サン・ミリャン(スソ・ユーソ)—ラ・リオハのユネスコ世界遺産修道院と『グロサス・エミリアネンセス』
サン・ミリャン(スソ・ユーソ)—ラ・リオハのユネスコ世界遺産。中世写本「グロサス・エミリアネンセス」発見の地、歴史と文化の宝庫を写真と解説で紹介。
サン・ミリャン・デ・スソ(6世紀)とサン・ミリャン・デ・ユーソ(11世紀)は、スペイン・ラ・リオハ州のサン・ミリャン・デ・ラ・コゴラ村にある二つの修道院である。1997年12月、ユネスコの世界遺産に指定された。スペイン語とエウスケラ語で書かれた最初の文章が「glosas Emilianenses」という本の中で発見された。この宝物は、この場所が人類遺産に含まれる理由である。
歴史
サン・ミリャンの修道院群は、イベリア半島におけるキリスト教修道院文化の長い連続性を示す遺産で、6世紀頃に起源をもつとされる。古いほうのデ・スソ(Suso)は洞窟や岩盤を利用した小さな礼拝空間や修道士の居室を核として発展し、8〜11世紀にかけてのイスラム期やレコンキスタ期を経て保存されてきた。対してデ・ユーソ(Yuso)はより大きな共同体型の修道院として11世紀以降に整備され、以後ルネサンスやバロック期の改築・増築が続いたため、様々な時代の建築様式が混在している。
建築と施設
デ・スソは岩窟礼拝堂やモサラベ(イスラム文化の影響を受けた)様式の要素、半円アーチや古い石彫刻など、初期中世の特徴を色濃く残す。一方、デ・ユーソは大聖堂的なファサード、回廊(クロイスター)、合唱席や礼拝堂などを備え、ルネサンスやバロックの装飾を随所に見ることができる。両修道院は図書写本(スクリプトリウム)や写本コレクションを有し、中世から近世にかけての写本・史料が重要な文化財として保管されている。
グロサス・エミリアネンセス(Glosas Emilianenses)の意義
「glosas Emilianenses(グロサス・エミリアネンセス)」は、ラテン語写本の余白や行間に書き込まれた注釈(グロサ)群で、概ね10世紀から11世紀に記されたとされる。それらにはラテン語の注釈としてロマンス系の初期の俗語(カスティーリャ語の祖形)と、少数のエウスケラ(バスク語)語形が混在して記録されていた。言語史・文献学上、この発見はカスティーリャ語(現代スペイン語)とバスク語の最古期の文字資料の一部を提供するものであり、しばしば「カスティーリャ語のゆりかご(cuna del castellano)」として言及されることがある。これによりサン・ミリャンはヨーロッパ言語史における重要拠点と見なされている。
保存・公開と文化的評価
この修道院群は学術上・観光上ともに重要で、修道院の図書館や写本群を基にした研究が継続している。多くの写本は特別展示や複製を通じて紹介され、学者や一般来訪者の双方がアクセスできるようになっている(原本の保護のため閲覧は制限される場合がある)。また、2007年には「スペインの至宝12選」の最終選考に残った100件のうちの1つに選出されるなど、国内外での評価も高い。
サン・ミリャンの修道院群は、宗教・建築・言語という複数の側面で中世から現代に至る文化の連続性を示す場所であり、訪問や研究を通じてその価値を体感できる遺産である。
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