メルク修道院とは オーストリア ドナウ川沿いのバロック様式ベネディクト会修道院 世界遺産
メルク修道院(Stift Melk)は、ベネディクト会系の修道院である。ドナウ川沿い、メルクの街の近くにあり、ニーダーエスターライヒ州に位置する。ヴァッハウと呼ばれる地域の特徴の1つで、ユネスコの世界遺産に登録されている。
1297年8月14日の火事で、修道院はほぼ全焼した。18世紀初頭にバロック様式で再建された。
歴史の概略
メルク修道院は歴史が古く、現在の場所には中世以来の宗教施設が続いている。伝承によれば、修道院は11世紀に設立され、以降オーストリアの宗教・文化の中心の一つとして発展した。1297年の大火やその後の変遷を経て、17〜18世紀にかけて大規模な改築と装飾が行われ、現在見られるバロック様式の建築群が形成された。
建築と内装の見どころ
18世紀のバロック再建では、外観の堂々たるファサード、広い中庭、壮麗な階段、そして装飾豊かな教会・図書館・宴会の間(マーマーザール/大広間)などが整えられた。内部は天井画やフレスコ画、精巧なステッコ(漆喰装飾)で満たされ、バロック美術を代表する空間となっている。
- 図書館:バロック様式の書庫は特に有名で、美しい書架と天井画が観光客を惹きつける。古写本や歴史的文献を収蔵しており、学術的にも価値が高い。
- 修道院教会:豪華な祭壇装飾やフレスコ画が見どころ。バロック期の宗教美術が集中している。
- 大階段と大広間:訪問者がまず目を奪われる象徴的な空間。式典やコンサートにも使用されることがある。
文化的・現代的な役割
メルク修道院は現在も活動するベネディクト会の修道院であり、宗教的な機能に加えてStiftsgymnasium Melkなどの教育機関や博物館、ガイド付き見学、季節のコンサートや文化イベントの会場としても利用されている。周辺の街並みと合わせて観光資源になっており、ヴァッハウの景観の一部として2000年にユネスコの世界遺産(ヴァッハウの文化的景観)に登録された。
訪問のヒント
- 見学はガイドツアー形式が一般的で、図書館や教会内部は撮影制限がある場合があるため、現地の案内と注意表示に従うこと。
- 展覧やコンサートなどの特別企画が行われることがあるので、訪問前に公式案内で開館時間やイベント情報を確認するとよい。
- 修道院は高台に位置するため、ドナウ川やヴァッハウ渓谷を見渡す絶景ポイントが複数ある。散策や写真撮影に適している。
メルク修道院は宗教・建築・芸術史の重要な遺産であり、オーストリアのバロック美術と中世からの学術伝統を今に伝えている。観光面だけでなく、信仰と学びの場として現役で機能している点も大きな特徴である。


メルクの旧市街の上にあるシュティフト・メルク
画像
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修道院の教会
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フレスコ画が描かれた教会の天井
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教会のキューポラ
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ヨハン・ミヒャエル・ロートマイヤー著「修道士の勝利」。
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聖ベネディクトの天国への凱旋(同じくロットマイヤー作
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大理石ホールの天井に描かれた絵