラツィオーネ(Frazione)」と呼ばれる小集落や地区がコムーネ内に存在し、行政上の下位区分として扱われることがある。
歴史的背景
「コムーネ」の起源は中世の自治都市共同体にさかのぼる。都市や町が自主的な自治を獲得して発展し、近代以降は国家の行政区分として整備されてきた。近年では行政効率化の観点からコムーネ合併(fusione di comuni)やサービス共同化が進められている。
選挙と住民参加
市長や市議会議員は選挙で選ばれるのが原則であり、住民は地方政治に直接参加できる。任期は通常数年(多くの場合5年)で、地方選挙は地域の課題や暮らしに直結するため関心が高い。
連携と改革
近年、財政の効率化や人口減少対策を背景に、コムーネ同士の連携・合併や広域行政の強化が進んでいる。また、一部地域では自治権の拡大や特別法による例外的な制度も存在する。
まとめ(ポイント)
- コムーネはイタリアの最小の行政単位で、住民生活に密接に関わる多くのサービスを提供する。
- 規模や財政状況により役割や運営方法は多様であり、近年は合併や共同運営などの効率化が進んでいる。
- 市長・市議会を通じて住民が直接参加できる点が重要で、地域ごとの特色が色濃く出る行政単位である。

イタリアの行政区分 : - リージョン(黒枠 ) - コムニ (灰色枠)
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