LZT(Large Zenith Telescope)は、直径6.0メートルの望遠鏡である。バンクーバーの東約70kmにあるブリティッシュ・コロンビア大学のマルコム・ナップ研究林に設置されています。光学望遠鏡としては世界最大級の大きさであり、液体鏡を用いた天頂望遠鏡(liquid mirror telescope, LMT)の代表的な例です。

構造と動作原理

LZTの主鏡は固体の鏡ではなく、薄く入れた液体の水銀を回転させることで作られます。回転する液体表面は遠心力の作用で精密な放物面(パラボラ)形状になり、これが反射鏡として働きます。LZTでは約28リットルの水銀を鏡面に用い、鏡は8.5秒に1回転します。回転速度と液体の深さで鏡の曲率(焦点距離)が決まります。

集められた光は焦点面に設置したCCDにより検出され、観測法としては地球の自転に合わせて検出器側で電子的に追尾する「トランジットイメージング」(Time-Delay Integration, TDI)方式が用いられます。これにより、望遠鏡自体を向きを変えずに長時間の露光に相当する追尾が可能になります。

用途と観測の特色

天頂望遠鏡であるため観測可能な天域は常に天頂付近に限られますが、その分同一の天域を深く連続的に観測するのに適しています。主な用途には次のようなものがあります。

  • 広域サーベイ観測、深いイメージングによる天体数カウントや銀河の統計研究
  • 多波長のフォトメトリを用いたフォトメトリック赤方偏移推定や色分けによる分類
  • 時間変化天体(変光星、超新星、トランジェント現象など)の探索とモニタリング(同じ天域を繰り返し観測できる利点)

利点と制約

  • 利点
    • 構造が比較的単純でコストが低く、大口径の鏡を安価に作成できる。
    • 鏡面は重力と回転だけで自然に精密な放物面をとるため、研磨や支持構造の複雑さが少ない。
    • 同一天域の長期モニタリングや広域サーベイに適している。
  • 制約
    • 望遠鏡は常に天頂を向くので、任意の方向を観測できない(観測可能な天域が限られる)。
    • 短時間で通過する対象に対する露光は制限される(TDIで補うが追尾可能時間は地球の自転に依存)。
    • 水銀などの有害物質を扱うため、環境・安全対策が必須である。

歴史と開発

LZTは、既存の装置や部品を再利用して比較的低コストで構築された装置の一例です。この望遠鏡は、その数年前に数年間使用して引退した直径3メートルのNASA軌道デブリ観測用望遠鏡の部品を使って1994年に作られました。以降、LZTは液体鏡技術の実証や天文サーベイへの応用研究に貢献しました。液体鏡望遠鏡自体は設計が単純で大口径化しやすいため、地上での大規模サーベイ計画やコスト効率の高い観測装置として注目されています。

安全性・環境面の配慮と将来

水銀は揮発性・毒性を持つため、取り扱いと保管には厳重な管理が必要です。LZTのような施設では換気、漏洩防止、廃棄処理などの対策が講じられます。近年は水銀を使わない代替技術(例えば反射膜や低揮発性の液体、あるいは電気的に反射面を作る新技術)の研究も進み、将来的にはより安全で環境負荷の小さい液体鏡システムの普及が期待されています。

まとめると、LZTは液体水銀回転鏡を用いることで直径6mという大口径を比較的低コストで実現した天頂望遠鏡であり、トランジットイメージングによる広域・連続観測で天文学に有益なデータを提供しました。同時に、観測対象が天頂付近に限定されるという固有の制約や水銀取扱いの問題などを抱えつつ、液体鏡技術の可能性と課題を示した装置でもあります。