ファインマン図(ファインマン・ダイアグラム)定義と仕組みをやさしく解説 量子力学とQED入門

ファインマン図とは、素粒子が衝突したときや相互作用が起こるときに「何が起きるか」を視覚的かつ計算的に表す図です。物理的に粒子が描かれているわけではなく、確率振幅を計算するための記号的な道具として使われます。

基本要素と見方

ファインマン図は、いくつかの要素で構成されます。一般的に次のように理解します:

  • 外線(外部線):観測される入射粒子や生成される出射粒子を表します。
  • 内部線(伝播線):粒子が1点から別の点へ「伝わる」確率振幅を表し、伝播関数(プロパゲーター)に対応します。これらはしばしば「仮想粒子」を表すと説明されますが、仮想粒子は観測される実粒子とは異なり、エネルギー・運動量のオンシェル条件を満たしないことがあります。
  • 頂点(バーテックス):線が集まる点で、相互作用が起こる場所です。各頂点にはその相互作用に対応する係数(頂点因子)が対応し、保存則(エネルギー・運動量、電荷など)が成立します。

時間の向きと反粒子の解釈

ファインマン図では時間軸を横に取ることが多いですが、図は必ずしも「粒子が空間を進む軌跡」を示すわけではありません。図に描かれた線は確率振幅の伝搬を示します。興味深い点は、量子論では粒子が時間的に前進する場合も後退する場合も数学的に扱えることで、

  • 「時間的に後退する粒子」として表現される場合、それは一般に反粒子として解釈されます。
  • 線がある頂点で消える(または現れる)ように見えるときは、その線の時間的向きの解釈に応じて「粒子が消滅(吸収)した/生成された(放出された)」と読みます。

振幅の計算の仕組み(概念的な流れ)

ファインマン図は、ある過程の確率振幅を順序立てて計算するためのルール(ファインマン則)を与えます。概略は次の通りです:

  • 各外線には対応する入出力の波動関数や外部因子を付ける。
  • 各内部線には伝播関数(プロパゲーター)を割り当てる。これが「粒子が中間状態を経る確率振幅」を表す。
  • 各頂点には頂点因子(その相互作用の強さや行列構造)を掛ける。QEDなら電荷に比例する因子など。
  • ループ(閉じた内部線)や内部の独立した運動量については積分を行う。全ての因子を掛け合わせ、必要なら対称性に関する係数を割る。
  • 異なる可能なすべての図(同位の外部状態につながる異なる接続)について計算した振幅を足し合わせる(摂動級数としての和)。

この手続きを経て得られた総和の絶対二乗が、ある結果が起こる確率に関係します。

ループ、発散、再正規化

より高い次数(複雑な図、例えば内部にループを持つ図)を含めると、内部積分が無限大に発散する場合があります。これが場の量子論で扱う重要な問題の一つで、再正規化(レネーマライゼーション)の手法を用いて物理的に意味のある有限な予測を取り出します。ファインマン図はこの過程でも計算上の整理に非常に便利です。

QED(量子電気力学)での単純さと一般化

ファインマン図はさまざまな場の理論で使えますが、特に量子電気力学(QED)では形式が比較的単純です。QEDでは主に電子(とその反粒子である陽電子)と光子という2種類の場が関わり、相互作用の基本構成要素は

  • 電子線(フェルミオン)
  • 光子線(ボース粒子)
  • 電子–光子頂点(電子が光子を放出・吸収する)

という1種類の頂点で表されます。頂点の振幅はQEDの電荷に関係する比較的単純な形を持ち、初等的なプロセス(例えば電子が光子を放出する散乱)を非常によく説明します。

ファインマン図の直感的注意点

  • 文字通りの絵ではない:線は粒子の軌道ではなく、確率振幅を表す記号です。
  • 計算の帳簿:複雑な積分や作用素計算を視覚的に整理し、どの項を掛け合わせ、どの積分を取るかを示します。
  • 多くの理論に一般化可能:QED以外でも、強い相互作用(QCD)や電弱理論、さらには重力の量子化を試みる枠組みの一部でも使われますが、場の種類に応じて頂点や因子は異なります。

歴史的背景と意義

ファインマン図は、リチャード・ファインマンにちなんで名付けられ、彼はその功績や他の業績によりノーベル物理学賞を受賞しました。図の導入により、場の量子論の計算は格段に分かりやすく、予言の精度も向上し、実験との比較が進みました。現代の素粒子物理学や量子場理論の標準的な道具の一つです。

まとめ(ポイント)

  • ファインマン図は相互作用の「絵」であり、確率振幅を計算するためのルール群(ファインマン則)を表す。
  • 線は伝播、頂点は相互作用を意味し、すべての線や頂点に対応する因子を掛け合わせて積分することで振幅を得る。
  • 時間の両方向性や仮想粒子、ループといった概念が自然に扱える。
  • QEDでは特に単純で強力。より一般的な場の理論にも適用可能だが、再正規化など高度な処理が必要になることがある。
このファインマン図では、電子と陽電子がお互いを破壊し、クォークアンチクォークペアになる仮想光子を生成します。そして、一方はグルーオンを放射する。Zoom
このファインマン図では、電子と陽電子がお互いを破壊し、クォークアンチクォークペアになる仮想光子を生成します。そして、一方はグルーオンを放射する。

質問と回答

Q:ファインマンダイアグラムとは何ですか?


A:ファインマンダイアグラムとは、素粒子が衝突したときに何が起こるかを示した図です。直線、点線、斜線など様々な形状の線が頂点と呼ばれる点で合流します。頂点は、線の始点と終点であり、空間上の同じ地点に同時に存在する2つ以上の粒子を表しています。

Q: ファインマンダイアグラムの線は何を表しているのですか?


A:ファインマンダイアグラムの線は、粒子がある場所から別の場所に移動する確率の振幅を表しています。また、時間的に前方にも後方にも解釈できるので、ある粒子が会合点に消えた場合、時間的な方向によって、その粒子が作られたことを意味するか、破壊されたことを意味するか、どちらかになります。

Q: 衝突の全確率振幅はどのように計算するのですか?


A:各線と各頂点の確率振幅を掛け合わせ、可能性のあるすべての会合点での確率振幅を適切な重みで合計することで計算します。これにより、粒子加速器における衝突の全確率振幅が得られ、粒子がどの方向に跳ね返る可能性が高いかが分かります。

Q:ファインマン図を発明したのは誰ですか?


A: ファインマン図は、ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンにちなんで命名されました。彼は、量子電気力学(QED)の研究の一環として、この図を開発しました。

Q: QEDでは、どのような粒子が関与しているのですか?


A:QEDでは、電子(原子の中にある小さな粒子)と光子(光の粒子)の2種類の粒子しか存在しません。電子(またはその反粒子)がフォトンを放出(または吸収)することができるだけなので、どんな衝突も構成要素は1つだけです。

Q: 射出確率を語るとき、虚数部は何を意味するのでしょうか?


A: QED理論で放出確率を語るときの虚数部は、電子の電荷を意味します。

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