ケイフェイブとは|プロレス用語の意味・由来とスマーク/マークの違い

プロレスでは、「ケイフェイブ」であるものは、現実には起こっていない、「演技」されたものである。プロレスでは多くのものがケイフェイブであり、つまり、本物のように見えるが(ストーリー展開など)、実際は、偽物である。

ケイフェイブ(kayfabe)とは

ケイフェイブは、プロレス(と一部のショー)における「見せ物の真実性」を保つための演技・態度・慣習を指します。試合の勝敗や選手同士の確執、怪我や友情などを本当の出来事として観客に見せることで、物語(ストーリーライン)の没入感を高めます。リング内で行われるほとんどのアクションやプロモーション(マイクパフォーマンス)は意図的に仕組まれた「ワーク(work)」であり、それを偽りなく見せることがケイフェイブの目的です。

具体例

  • 選手同士が長年の因縁を演じる(実際は友人であることもある)。
  • 試合中の「事故」や「怪我」が演出され、ストーリーに組み込まれる。
  • マイクでの挑発(プロモ)や公開場面での「素顔」を演じ分ける。
  • 大会の結果や台本が外部に漏れないようにするための隠蔽行為。

マーク(mark)とスマーク/スマートマーク(smark)の違い

マークは、ケイフェイブの演技を文字どおり本物だと信じている観客や人を指す俗語です。興行の仕組みや台本の存在を知らず、そのまま感情移入して応援・落胆します。一方、スマーク(smark, smart mark)は「プロレスが演技である」と知りつつも、ストーリーや試合そのものを楽しむ観客を指します。スマークは裏事情を理解したうえで、演出や過去の伏線、技の見せ方などを批評・議論したり、作品としての価値を楽しんだりします。

現代のファン文化では、スマークがコミュニティで主導的な役割を果たすことが多く、SNSやポッドキャストで情報を共有して盛り上げる一方で、時に「本来のショーの流れを壊す」として選手や運営と軋轢を生むこともあります。

語源・由来

「ケイフェイブ」の語源ははっきりしていませんが、いくつかの説があります。代表的なのは、ピッグ・ラテン(言葉遊び)の「fake」→「akefay」が転じたという説です(これが変化して "kayfabe" になったとする説)。ほかにも興行界・カーニバル語(興行師たちの隠語)由来、あるいは「keep faith(信頼を保て)」の短縮や転訛という説などが挙げられます。いずれにせよ、20世紀初頭から中盤にかけて使われ始めた言葉で、興行やショーの世界で演技を守るための合言葉的な意味合いを持っていました。

ケイフェイブの破られ方と現代の変化

伝統的には、レスラーや関係者はリング外でもキャラクターを演じつづけることでケイフェイブを保ち、観客の没入を守っていました。しかし時代が進むにつれ、テレビやインターネット、SNSの普及で舞台裏(バックステージ)の情報やインタビューが容易に流れるようになり、ケイフェイブは徐々に緩くなっています。意図的にケイフェイブを破る「ブレイキング・ケイフェイブ(breaking kayfabe)」や、本当に起こった出来事を語る「シュート(shoot)」が話題になることもあります。

今日ではプロモーション側が台本の存在を公然と認めたり、選手がリング外で素顔を出すことも増え、ケイフェイブは完全に崩れたとは言えないまでも、柔軟に運用されるようになっています。それでも試合中の表現や演出で「嘘を本当に見せる」技術はプロレスの魅力の根幹であり続けています。

関連用語(簡単な説明)

  • ワーク(work):仕組まれた演技・筋書き。
  • シュート(shoot):本当の出来事や素直な発言(演技ではないもの)。
  • ブレイキング・ケイフェイブ:意図的/偶発的にケイフェイブが破られること。

以上が「ケイフェイブ」と、その関連語(マーク・スマーク)の基本的な意味と背景、現代における変化の概略です。プロレスの魅力は、演技として作られた物語をいかにリアルに見せるか、そして観客がその物語にどう関わるかにもあります。


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