ジョン・バーディーン:トランジスタ発明とBCS理論でノーベル物理学賞二度受賞
ジョン・バーディーン — トランジスタ発明とBCS理論で2度のノーベル物理学賞を受賞、半導体と超伝導の礎を築いた生涯と業績を紹介。
ジョン・バーディーン(John Bardeen、1908年5月23日 - 1991年1月30日)は、アメリカの物理学者、電気技師で、ノーベル物理学賞を2度受賞した唯一の人物として広く知られています。トランジスタの発明と超伝導の理論的解明という二つの業績はいずれも現代の物理学と電子工学に決定的な影響を与えました。
初期の経歴と教育
バーディーンはウィスコンシン州マディソンで生まれ、父チャールズ・バーディーンはウィスコンシン大学医学部の教授でした。バーディーンはウィスコンシン大学マディソン校で電気工学の学士号と修士号を取得し、1936年にプリンストン大学で物理学の博士号を得ています。博士号取得後は研究と教育の両面で才能を発揮し、基礎研究と応用研究を橋渡しする立場で活躍しました。
トランジスタの発明(1947年)
バーディーンはウィリアム・ショックレー、ウォルター・ブラッテンと協力して、1947年12月23日にトランジスタを発明しました。この発明は真空管に代わる小型で高性能な半導体素子の実現につながり、電子機器の小型化・低消費電力化・高信頼性化を可能にしました。トランジスタの発明はその後の集積回路やコンピュータ、通信機器、半導体産業の発展の基礎となり、バーディーンらは1956年にノーベル物理学賞を受賞している。 トランジスタの成功は基礎物理学の理論的洞察と実験技術の結合がいかに産業と社会を変えるかを示す代表例です。
BCS理論と超伝導の解明
その後バーディーンは、レオン・クーパー、ジョン・ロバート・シュリーファーと共同で超伝導の理論的説明となるBCS理論(Bardeen–Cooper–Schrieffer 理論)を構築しました。1957年に発表されたBCS理論は、電子が格子振動(フォノン)を媒介にして対(クーパー・ペア)を形成し、その結果として抵抗ゼロの状態(超伝導)とエネルギーギャップが生じることを示しました。これにより低温域における金属の超伝導現象が定量的に理解できるようになり、実験結果との一致も高かったため、理論物理学における大きな勝利となりました。彼らのこの功績により1972年にノーベル物理学賞を受賞しました。
学界での活動と教育
バーディーンは1951年から1991年まで、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の電気工学および物理学の教授を務め、長年にわたり研究と教育に尽力しました。講義や研究指導を通じて多くの研究者を育て、固体物理学や半導体物理学、超伝導研究の発展に大きく寄与しました。研究室では理論と実験の両面を重視する姿勢が受け継がれました。
業績の意義と遺産
- トランジスタの発明は現代の電子技術・情報社会の基盤を築き、半導体産業の発展を促した。
- BCS理論は超伝導という重要な凝縮系の理解を飛躍的に深め、後の高温超伝導や量子材料の研究にも理論的基盤を提供した。
- 二度のノーベル賞受賞という稀有な栄誉により、バーディーンの名は20世紀の物理学史に刻まれている。
人柄と晩年
同僚や弟子たちはバーディーンを冷静で論理的、かつ実務的な研究者として記憶しています。実験的問題に対する鋭い直感と理論への深い理解を併せ持ち、基礎研究と応用研究の橋渡しをする姿勢が評価されました。1991年1月30日に亡くなるまで、研究と教育に精力的に取り組み続けました。
バーディーンの業績は科学技術の発展だけでなく、我々の日常生活を支える多くのデバイスやシステムの基盤ともなっており、その影響は現在も続いています。

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