法定後見とは、自ら適切な法的判断ができない人(未成年者や判断能力が不十分な成人)を保護するために、家庭裁判所が後見人を任命して法律行為や生活面での支援を行わせる制度です。後見には、裁判所が任命する「法定後見」と、本人があらかじめ契約しておく「任意後見」があり、ここで扱うのは主に裁判所が関与する法定後見です。裁判所が後見人を選ぶ(任命する)前に、その人が判断能力を欠く(あるいは未成年で保護が必要)であることを確認します。なお、裁判所に関する判断や任命は、必要に応じて医師の診断書や関係者の陳述を参考に行われます。裁判所が関与する点が法定後見の特徴です。
未成年の法定後見(未成年後見)
家庭裁判所は、様々な事情で未成年者に適切な保護者がいないと判断した場合に、未成年のための後見人を選任します。たとえば次のようなケースが該当します:
- 子どもに親など子どもを預かってくれる大人がいない場合
- 子供の親が亡くなった場合
- 子どもの親が権を失った場合(裁判所が親が子供の世話をすることができないと判断した場合。たとえば、親が自分の子供を傷つけたり、適切にそれらの世話をしていない場合など)
- 子どもの親が無能(自分で判断できない)と裁判所が判断した場合
未成年後見人には、子どもの監護・教育・財産管理などに関する法定の権限が与えられます。未成年の最善の利益を第一に考え、必要に応じて里親制度や児童福祉機関と連携して保護が行われます。
成年の法定後見(成年後見)
成年後見は、精神障害や認知症、知的障害などにより判断能力が不十分な成人(いわゆる「無能力な人」)を保護するため、家庭裁判所が後見人を任命する制度です。裁判所は、本人の生活や財産の保護のために適切な後見の種類(後見・保佐・補助)を選び、必要な権限を与えます。法定後見人は、その後、病人のための法的意思決定を行う権利を持っていますが、具体的な範囲や制限は家庭裁判所の決定によります。
手続き(申立てから任命まで)
- 申立て:本人、配偶者、親族、市区町村長、場合によっては検察官などが家庭裁判所に後見開始の申立てを行えます。
- 必要書類:診断書(精神科医等による)、戸籍謄本・住民票、財産関係の書類、申立書類などが求められます。
- 調査・審理:家庭裁判所が事情を調査し、本人の意思(可能な範囲で)や医師の意見を確認します。場合によっては鑑定を行います。
- 後見人の選任:裁判所が適当と判断した者を後見人に任命します。親族が適任と判断されることが多いですが、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が選ばれる場合もあります。
後見人の権限と義務
後見人には主に次のような権限と義務があります(家庭裁判所の決定で具体的に定められます)。
- 財産管理:預金の管理、不動産の管理・処分、年金や生活費の受け取り・支払いなど。
- 法律行為の代理:契約の締結・解除、訴訟行為など(家庭裁判所の許可が必要な場合があります)。
- 生活・医療に関する支援:居住先の確保、福祉サービスや介護サービスの利用手続き、必要な範囲で医療に関する同意等(医療同意の取り扱いは制度や裁判所の判断により異なります)。
- 報告義務:定期的に家庭裁判所に対して財産目録や収支報告を提出し、監督を受けます。
- 利益の優先:常に被後見人(保護される人)の利益を優先して行動する義務があります。
制度の種類と違い
成年後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて次の制度があります。
- 後見:判断能力が著しく不十分で、広範な代理権が必要な場合に適用される最も強い保護。
- 保佐:判断能力が不十分で、一定の重要な法律行為について保佐人の同意が必要な場合に用いられる中程度の保護。
- 補助:判断能力が一部不足しており、本人が指定した範囲で援助が必要な場合に適用される軽度の保護。
終了・取消し
後見は次の場合に終了または変更されます:被後見人の死亡、判断能力の回復(回復が認められた場合)、家庭裁判所の判断による解除・変更、後見人の辞任や交代など。裁判所は必要に応じて後見の範囲を見直したり、後見人を交代させたりします。
実務上のポイント
- 家庭裁判所の手続きには時間がかかる場合があるため、早めに相談・申立てを行うことが重要です。
- 親族間の合意があれば後見人の選定が円滑に進みますが、利害関係がある場合は専門職が選ばれることもあります。
- 任意後見契約と法定後見は目的や手続きが異なるため、将来の判断能力低下に備えるなら任意後見も検討すると良いでしょう。
不明点がある場合は、家庭裁判所や市区町村の相談窓口、弁護士や司法書士、地域包括支援センターなどの専門家に相談してください。