クラトンとは、大陸プレートの中で最も古く、長期間にわたって安定している領域を指します。大陸のリソスフェア(地殻とその下の剛性のある上部マントル)のうち、変形や火成活動が比較的少なく、ほぼ保存されたまま残っている部分です。
構造と主な特徴
クラトンは一般に、古代の高変成度の結晶質基盤岩(花崗岩や変成岩など)で構成され、これが若い堆積岩や火山岩で覆われていることがあります。地殻が厚く、さらにその下のマントルに向かって数百キロメートルに達する深い「クラトン根(リソスフェリック・キール)」を持つことが多く、これがクラトンの機械的・熱的安定性の源になっています。クラトンのリソスフェアは、海洋リソスフェアよりはるかに古く、海洋の寿命(数千万〜1億年程度)に対して、クラトンは数億〜数十億年(最古で約40億年)生き残っています。
シールドとプラットフォーム
クラトン内部は大きく二つに分類されます:
- シールド:基底岩(古い結晶質基盤岩)が地表に露出している領域。露頭で古い岩石の年代や変成史が直接観察できます。例:カナダ楯状地(Canadian Shield)。
- プラットフォーム:基底岩の上に薄いあるいは厚い堆積層が重なっている領域で、基底岩は地下に隠れています。表層は比較的若い堆積岩で覆われることが多く、石油や堆積鉱床が見られることもあります。
形成と保存のしくみ
クラトン形成(クラトン化、cratonization)は、地球早期の大陸成長過程や地殻—マントル相互作用を通じて進行しました。主な要因としては:
- マグマ分異や部分溶融による上部マントルの組成変化(高剛性の枯渇したかんらん岩層の形成)
- 深部での冷却と硬化により剛性の高いリソスフェアが形成されること
- 大規模な衝突造山運動による地殻の肥厚とそれに続く侵食・平坦化
一度安定化したクラトンは、低い地熱流束・高い比剛性・深い冷たいマントルキールにより、後続のプレート境界活動やホットスポットの影響を受けにくくなります。ただし、極端な沈み込みやマントル対流の変化、ホットプルムの上昇などで部分的に再活性化されることもあります(クラトンの再活性化やリライトル化)。
物理的・地球物理的性質
クラトンは一般に低い地熱流束、低い地震活動率、厚いリソスフェアを示します。地震波トモグラフィーでは冷たく剛性の高いマントル根が検出されることが多く、化学組成的にも周辺の新生リソスフェアと異なることが知られています。
経済的重要性と自然資源
クラトンは鉱物資源の宝庫でもあります。古い基盤岩やそれに関連する変成作用・火成作用により、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、プラチナ族元素(PGE)などの鉱床が生成されることが多いです。また、クラトンの深いマントルキールに由来するキンバライト質の火成活動はダイヤモンドを地表近くにもたらすことがあり、主要なダイヤモンド鉱床は多くが古いクラトンに関連しています。
代表的なクラトンの例
- カナダ楯状地(Canadian Shield)— 北アメリカ大陸の古い核。
- シベリアクラトン(シベリア大陸塊)— ロシア北部に広がる古い領域。
- カープヴァール(Kaapvaal)やカラハリ(Kaapvaal/Kalahari)— 南アフリカの古いクラトン群(ダイヤモンド資源で有名)。
- ピルバラ(Pilbara)— 西オーストラリアにある古生代以前の基盤。
- 西アフリカクラトン、ブラジリアン古地塊など、世界各地に分布。
クラトンの境界と地質単位
クラトンは周囲のより若く活発な地質領域(造山帯やプラトーなど)と明瞭な境界を形成することが多く、地理的にはさらに小さな地質単位(地質州)に細分されます。地質州とは共通の地質学的特性を持つ地域であり、クラトン内部でも年代や岩種、変成史の違いにより複数の州に分かれることがあります。
以上のように、クラトンは地球の地殻進化史を解き明かす重要な「化石」としての役割を果たすとともに、現代の資源や地殻安定性の理解にも不可欠な概念です。


