Enhanced Fujita scaleは、米国とカナダで使用されている竜巻のカテゴリースケールです。米国の国立気象局は2007年2月1日にこの新しいスケールを導入し、カナダでは2013年4月に採用されました。新しいスケールは従来の旧藤田スケール(Fスケール)を置き換えるもので、被害の種類や構造物の強度を考慮した工学的評価に基づき、竜巻の強さをより現実に即して推定できるようになっています。

EF等級と風速の目安

EFスケールは、被害から逆算した「3秒間の推定最大風速(推定瞬間風速)」を基に等級を決めます。等級はEF0からEF5までの6段階で表され、一般的な風速域の目安は次の通りです(約値):

  • EF0:65–85 mph(約105–138 km/h、約29–38 m/s) — 軽度の被害(樹木の小枝折れ、屋根材の軽微な損傷など)
  • EF1:86–110 mph(約138–177 km/h、約38–49 m/s) — 中程度の被害(トタン屋根の剥がれ、移動式住宅の転倒など)
  • EF2:111–135 mph(約179–217 km/h、約50–60 m/s) — かなりの被害(住宅屋根の大損壊、頑丈でない構造物の倒壊など)
  • EF3:136–165 mph(約219–266 km/h、約61–74 m/s) — 深刻な被害(頑丈な住宅の一部崩壊、大型車両の転倒など)
  • EF4:166–200 mph(約267–322 km/h、約74–89 m/s) — 壊滅的な被害(頑丈な建物の大部分が倒壊など)
  • EF5:>200 mph(>322 km/h、>89 m/s) — 甚大かつ壊滅的な被害(強固な構造物の壊滅、地面に残る大規模な痕跡)

判定方法(ダメージインジケータと損傷度合い)

EFスケールでは単に目視で「壊れている/いない」を見るだけでなく、建物の種類や構造、被害の度合いを細かく分類する「ダメージインジケータ(DI)」と、それぞれのDIに対する「損傷度合い(Degree of Damage, DoD)」を組み合わせて評価します。これにより、異なる構造物や材料でも整合的に風速を推定できるように設計されています。

利点と限界

  • 利点:工学的根拠に基づいた評価で、構造物の強度差を考慮するため、被害と風速の関係がより現実的に推定されます。
  • 限界:EF等級は「被害に基づく推定」であり、直接測定された風速ではありません。たとえば被害がほとんど出ない農地や森林しか通らなかった強い竜巻は、現地に適切なダメージインジケータがなければ過小評価される可能性があります。また、同じ等級でも局所的要因や建物の施工状態によって損害の程度が異なるため、必ずしも厳密な風速の測定値と一致しない点に注意が必要です。

実務上の取り扱い

米国やカナダでは、竜巻発生後に気象専門家が現地調査を行い、撮影写真や現場の測定値、建築物の被害状況などを基にEF等級を決定します。導入以前(米国では2007年2月1日以前)に発生した竜巻については、通常は公式にEFスケールで再評価されることはありませんが、研究目的などで個別に再評価される場合もあります。

歴史的背景と他国での扱い

従来の藤田(F)スケールは1971年に導入されましたが、実務と工学の進歩により風速推定値や被害との対応に改善の余地があるとされたため、Enhanced Fujitaスケールが開発されました。現在、米国とカナダをはじめ、多くの研究者や気象機関がEFスケールを参照していますが、世界全体で統一された単一の竜巻等級基準があるわけではなく、地域によっては別の指標やローカルな評価法が用いられることもあります。

まとめ

EFスケールは、竜巻による被害から推定された風速に基づいて等級を決める現代的な評価方法です。被害の種類や建築物の構造を考慮するため、従来のFスケールより実務に即した評価が可能ですが、あくまで「被害に基づく推定」であること、被害の記録が乏しい地域では強さが過小評価される可能性がある点は理解しておく必要があります。