アンフィボールは、イノシリケート鉱物の一種です。角柱状や針状の結晶を形成する。

二重鎖のSiO
4四面体で、頂点で結合している。通常、構造中に鉄やマグネシウムのイオンを含む。緑色、黒色、無色、白色、黄色、青色、褐色などがある。



概要と定義

アンフィボール(角閃石)は、二重鎖イノシリケートに分類される岩石鉱物のグループです。SiO4四面体が縦に結合して二本の鎖を作り、その結果として一般的に(Si4O11)n のような二重鎖構造を取ります。化学組成は多様で、様々な金属イオンが置換するため多くの種が存在します。

結晶構造と化学組成

  • 基本構造:SiO4四面体が二重鎖を形成し、これらを陽イオン(Ca, Na, Mg, Fe, Al など)が結び付ける。
  • 一般式:A0-1B2C5T8O22(OH)2(A, B, C, T は特定の陽イオン位置を表す)と表され、Na, K, Ca, Mg, Fe, Al などの置換が起こる。
  • 占有するイオンによって性質が大きく変わり、これが種の識別と分類(例:ホーンブレンド類、トレモライト・アクチノライト類など)の基礎になる。

外観と物理的性質

  • 結晶形:角柱状や針状、束状の集合体を作ることが多い。明瞭な柱状結晶が見られることもある。
  • 劈開(へきかい):二方向に完全な劈開を示し、劈開面の角度は典型的に約56°と124°である(これが角閃石類の重要な識別点)。
  • 色:緑、黒、褐色、青、白、無色など多様。含有する鉄やマグネシウムの比率で色が変わる。
  • 硬度:モース硬度でおおむね5–6程度。
  • 比重:約2.9–3.6(組成により変化)。
  • 光沢:ガラス光沢(硝子光沢)を示すものが多い。薄片では複屈折や色の変化(偏光下の褐色・緑の斜反射など)を示す。

主な種類(代表種)

  • ホーンブレンド(hornblende):角閃石群の代表的な複雑組成のグループ。火成岩や変成岩に多く見られる。
  • トレモライト(tremolite):Ca2Mg5Si8O22(OH)2 に近い組成。白〜淡緑色で、ネフライト(軟玉)の成分となることがある。
  • アクチノライト(actinolite):Mg と Fe の中間的組成で緑色を呈する。変成岩に多い。
  • グルネライト(grunerite)/アモサイト(amosite):Fe に富むタイプで、アモサイトはアスベスト形態として古くから知られる。
  • リーベック石(riebeckite)/クロシドライト(crocidolite):Na・Fe に富む種で、クロシドライトは青色のアスベストとして有名。
  • その他にアンフィボール族には多数の種と連続固溶体があり、細かな区分は鉱物学的・化学的な分析で行われる。

生成環境と分布

アンフィボールは火成岩(特に中〜塩基性岩)、変成岩(緑色片岩や角閃岩、片麻岩など)および熱水作用を受けた岩石で広く見られます。高圧〜中圧の変成条件で安定する種や、低温で安定する種があり、岩石学では変成史やマグマの組成を読み解く手掛かりとして重要です。

利用・注意点

  • 岩石の主成分として学術的・実務的に重要。地質学・岩石学での指標鉱物となる。
  • 一部のアンフィボールは繊維状(アスベスト)を形成し、古くは断熱材や建材に使われた。クロシドライト(crocidolite)やアモサイト(amosite)などのアスベストは発がん性があり、吸入による健康被害(肺がん、悪性中皮腫など)を引き起こすため、現在は厳重に規制・管理されている。
  • 美術・工芸的には、トレモライト・アクチノライト系の集合体が軟玉(ネフライト)として宝石・工芸材料に利用される例がある。

識別のポイント(野外・薄片)

  • 劈開角(約56°/124°)と柱状結晶の有無。
  • 色や比重、硬度を併せて観察する。薄片では偏光顕微鏡下での二軸性や複屈折、褐色や緑色の偏光色(複色性)が手掛かりとなる。
  • 化学分析(電子顕微鏡やX線回折など)により詳細な種の同定が行われる。

アンフィボールはその多様な化学組成と構造から、地質学的情報を与える重要な鉱物群であると同時に、一部は健康リスクを伴うため適切な取扱いと識別が必要です。