送電とは 電力を届ける仕組みと定義 高電圧・架空送電・地中送電の基礎解説

送電とは、電気を使用する場所へ届けるために、発電所で作られた電力を長距離に渡って移送することを指します。具体的には、発電所から人口密集地近くの変電所まで電力を一括して送る作業を指し、変電所から各家庭や事業所へ配るのが「配電」です。送電は通常、電力量が多く距離が長いため、損失を抑える目的で高電圧(数十kV以上、例えば110kV以上)で行われます。

なぜ高電圧を使うのか(基本原理)

  • 同じ電力を送る場合、電圧を上げれば電流は下がります(P=VI)。送電線の損失は主に I2R(電流の二乗に比例)で増えるため、電圧を上げて電流を下げることで損失を大幅に減らせます。
  • このため発電所では変圧器で電圧を昇圧し、変電所で消費に応じて降圧します。昇降圧はAC(交流)系の送電で一般的です。

架空送電と地中送電の特徴

  • 架空送電:もっとも普及している方式。電線を鉄塔や電柱で空中に張るため、敷設コストが低く、点検や保守が行いやすい。絶縁は空気が担うため大きな設備は不要。ただし景観や雷、風雪による影響、送電線のたるみ(サグ)や鳥との接触といった問題があります。
  • 地中送電:ケーブルを地下や海底に敷設する方式。都市部や景観保護、許可区間で選ばれる。架空送電に比べて設置・維持コストが高く、熱的限界(ケーブルの冷却が難しい)や修理時の掘削が必要になるため長距離では一般に不利です。地中送電は、超伝導体や極低温技術を用いない限り、架空送電に比べて電力損失や工費が増大するため、主に大都市など人口密集地で利用されます。
  • 海底ケーブルや都市内トンネル内のケーブルなど、用途に応じて特殊な絶縁・冷却が必要になります。

交流(HVAC)と直流(HVDC)の使い分け

  • HVAC(高電圧交流):既存の変電所や配電系と互換性が高く、短〜中距離の送電に適しています。変圧器で簡単に電圧を変えられるのが利点です。
  • HVDC(高電圧直流):長距離送電や海底ケーブル、異周波数系統間の連系に有利です。直流は無効電力の問題がないためリアクティブ補償が不要ですが、両端に高価な整流・逆変換設備(コンバータ)が必要となります。長距離では送電損失が小さく経済的になることがあります。

送電網(グリッド)とその運用

送電網は口語で「グリッド」と呼ばれることがありますが、経済性の観点から必ずしも完全なメッシュ(どの発電所からでもどの負荷へも自由に送れる構造)になっているわけではありません。運用上は以下のような要素が重要です。

  • 冗長性と信頼性:停電や故障に備え、複数経路やバックアップを持たせる(N-1基準など)。
  • 系統運用:電力の需給バランス、周波数制御、電圧制御を行う。発電の出力制御や需要側調整、蓄電池やFACTS機器などで安定化を図る。
  • 保護と監視:リレーや遮断器、SCADA/EMSなどの監視制御システムで故障を速やかに検出・切り離す。
  • 電力潮流と経済性:どのルートで電力を流すかは送電経路の抵抗やコスト、市場価格を考慮して決定される。卸電力市場や系統制約が影響します。

送電の技術的課題と最新動向

  • 損失と効率改善:伝送損失(I2Rやリアクティブ損失)、コロナ放電による損失やノイズ対策が必要です。
  • 熱限界と線路容量:送電線は温度上昇により抵抗が増し、たるみも変化するため線路の許容電流が変わります。気象条件や負荷変動を考慮して運用します。
  • 再エネの導入:風力・太陽光など不安定な電源の接続が増えると、系統安定化(周波数・電圧制御、蓄電、需給調整)が重要になります。
  • スマートグリッド化:遠隔監視、需要応答、分散型電源統合、デジタル化による効率化が進んでいます。
  • 先端技術:超伝導ケーブル、HVDC技術、FACTS(柔軟な交流送電システム)、高温超電導や新材料による損失低減などの研究開発が進行中です。
  • 環境・安全:送電線下の土地利用制限、電磁界(EMF)に関する住民対応、落雷・自然災害対策も重要です。

まとめると、送電は発電所から大量の電力を効率良く遠くまで運ぶための技術と運用の集合体です。用途や距離、経済性、環境条件に応じて架空送電や地中送電、交流や直流といった方式を使い分け、変圧器や保護装置、監視システムによって安全かつ安定した電力供給を実現しています。

スウェーデン・ルンドの送電線Zoom
スウェーデン・ルンドの送電線

ブリティッシュ・コロンビア州コキットラムにあるBCハイドロ社の送電塔と送電線。Zoom
ブリティッシュ・コロンビア州コキットラムにあるBCハイドロ社の送電塔と送電線。

フィンランド、ヘルシンキ近郊の送電線Zoom
フィンランド、ヘルシンキ近郊の送電線

台湾の送電線Zoom
台湾の送電線

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質問と回答

Q: 送電とは何ですか?



A: 送電とは、発電所から人口密集地付近の変電所まで電力を一括して送ることです。

Q: 配電とは何ですか?



A:配電とは、変電所から消費者に電力を届けることです。

Q: なぜ送電は通常、高電圧で行われるのですか?



A: 送電は、電力量が多く、距離が長いため、通常、高電圧(110kV以上)で行われます。

Q: 通常、電気はどのように長距離を送電するのですか?



A: 通常は架空送電線により長距離送電されます。

Q:地下送電線はどのような場合に使われるのですか?



A:地下送電は、超電導や極低温技術を用いない限り、架空送電に比べて電力損失が大きく、設置やメンテナンスにコストがかかるため、人口密度の高い地域(大都市など)でしか使用されていません。

Q:送電システムは、口語で何と呼ばれることがありますか?



A: 送電システムのことを俗に "グリッド "と呼ぶことがあります。

Q: 送電システムにおける冗長化された経路や線路は何のためにあるのですか?



A: 送電経路の経済性や電力コストに基づき、どの発電所からもどの負荷センターへも様々な経路で電力を送ることができるように、冗長経路や線路が設けられています。

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