『ジョアン』(Joanne)は、アメリカのシンガーソングライター、レディー・ガガの5枚目のスタジオ・アルバムで、2016年10月21日にリリースされました。タイトルはガガの父の妹で、ガガが生まれる前に亡くなった叔母ジョアンに由来し、ジョアンはガガのミドルネームでもあります。アルバム全体を通して、家族史や喪失、自己癒しといったパーソナルなテーマが反映されています。
制作と参加プロデューサー
本作には、ガガ自身に加え、マーク・ロンソン、ケヴィン・パーカー、ブラッドポップ(BloodPop)など、多彩なプロデューサーが参加しました。ポップ/ダンス色の強い以前の作品とは一線を画し、アコースティックやカントリー、ロック、フォークの要素を取り入れた“ストリップダウン”なサウンドが特徴です。ガガはまた、2012年に殺害されたトレイヴォン・マーティンを題材にした社会的なメッセージ性の強い楽曲「エンジェル・ダウン」でレッドワンとコラボレーションしています。レッドワンはガガの初期のヒット曲「Just Dance」「Poker Face」「Bad Romance」の制作にも関わっていました。
カントリーのソングライター、ヒラリー・リンジーは「Million Reasons」などの楽曲制作に協力し、伝統的なソングライティングの技巧を持ち込みました。シンガーソングライターのベックも参加し、ダンス要素を持つ「Dancin' in Circles」などで共作しています。
シングルとプロモーション
アルバムからは2枚の公式シングルがリリースされました。最初のシングルは「Perfect Illusion」、続いて「Million Reasons」が発表されました。「Perfect Illusion」はアメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど複数の国でトップ20入りを果たしました。「Million Reasons」は当初ビルボード・ホット100に52位で初登場しましたが、2017年2月5日にガガがスーパーボウルのハーフタイム・パフォーマンスを行った後に再び注目を集め、最高位4位を記録。これによりガガはキャリア通算で14作目のトップ10入り、うち10作目のトップ5入りを達成しました。
プロモーションでは意図的に小さな会場での親密な公演を行い、アメリカの3つのダイブバーを巡る「ダイブバー・ツアー」を敢行しました。こうした演出はアルバムの持つ“生々しさ”や“素顔”を強調する狙いがありました。
批評と音楽的評価
批評家は概ね、本作が『ザ・フェイム』『ザ・フェイム・モンスター』『Born This Way』『アートポップ』などのこれまでのダンス/エレクトロニック志向の作品とは異なる方向性を示していると評価しました。多くのレビューはガガの歌唱やソングライティングの成熟、アルバムの親密さを賞賛する一方で、一部には曲間の統一感やポップ・アピールの弱さを指摘する声もあり、評価は賛否両論となりました。
商業成績
アルバムは発売初週に全米で約201,000ユニットを売り上げ、ビルボード200アルバム・チャートで初登場1位を獲得。これによりガガはアメリカで通算4作目のナンバーワン・アルバムとなりました。2016年の年間チャート(アメリカのビルボード200年末チャート)では108位にランクインしています。2017年10月22日には、本作が全米のレコード産業協会(RIAA)から合計出荷・販売で100万枚以上の認定を受け、プラチナ認定されたことが発表されました。
ツアーとその後の経緯
ガガは2017年8月に「Joanne World Tour」を開始し、12月までの公演を予定していました。しかし2017年9月、ブラジルで開催されたフェス「ロック・イン・リオ」への出演をキャンセルし、代わりにマルーン5が出演することになりました。その後、ガガは重度の慢性的な痛みによりツアーのヨーロッパ公演を2018年初頭に延期することを発表しました。北米日程の一部は継続されましたが、健康上の理由で日程変更が相次ぎました。
楽曲の特徴とテーマ
アルバムは伝統的なポップ楽曲から、アコースティックなバラード、カントリーテイスト、ロック色の強いナンバーまで幅広いサウンドを含みます。歌詞は個人的な喪失、家族とのつながり、自己の再発見、社会問題への言及(「エンジェル・ダウン」など)といったテーマを扱い、ガガ自身の素顔や率直さが前面に出ています。
全体として『ジョアン』は、派手なパフォーマンスや前時代のエレクトロ・ポップとは一線を画する、より内省的でルーツ志向の作品としてリスナーと批評家の関心を集めました。