ICQとは:定義・歴史・機能と現代ソーシャルへの影響を解説
ICQとは何か――誕生と進化、主要機能、普及の歴史、現代ソーシャルへの影響を分かりやすく解説する入門ガイド。
ICQはクロスプラットフォームのインスタントメッセージング(IM)およびVoIPクライアントで、名前は英語の「I Seek You」に由来します。1996年にイスラエルのスタートアップMirabilis(創業メンバーはYair Goldfinger、Arik Vardi、Sefi Vigiser、Amnon Amirら)によって開発され、1996年11月に最初のクライアントとサービスが公開されました。以降、1998年にAOLに買収され、2010年にMail.Ru Group(当時の買収主体)へと移っています。
定義と基本コンセプト
ICQは当初から「個々のユーザーに割り当てられる識別番号(UIN)」と「常駐するクライアントによる1対1のリアルタイム通信」に重点を置いたサービスでした。リアルタイムチャット自体はそれ以前から存在しましたが、ICQは個々のユーザーアカウントに基づく集中型サービスとして広く普及した点が特徴です。これにより「プレゼンス(オンライン/オフライン/離席などの状態表示)」「連絡先リスト(バディリスト)」「オフラインメッセージ保存」など、後のIMやソーシャルサービスに欠かせない機能群を一般化しました。
歴史の流れ(要点)
- 1996年11月:MirabilisがICQを公開。無料ダウンロード型のスタンドアロンIMとして急速に広まる。
- 1998年:AOLがICQを買収。以後AOL傘下で開発・運営が続く。
- 2000年代前半:ICQは世界的に普及し、登録アカウント数は1億を超える規模に達した。
- 2010年:AOLからMail.Ru Group(買収主体としてDST系の企業が関与)へと所有権が移る。以後モバイル対応や機能刷新が進む。
- 2010年代中盤以降:スマートフォン向けメッセージングアプリの台頭やソーシャルネットワークの普及によりユーザー基盤は変動したが、ICQは定期的にリニューアルやモバイルアプリの提供で存続を図っている。
主な機能と特徴
- UIN(ユーザー識別番号):一意の数値IDで相互の識別を行う方式。ニックネームとは別にIDでユーザーを特定できる。
- プレゼンス表示とステータスメッセージ:オンライン・オフライン・離席などの状態表示と任意のステータスメッセージ。
- テキストチャットとオフラインメッセージ:相手が不在でもサーバにメッセージを保存して後で受信できる。
- ファイル転送・音声通話・ビデオ通話:ファイル共有やVoIP機能をサポート(クライアントおよびバージョンによる違いあり)。
- グループチャットやチャネル:複数人での会話やブロードキャスト的な情報発信機能が提供されるようになった時期もある。
- 拡張機能:絵文字・スタンプ・ボット・クラウド同期など、近年のメッセンジャーが備える機能も導入されている。
技術面の概観
ICQは当初、中央サーバとクライアントの組み合わせによるプロプライエタリな通信プロトコルを採用していましたが、長年にわたりプロトコルの解析やAPI公開、サードパーティクライアント向けの対応が進み、PidginやTrillian、Mirandaなどのマルチプロトコル対応クライアントでもICQへの接続が可能になりました。後年のリニューアルではクラウド同期やモバイル最適化、暗号化オプションなどが導入されています(対応機能はバージョンに依存します)。
ユーザー数の推移と影響
ICQは2000年代初頭に世界的な認知度を得て、登録アカウントは1億を超える規模に達しました。買収や市場環境の変化を経て、2010年時点では1日の利用者数が数千万規模と報告され、2013年以降も月間数百万人から1,100万人程度のアクティブユーザーが存在するとされています。ピーク期の成功は、後続のIMサービス(AIM、MSNメッセンジャー、Yahoo! メッセンジャーなど)や、さらに進化した現在のメッセージングアプリ(WhatsApp、LINE、WeChatなど)の設計に少なからぬ影響を与えました。
現代ソーシャルへの影響
- プレゼンスとバディリストの標準化:誰がオンラインかを示すプレゼンス表示や、個別の連絡先リストという概念は現在のソーシャルアプリの基礎になっています。
- 即時性と通知文化:プッシュ通知や即時返信を前提とするコミュニケーション様式が普及する起点の一つとなりました。
- IDベースの識別とプライバシー設計:数値ID(UIN)やニックネームの使い分けといった識別方式は、匿名性と実名性のバランスを考える設計の参考になっています。
- 機能の多様化:単なるテキストチャットから、音声・ビデオ通話、ファイル共有、スタンプ・ボットなどへ拡張する流れはICQ以降のメッセンジャーで一般化しました。
セキュリティとプライバシーの課題
ICQは長い歴史の中でスパム、迷惑メッセージ、不正アクセスといった問題にも直面しました。初期のプロトコルは暗号化が限定的であったため、後年に暗号化や認証強化が求められるようになりました。また、中央集権型サービスであることからサーバ側でのデータ保存や運営企業の方針による影響を受ける点もユーザーが注意すべき事項です。
現状と今後の展望
ICQは時代とともに形を変えながら存続しており、デスクトップクライアントだけでなくモバイルアプリ、ウェブクライアント、クラウド同期機能などを取り入れています。競争の激しいメッセンジャー市場においては、独自機能の導入、プライバシー保護の強化、地域ごとのユーザー特性への対応が今後のカギとなるでしょう。
まとめ:ICQはインスタントメッセージングの草分け的存在として、多くの基本概念を確立し、その設計思想は現代のソーシャルメディアやメッセージングアプリにも受け継がれています。一方で技術・市場環境の変化に合わせた進化と、セキュリティやプライバシーへの継続的な取り組みが今後も重要です。
質問と回答
Q: ICQとは何ですか?
A: ICQは、さまざまなプラットフォームで利用可能なメッセージングおよびVoIPクライアントです。
Q: 「ICQ」という名前の由来は何ですか?
A: 「ICQ」という名前は、英語の「I Seek You」に由来しています。
Q: ICQはいつ、誰が開発したのですか?
A: ICQは1996年にイスラエルのMirabilis社によって開発されました。
Q: ICQの所有者は誰で、いつ買収されたのですか?
A: ICQは1998年にAOLに買収され、2010年にMail.Ru Groupに買収されました。
Q: ICQが最初にリリースされたとき、何が斬新だったのですか?
A: ICQは、最初のスタンドアロン型インスタントメッセージング(IM)プラットフォームの1つで、1対1の会話に焦点を当てた個々のユーザーアカウントで完全に集中管理されたサービスを提供していました。
Q: ICQの最盛期はどのくらい人気があったのですか?
A: 2001年頃のピーク時には、ICQは1億以上のアカウントを登録していました。
Q: 2013年以降のICQの月間ユーザー数はどのくらいですか?
A: 2013年以降、ICQの月間利用者数は1100万人です。
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