実行機能とは|前頭前野・注意力・ワーキングメモリの基礎知識
実行機能(前頭前野・注意力・ワーキングメモリ)の基礎と障害対策をわかりやすく解説。診断・改善法や日常で使えるトレーニングも紹介。
実行機能(エグゼクティブ機能)は、目標を立て、それに向かって行動を計画・調整・抑制するために必要な脳の高次認知能力の総称です。日常生活や学習・仕事での効率、対人関係、自制心に深く関わります。主な構成要素は以下の通りです。
- 注意の制御 - 何に注意を向けるかを選び、重要な情報に集中し続ける能力。
- 認知的抑制(認知的阻害) - 不要な思考や情報、習慣的な反応を抑えて目的に沿った情報処理を行う能力。
- 行動抑制(抑制制御) - 衝動的な行動や反応を止めたり遅らせたりする能力。
- ワーキングメモリ - 一時的に情報を保持し、操作することで複雑な課題を遂行する能力。
- 認知的柔軟性 - 状況やルールが変わったときに考え方や行動を切り替えられる能力。
内容(目次)
- 1 個々の機能の説明
- 1.1 注意の制御
- 1.2 認知的抑制
- 1.3 行動抑制
- 1.4 ワーキングメモリ
- 1.5 認知的柔軟性
- 2 物理的な基盤(脳の構造と神経伝達物質)
- 2.1 前頭前野
- 2.1.1 病気や障害がある場合
- 3 日常での評価と改善法(簡単な対処法・介入)
個々の機能の説明
注意の制御
注意の制御は、目的に関連する情報に焦点を合わせ、注意の向きを切り替えたり、分配したりする能力です。たとえば、授業中に先生の話に集中する、複数の工程を同時に管理する、といった場面で使われます。
日常のヒント:作業環境の雑音を減らす、短時間で区切って休憩を挟む、重要な作業は通知をオフにするなどで助けになります。
認知的抑制(認知的阻害)
認知的抑制は、課題に関係ない考えや思い込み、誤った手がかりを無視できる能力です。過去の固定観念や不適切な解釈を抑えて、新しい情報に基づいて判断できます。
日常のヒント:考えが逸れたら深呼吸して再集中する、チェックリストを使って思考の流れを可視化する、誤情報に対して「事実」と「推測」を分けて考える習慣を持つとよいでしょう。
行動抑制(抑制制御)
行動抑制は、衝動的な発言や行動を抑える力で、待つ・我慢する・ルールに従うといった場面で重要です。たとえば順番を守る、思いついたことをすぐに実行しない、などです。
日常のヒント:行動前に「3つ数える」などのルールを自分で作る、環境から衝動を引き起こす刺激を取り除く(お菓子を見えない場所に置く等)と効果的です。
ワーキングメモリ
ワーキングメモリは、短期間に情報を保持して操作する能力です。計算、読解、会話の流れを追うなどで使われます。容量や精度には個人差があります。
日常のヒント:メモやチェックリスト、スケジュールアプリを活用して外部に情報を頼る、情報をチャンク(塊)に分けて扱うことで負担を減らせます。
認知的柔軟性
認知的柔軟性は、ルールや状況が変わったときに戦略を切り替えられる能力です。新しい方法を試したり異なる視点から問題を見るときに重要です。
日常のヒント:小さな変化を意図的に取り入れて慣れる(通勤経路を変える等)、代替案をいくつか用意しておく習慣が役立ちます。
物理的な基盤(脳の構造と神経伝達物質)
前頭前野(前頭葉)
実行機能は主に前頭前野(前頭葉の一部)に依存します。前頭前野は計画立案、判断、抑制、柔軟な思考などを司る領域で、他の脳領域(扁桃体、海馬、帯状回、基底核など)と連携して働きます。
神経伝達物質ではドーパミンやノルアドレナリンが重要で、これらのバランスが実行機能の効率に影響します。
病気や障害がある場合
脳損傷、発達障害(例:ADHD、自閉スペクトラム症)、うつ病、統合失調症、慢性アルコール・薬物使用などは前頭前野や関連回路の機能に影響を与え、実行機能の低下を招くことがあります。加齢に伴う認知機能の変化でもワーキングメモリや柔軟性が低下することがあります。
治療や支援としては、薬物療法(医師による評価のもとでの薬剤)、認知行動療法、作業療法、構造化された教育や就労支援、睡眠や運動など生活習慣の改善が有益です。個々の状況によって適切な介入は異なるため、専門家と相談することが重要です。
日常での評価と改善法(簡単な対処法・介入)
- 簡易的な評価方法:チェックリストや自己報告尺度(注意や衝動の頻度を記録する)、仕事や学習でのミスの傾向を観察する。詳細な評価は臨床心理士や精神科医による検査が必要です。
- 生活面でできる改善:
- 規則正しい睡眠と運動(有酸素運動は実行機能の改善に寄与するとする研究が多い)
- 環境の整理(視覚的な刺激を減らす、作業ごとに道具を揃える)
- チェックリストやタイマーを活用して作業を細分化する
- マインドフルネスや注意訓練で注意の制御力を高める
- 専門的介入:必要に応じて医療機関での診断・薬物療法、認知リハビリテーション、心理療法、就労支援などを検討します。
実行機能は生涯を通じて発達・変化します。幼児期から青年期にかけて急速に成熟し、中年以降は一部の機能が徐々に低下する場合がありますが、訓練や生活習慣の改善で維持・向上できる要素も多くあります。気になる点があれば、早めに専門家に相談することをおすすめします。
質問と回答
Q:実行機能とは何ですか?
A:実行機能とは、人間を含む高等動物が自分の行動を制御するために用いる認知過程のことです。何をすべきか、何を制御すべきかを選択し、選択した目標が達成されたかどうかを判断するものです。
Q:実行機能の例にはどのようなものがありますか?
A:実行機能の例としては、注意制御、認知抑制、抑制制御、ワーキングメモリー、認知柔軟性などがあります。高次の実行機能は、いくつかの基本的な実行機能の使用を必要とし、計画や流動的な知能(例えば推論や問題解決など)が含まれます。
Q:実行機能は時間とともにどのように発達するのでしょうか?
A:実行機能は、個人の寿命の間に変化し、いつでも改善することができます。
Q:実行機能のレベルを評価するために、どのようなテストがありますか?
A:ストループテストや実行機能の行動評価尺度など、実行機能のレベルを評価するためのテストが開発されています。
Q:オペラント条件付けと実行機能の利用はどう違うのですか?
A: オペラント条件付けでは、与えられた刺激に対してある方法で反応するように個人が「教えられる」のに対して、実行機能の使用では、同じスキルを使って刺激に対する反応を上書きしなければなりません。これを抑制的コントロールと呼びます。
Q:実行機能に必要なのは、脳のどの部分ですか?
A:前頭前野は実行機能に必要ですが、それだけでは十分ではありません。脳の他の部位も抑制的制御を媒介する役割を持っています。
Q:認知制御に影響を与える条件とは何ですか?
A:認知制御に影響を与える疾患としては、依存症、注意欠陥多動性障害、自閉症、その他の中枢神経系疾患がある。
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