論理プログラミングとは:定義・歴史・仕組み(Prolog入門)
論理プログラミングの定義・歴史・仕組みをProlog入門でわかりやすく解説。事実・規則・否定の扱いを実例で学べる入門ガイド
論理プログラミングとは、数学的論理を使ってコンピュータプログラムを書くことです。ユーザが直接論理的な文を入力することができる特殊なプログラミング言語があります。これらの言語の中でおそらく最もよく知られているのはPrologと呼ばれるものです。アロンゾ・チャーチは、今日ラムダ微積分として知られているものの中で、論理プログラミングの一形態を使用しました。論理プログラミングはLISPでも使用されています。
プログラムは、ルールと事実の集合で構成されています。多くの場合、論理プログラミングでは、失敗としての否定や弱い否定と呼ばれるものを使う。これは、事実と規則からいくつかの句p {\displaystyle p}を導き出すことができない場合、システムはその否定が真であると仮定することを意味する。
定義と基本概念
論理プログラミングは、プログラムを命題や述語論理の式(事実と規則)の集合として記述し、問い合わせ(クエリ)に対して論理的推論によって答えを導く手法です。主な要素は次の通りです。
- 事実(facts):既知の真とされる情報(例:parent(alice, bob).)。
- ルール(rules):条件付きの事実。ある条件が満たされれば結論が成り立つ(例:grandparent(X, Z) :- parent(X, Y), parent(Y, Z).)。
- クエリ(queries):ユーザが知りたいことを問い合わせる。システムは事実とルールから回答(成功/失敗、あるいは変数の代入)を返す。
- 照合(unification):項同士を一致させる操作。変数への代入を決定して、述語が成立するかを判断する。
- バックトラッキング(backtracking):複数の可能性がある場合に探索を戻って別の選択肢を試す仕組み。
- 否定の失敗(negation as failure):ある述語が導出できなければその否定を真と見なす、いわゆる「弱い否定」。これは閉世界仮定(知られていない事柄は偽とする)と関係します。
歴史と発展
論理プログラミングの起源は論理学と計算理論に根ざしています。アロンゾ・チャーチの研究やラムダ計算は計算モデルの基礎を提供しました。実用的な言語としての代表はPrologで、1970年代にアルランド・コルメロー(Alain Colmerauer)らによって開発され、ロバート・コウィンスキー(Robert Kowalski)らがその理論的基盤(ホーン節、解法戦略)を整備しました。以後、制約論理プログラミング(CLP)や論理プログラミングと関数型プログラミングの統合、並列論理プログラミングなどさまざまな発展がありました。
仕組み(Prologを中心に)
Prologではプログラムはホーン節の集合として表現されます。ユーザがクエリを投げると、Prologは以下を行います。
- クエリに含まれる目標を左から順に取り出す。
- 現在の目標と一致する事実やルールのヘッドを照合(unification)する。
- 照合に成功すれば、そのルールのボディ(副目標)を新たな目標として追加する。
- 全ての目標が満たされれば成功し、変数に対する代入(解)を返す。失敗すれば最後の分岐点までバックトラッキングして別の照合を試みる。
この過程は内部的にSLD解決(SLD-resolution)という探索戦略で実装されています。実装上は深さ優先探索とバックトラッキングを組み合わせており、探索木の走査順による性能差や無限ループの問題に注意が必要です。
簡単なProlog例
% 事実 parent(alice, bob). parent(bob, charlie). % ルール grandparent(X, Z) :- parent(X, Y), parent(Y, Z). % クエリの例 ?- grandparent(alice, Who). % 結果: Who = charlie.
否定と閉世界仮定
本文でも触れたように、論理プログラミングでは否定の失敗(negation as failure)を使うことが多いです。これは「システムがある述語を導出できないなら、その否定を真と扱う」という振る舞いで、次の点に注意が必要です。
- 現実世界が部分的にしか知られていない場合、否定の失敗は誤った結論を生む可能性がある(閉世界仮定)。
- 論理的な完全性(あるべき論理的な否定)とは異なり、実用的・実装上の扱いである。
応用例と利点・欠点
応用分野の例:
- 知識表現と推論(エキスパートシステム)
- 自然言語処理(文法の記述と解析)
- データベース照会やルールベースのシステム
- 計画・探索問題のモデリング
利点:
- 宣言的に問題を記述できる(「どうやって」ではなく「何が真か」を書く)。
- 探索や推論の仕組みが言語実装に委ねられるため、短く表現できることが多い。
- 知識の追加・変更が比較的容易。
欠点・制約:
- 数値計算や大量データ処理には向かない場合がある(パフォーマンス面)。
- 深さ優先探索のため、探索順によっては非効率または無限ループに陥る場合がある。
- 閉世界仮定や否定の失敗に伴う意味論的な扱いの難しさ。
発展と派生
論理プログラミングはその後、さまざまな方向に展開しました。代表的なものに制約論理プログラミング(CLP)があり、数式やドメイン制約を組み込んだ効率的な探索が可能です。また、述語論理のより豊かな表現や非古典論理を取り込む試み、並列・分散処理との統合も行われています。
まとめ
論理プログラミングは、数学的論理を基礎に、事実と規則を用いて推論を行う宣言的なプログラミングパラダイムです。Prologが代表的な実装であり、照合(unification)やバックトラッキング、否定の失敗といった独自の仕組みによって動作します。知識表現や推論が重要な分野で強みを発揮しますが、適用領域や実装上の制約を理解した上で使うことが重要です。
質問と回答
Q:論理プログラミングとは何ですか?
A:論理プログラミングとは、数学的論理を用いてコンピュータプログラムを記述するプログラミングのアプローチです。
Q:論理プログラミングを使用するプログラミング言語にはどのようなものがありますか?
A:論理プログラミングを用いたプログラミング言語には、PrologやLISPなどがあります。
Q:論理プログラミングにおけるルールやファクトの役割は何ですか?
A:論理プログラミングのプログラムは、ルールとファクトのセットで構成されています。
Q:論理プログラミングにおける失敗としての否定とは何ですか?
A:失敗としての否定とは、論理プログラミングにおける概念で、事実と規則から特定の節を導くことができない場合、システムはその否定が真であると仮定することです。
Q:論理プログラミングにおける弱い否定とは何ですか?
A:弱い否定とは、論理プログラミングの概念である「失敗としての否定」の別称です。
Q:論理プログラミングの一種であるラムダ計算を使ったのは誰ですか?
A:アロンゾ・チャーチは、現在ラムダ計算と呼ばれている論理プログラミングの形式を用いました。
Q:論理文を直接入力できるプログラミング言語として最も有名なものはどれでしょう?
A: Prologは、ユーザーが直接論理文を入力できる最も有名なプログラミング言語でしょう。
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