アポミクシスとは|植物の無性生殖(種子形成)の定義・仕組みと種類
アポミクシスとは何か?植物の無性生殖・種子形成の定義・仕組み・種類を図解と事例でわかりやすく解説。応用・園芸との違いも紹介。
アポミクシスとは、片方の親(または単一の親個体)からのみ遺伝情報が伝わって子孫ができる生殖様式を指します。アポミクシスで生じた子は、親と遺伝的にほぼ同一であるため(クローン)になることが多いです。植物、特に花を咲かせる植物に多く見られ、例えばブラムル(ブラックベリー)などが知られています。
基本的な定義と歴史的背景
植物学では、ハンス・ウィンクラーがアポミクシスを「通常の有性生殖が、受精を伴わない無性生殖に置き換えられること」と定義しました。言い換えれば、受精や減数分裂という通常の生殖過程を経ずに、胚や種子が形成される現象を指します。ある権威は「受精を伴わない特殊な組織による生殖」や「減数分裂と受精を避けて、卵巣の母体組織から種子を形成し、胚を発生させる無性生殖」と説明しています。
仕組み(メカニズム)
アポミクシスは大きく分けて、発生過程とその要素から説明できます。主なプロセスは次の通りです。
- アポメイオーシス(apomeiosis):減数分裂を回避して配偶子や胚原基が形成される。染色体数が維持されるため、親と同じ遺伝的組成が引き継がれます。
- 単為発生(parthenogenesis):受精なしに卵が発生して胚になる過程。胚珠内で雌性細胞が自発的に胚へと成長します。
- 胚乳形成の様式:胚のみが無受精で形成されても、種子を正常に発達させるために胚乳(endosperm)の形成が必要な場合があります。胚乳形成は
- 自律的(autonomous):胚乳も受精を必要とせず形成される。
- 仮受精性(pseudogamy):胚は受精を必要としないが、胚乳の形成には花粉による刺激や受精が必要になる場合がある。
アポミクシスの種類
代表的な分類は以下の通りです。
- 配偶体型アポミクシス(gametophytic apomixis):胚嚢(胚原基)が減数分裂を経ずに(または減数分裂を経たが復元された染色体数で)形成され、その中の卵細胞が受精せずに胚へと発達する。さらに
- ディプロスポリー(diplospory):胚嚢母細胞自体が減数分裂を経ずに胚嚢を形成する。
- アポスプリー(apospory):胚嚢は周囲の子房組織(例:包被細胞など)から生じ、通常の胚嚢が置き換わる。
- 胞子体型アポミクシス(sporophytic apomixis)/外胚的胚発生(adventitious embryony):胚は通常の胚嚢ではなく、子房組織(例:胎座や子房の核膜組織、核外組織=nucellus)から直接発生する。柑橘類に見られるnucellar embryonyが典型例です。
実例と分布
- ブラムル(ブラックベリー)やタンポポ(Taraxacum)はアポミクシスを示すことで知られています。
- 柑橘類では、核(nucellus)由来の胚(核外胚)が種子内で発生することがあり、これも胞子体型アポミクシスの一例です。
- 動物界では、単為生殖(パルテノジェネシス)がアポミクシス的な現象と類比されることがあり、広義のアポミクシスに含めて扱われる場合があります。
- アポミクシスは被子植物の中でも散発的に分布しており、群の中での固定化(クローン化)や急速な分布拡大に寄与します。
応用と意義
- 農業・育種分野では、有利な雑種性(ハイブリッド優性)を「種子の形で固定」できれば、生産品種の均一化や維持に大きな利点があります。したがって、穀物など主要作物へのアポミクシス導入は長年の研究課題です。
- 一方で、遺伝的多様性が低下しやすく、環境変化への適応力が損なわれるリスクもあります。
- アポミクシスの遺伝的・分子機構の解明は、将来的な品種改良やクローン種子技術の開発に直結しますが、制御は難しく、完全な作物化には至っていない例が多いです。
混同しやすい点
注意すべき点として、挿し木や葉からの繁殖などの園芸的な無性繁殖は、一般に「アポミクシス」には含めません。これらは体細胞由来の器官を使った人工的な増殖法です。アポミクシスは「無性的に種子を自然に形成する」過程を指します。
まとめ
アポミクシスは、受精や減数分裂を回避して種子や胚を形成する無性的な生殖様式であり、植物では配偶体型・胞子体型の主要なタイプが知られています。農業的には有用性と課題の両面があり、その分子基盤の解明が進めば作物改良への応用が期待されます。

イネ科植物Poa bulbosaの花の代わりに球根を形成する植生のアポミクシス
質問と回答
Q:アポミクシスとは何ですか?
A:アポミクシスとは、片方の親だけが遺伝子を受け継ぎ、遺伝的に同じクローンができる生殖形態のことです。
Q: アポミクシス(Apomixis)をよく起こす生物は?
A: アポミクシス(Apomixis)は、植物、特に花木でよく見られます。
Q: ブラックベリーはアポミクシスなのですか?
A: はい、ブラックベリーはアポミクシス植物の一例です。
Q: 植物学ではアポミクシスとはどのように定義されるのですか?
A:植物学では、有性生殖を受精のない無性生殖に置き換えることをアポミクシスと呼びます。
Q:単為生殖とは何ですか?
A:動物に多いアポミクシスで、受精していない卵が子孫を残すことです。
Q: 園芸による増殖はアポミクシスとみなされますか?
A:挿し木や葉挿しなどの園芸的な増殖方法は、アポミクシスとはみなされません。
Q: 自然の種子の生産という点では、どのようなものがアポミクシスと言えるのでしょうか?
A:天然種子生産におけるアポミクシスとは、受精させずに無性に種子が入れ替わることを指します。
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