コーリ・クリーク(Sir Creek)は、インドとパキスタンの間で争われている潮間帯の小川で、東側はクッチの広大な湿地帯に接しています。クリークはクッチのラン(塩性湿原)の縁に位置し、全長はおよそ96km(60mi)に及ぶ帯状の水域です。海へ向かう水路はアラビア海へ注ぎ、地域の地形と海域境界の決定に重要な役割を果たしています。

位置と地理的特徴

この水域は、インド側のグジャラート州とパキスタン側のシンド州が接するクッチ地方の潮間帯を縫う形で走っています。海水の満ち引きによって潮汐性の水路や干潟、マングローブや塩性土壌が形成され、乾季には広い干潟が露出します。モンスーン期(6月〜9月)には河口や堤防が増水し、周辺の塩分濃度の低い干潟や湿地を広く覆います。

領有権と境界を巡る争い

サー・クリークを巡る争点は、どの地点を境界線の起点とするか(河道のどちらの側を国境とするか)に集中しています。一般に問題となるのは「河口から上流の頂点(creek apex)までの経路」と、その頂点から東に延ばす境界線の設定です。共和国側とパキスタンの間で争われている立場は異なり、インド側はこの地域をインドのラン・オブ・クッチ湿原の一部として主張しています。

この争いは、単なる陸上の領有問題にとどまらず、海洋に延びる排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の権益、将来的な海底資源(石油・ガス等)へのアクセスに直結するため、両国にとって戦略的・経済的に重要です。

歴史的決定と現在の状況

長年にわたる論争のうち、川の上流側の区間については1968年の審判所判決で一部が定義され、以降その区間の境界は比較的明確に固定されています。一方で河口部やその周辺の海上境界に関しては未解決のままで、両国は外交的交渉や合意を通じて解決を図ろうとしてきました。近年も協議が断続的に続けられており、完全解決には至っていません。

生態系と人間活動

小川自体は広大な無人の湿地帯にあり、地形は入り組んだ潮汐路、泥地、塩平原から成ります。冬季にはフラミンゴをはじめ多くの渡り鳥が越冬・停留する重要な生息地で、生物多様性の観点からも価値があります。干潟やマングローブは魚介類や甲殻類の重要な育成場であり、沿岸漁業にとっても間接的な恩恵をもたらしています。

ただし地形は変わりやすく、浅瀬や急速に変動する泥地(クイックサンドのような危険)もあるため人の常住はほとんど見られません。両国の間での境界問題の影響もあり、漁業従事者が海域で抑留されるといった人道・安全の問題が報告されることがあります。

戦略的重要性と課題

サー・クリークの位置は陸上だけでなく海上の境界に影響を与えるため、領有の帰属はEEZや資源開発に直結します。そのため安全保障面でも敏感な地域となっており、軍事的なパトロールや監視が行われることがあります。同時に、環境保全、漁民の権利保護、越境洪水や気候変動による影響など複合的な課題を抱えています。

まとめ

  • コーリ・クリーク(サー・クリーク)はクッチの湿地帯に位置する潮間帯の水路で、全長約96kmに及ぶ。
  • インド(インド側)とパキスタンの双方で領有や境界を巡る争いが続いており、海洋境界や資源配分と密接に関連している。
  • 1968年の審判所判決で一部区間は定義されたが、河口部の完全な解決は未だに到達していない。
  • 生態的に重要な湿地であり、渡り鳥の越冬地や漁業資源の育成場としての役割を持つ一方、地形の危険性や人道的な問題も伴っている。