Daddy-Long-Legs Spider (Pholcus phalangioides)は、クモ類の一種で、細長い脚と小さな胴体を持つことで知られています。脚の長さは胴長の5〜6倍になることが多く、室内や洞窟、地下室などの天井や角に不規則でゆるい巣(ネト)を張って生活するため、一般にセラースパイダー(cellar spider)とも呼ばれます。
混同されやすい仲間
英語の「daddy long-legs」は複数の生物を指すため混同が起きやすいです。よく混同されるのが、脚の長い別群であるオニグモや、クモではない仲間(たとえばOpiliones=ハーベストマン/和名:ヤセオオトメムシ類)です。後者はクモ類とは異なる節足動物のグループで、胴体が一つに見えるなど形態的に区別できます。
外見と識別ポイント
・胴長は雌でおおむね6〜9mm、雄はやや小さいことが多い。
・脚は非常に細長く、全体の脚幅(脚を広げた長さ)は数センチから場合によっては10cm近くに達することもあります。
・体色は薄い灰色〜黄褐色で、腹部に淡い模様が出ることがあります。
・巣は不規則でゆらゆらした糸が特徴。刺激されると糸ごと体を激しく振動させる習性があり、これにより捕食者の視覚をかく乱したり、獲物の捕獲効率を高めたりすると考えられています。
分布と生息環境
P. phalangioidesはもともと熱帯起源と考えられますが、現在では世界中の人里近く、特に温かく湿気がある建物内や洞窟などでよく見られるようになり、広く分布する「コスモポリタン」種です。室内に移入されれば季節に左右されず1年中観察されます。
行動・食性
・主にハエ類、ゴキブリの幼虫、小さな蛾や蚊などの小型昆虫を捕食します。
・ほかのクモを捕えることもあり、餌が不足すると共食い(同種間捕食)をすることがあります。
・一部の観察では、より危険とされるクモ(例:ブラウンリクルースなど)を捕獲・弱らせる行動が報告されていますが、「人にとって危険な毒を持つ」という都市伝説は誤りで、ヒトに危害を加えることはほとんどありません。
繁殖と発達
・雌は一般に20〜30個程度の卵を持つ卵嚢を作ります。卵嚢は糸で包んで保持し、場合によってはあご(複眼付近の付属肢)や腹部近くで卵嚢を守ることがあります。
・孵化した幼体(スパイダーリング)は小さく透明感のある外見で、成長するにつれて数回(5〜6回程度)脱皮して成体になります。寿命は条件にもよりますが、一般に数年に達することもあります。
人間との関係・扱い方
・毒性については誤解が多く、P. phalangioidesはヒトにとって危険な種ではありません。口器(キシリ)も小さく、通常ヒトの皮膚を貫くことはできません。
・家屋内で見かけると不快に感じる人もいますが、害虫(蚊や小さな虫)を捕食してくれるため生態系的には有益です。駆除したい場合は掃除機で吸い取る、網で捕まえて屋外へ放す、巣を取り除くなど物理的な方法が推奨されます。殺虫剤を多用する必要はほとんどありません。
似た種
Crossopriza lyoniやPhysocyclus globosus(かつては"globosis"と表記されることもあります)は外見が似ており、屋内で見られることがあります。種の同定は腹部の模様、足の比率、雄の生殖器(触肢)の形状などで行われます。
まとめると、Pholcus phalangioidesは細長い脚とゆるい巣を持つ室内種で、人間に害を与えることはほとんどなく、むしろ小さな害虫を減らす有益な存在です。見かけたときは落ち着いて取り扱うことをおすすめします。

