アインシュタイン十字(Einstein Cross)は、80億年、25億パーセクの距離にあるクエーサーを撮影したものとして知られています。遠方にある1つのクエーサーの光が、手前にある銀河の強い重力によって曲げられ、観測者から見ると銀河の周囲に同じクエーサーの像が4つに分かれて現れ、十字形に見える現象がこの「アインシュタイン十字」です。

特徴と仕組み

このクェーサーは、レンズ銀河であるハクラのレンズ(ZW2237+030)の真後ろに位置しています。強い重力レンズ効果により、この前景銀河のまわりに同じ遠方のクエーサーの像が4つ現れているのが特徴です。レンズ銀河の重力場が光の経路を曲げるため、同じ光源の像が複数に分かれて見えるわけです。

その赤方偏移から、クェーサーは地球から80光年、レンズ銀河は4億光年しか離れていないことがわかりました。赤方偏移(スペクトル線の波長が長くなる現象)を測ることで、光源やレンズ銀河の相対的な距離や宇宙膨張に関する情報が得られます。

科学的な重要性

  • 銀河質量分布の測定:レンズ像の位置や形から、レンズ銀河の質量分布(暗黒物質の分布も含む)を推定できます。
  • 準星(クエーサー)内部の研究:像ごとに微妙に異なる明るさ変化(マイクロレンズ効果)が観測されるため、クエーサーの光源近傍の構造を間接的に調べられます。
  • 宇宙膨張率(H0)の補助手段:複数像間の時間遅延を測ることで、宇宙の膨張率推定に寄与することがあります(対象や配置によっては難しい場合もあります)。

歴史と発見

この系は1980年代に観測・同定され、ハクラ(Huchra)らの研究で広く知られるようになりました。発見以来、アインシュタイン十字は重力レンズ研究の代表例として多くの研究と観測が行われています。

観察方法とアマチュア向けの注意点

アマチュア天文家は、望遠鏡を使って十字の一部を見ることができますが、非常に暗い空と直径18インチ以上の望遠鏡の鏡が必要です。以下は観察のヒントです:

  • 暗い空(光害が少ない場所)で観察する。
  • 口径の大きな反射望遠鏡(直径45cm以上=約18インチ)が有利。
  • 短時間の視認では判別しにくいため、長時間露光のCCD撮影や画像のスタッキング処理で姿を明瞭にする。
  • ガイドと良好な追尾が必要。良い気流(シーイング)条件が望ましい。

最後に、アインシュタイン十字は単に美しい天体写真の対象であるだけでなく、宇宙物理学や銀河形成、暗黒物質の研究にも深く関わる重要な天体です。興味があれば、専門の観測装置やアマチュアでも使えるデジタル撮影技術を学んで観測に挑戦してみてください。