ガリバルディ山とは ブリティッシュコロンビア州のダサイト質火山の地質・噴火史と災害リスク
ガリバルディ山は、ブリティッシュコロンビア州南西部にある浸食されたダサイト質の地層火山です。ガリバルディ山(Garibaldi)とその南にあるベイカー山(Mount Baker)はともにカスケード火山弧の一部であり、更新世以降の造山・火山活動の産物です。バンクーバーの真北約80kmに位置するガリバルディ火山複合体は、ガリバルディ山本体に加え、アットウェルピークやダルトンドームなど複数の火山体から成ります。この火山センターは長さ約30km、幅約15kmにわたるエリアに13を超える噴出孔や溶岩流を含む火山フィールドの一部で、その多くは観光保護区であるガリバルディ州立公園内にあります。
地質的特徴と形成過程
ガリバルディ地域の火山岩は主にダサイト(高シリカ、中程度の粘性を持つ火山岩)で、粘性が高いことから噴火時に爆発的活動や火砕流を生みやすい性質があります。最初期の火山活動はおよそ20万~30万年前に始まり、その後の長い休止期を経て、過去5万年以内に活動が再開されました。火砕流や密度流の堆積により、なだらかな外形から幅広い円錐形の山体が形成されました。
ガリバルディの南西斜面の一部は、当時の厚い氷河の上に堆積してできたため、氷河後退に伴う圧力喪失が山体崩壊を誘発しました。氷期終盤に氷が急速に融解すると、円錐形の西側が支持を失って大規模に崩壊し、現在の険しい地形や裸出した内部構造(スカルプ)を作り出しました。その結果、スコーミッシュの町北側斜面には、推定1億5000万m³程度のデブリーファン(瓦礫堆積)が残されています。
主要な噴出・溶岩流と年代
谷間の氷河が後退すると、ガリバルディ北側にあるクリンカーピーク(Clinker Peak)から2本の大規模な溶岩流が流出しました。最北端を占めるラブル・クリーク(Rubble Creek)流は、氷壁に閉じ込められた状態で冷却・堆積したため、非常に厚い(最大244m以上)溶岩堆積を形成しました。ラブル・クリーク流の急峻な北端は歴史的にも何度か崩壊しており、最も記録されている崩壊は1855年から1856年にかけてのものです。
最も新しい活動は、放射性炭素年代で約1万700年〜9,300年前に相当する期間に起こり、谷を満たしていた氷が消えた直後に起きたとされています。これにはガリバルディ山南東のオパールコーン(Opal Cone)からのリング・クリーク(Ring Creek)溶岩流の噴出が含まれます。
リング・クリーク溶岩流の特殊性
リング・クリークの溶岩流は非常に珍しい事例です。ダサイト質とは思えないほどに長く伸び、約15kmに及ぶ長さを記録しています。通常、このような長さは流動性の高い玄武岩流でしか達成されないため、ダサイト溶岩がこの距離を移動した理由としては、氷に閉じ込められたチャネルや特殊な冷却条件、あるいは噴出時の高温・高出力が関係した可能性が考えられています。
災害リスク — 想定される影響
ガリバルディ地域で火山活動が再開された場合、周辺の集落やインフラに対して多面的な脅威が生じます。ウィスラーやスコーミッシュなどの地域社会に対する主要なリスクは次の通りです。
- 火山灰と噴煙:噴火が爆発的(プルニアン型やペレアン型)であれば、大量の火山灰が数百メートルから数キロメートル上空へ放出され、風で広範囲に拡散します。これによりバンクーバー周辺を含む低地の空気質、呼吸器健康、農業、建物の屋根や機器に被害が出る可能性があります。また、航空機のエンジン損傷という深刻なリスクもあります。
- 火砕流・溶岩流:ダサイトは粘性が高く、火砕流や密度流を生みやすいため、山体斜面を高速で下る危険があります。とはいえ、溶岩流の性質からリング・クリーク流のように発生源から遠方へ移動するタイプは限定的であり、溶岩流による被害は局所的(中〜低程度)となる可能性があります。
- ラハール(火山泥流)や洪水:火山灰や堆積物が氷河や雪と混ざることで大量のラハールが発生しやすく、ブリテン地域の谷底や集落(例えばブラッケンデールなど)に甚大な被害を与える恐れがあります。氷床の融解は短時間で大規模な洪水を引き起こすこともあります。
- インフラと交通への影響:ウィスラーとスコーミッシュ、バンクーバーを結ぶ主要ルートであるハイウェイ99は、すでに地滑りや崖崩れに脆弱であり、噴火に伴う洪水や土石流で破損・閉鎖される可能性があります。空港や航空路の遮断、長期の物流混乱も考えられます。
- 水資源と漁業への影響:火山灰や堆積物は流域の水質・集水域に影響を与え、グレーターバンクーバーの水供給やピット湖、ピット川流域の水利用・漁業へ短期・長期の問題を引き起こす可能性があります。スコーミッシュ川、チェーカムス川、マムカム川のサケ漁業にも甚大な影響が懸念されます。
監視・予警と防災対策
ガリバルディ火山複合体は地質学的には“ホロシーン活動”を示す局所的に活発な火山であり、完全に死んでいるわけではありません。カナダ政府や地質学関連機関(例:地質調査所や地方当局)は、地震活動、地殻変動、ガス放出、熱異常などを通じて火山の兆候を監視しています。市民・旅行者向けには次のような防災対策が重要です。
- 避難経路や安全区域の整備、ラハールや火砕流沿いの居住地の評価と移転計画。
- ハイウェイ、鉄道、空港運営者と連携した緊急閉鎖・復旧計画の策定。
- 水道管理者による浄水槽対策と代替水源の検討。
- 漁業者や地域住民への早期情報提供と資源保護対策。
- 観光客向けの注意喚起、入山規制、スキー場などでの緊急対応訓練。
まとめ
ガリバルディ山は、ダサイト質で形成されたカスケード火山弧の重要な火山センターで、過去数万年にわたり複数回の敏速な地形変化や噴出活動を繰り返してきました。過去に起きた大規模崩壊や長距離のダサイト溶岩流(リング・クリーク流)などは、この地域の火山活動が多様であることを示しています。将来の火山活動が発生すれば、近隣コミュニティ、重要道路、漁業、水資源、航空交通へ広範な影響が及ぶ可能性があるため、継続的な監視と地域レベルでの防災準備が不可欠です。


スコーミッシュから見たガリバルディ山。
質問と回答
Q:ガリバルディ山はどこにあるのですか?
A:ガリバルディ山はブリティッシュコロンビア州南西部に位置し、バンクーバーから80kmほど北にあります。
Q: カスケード火山帯に含まれる他の火山は何ですか?
A: ガリバルディ山の南側にあるベーカー山もカスケード火山帯の一部です。
Q: ガリバルディ山周辺の火山地帯は、いくつの噴火口があるのでしょうか?
A: ガリバルディ山周辺の火山地帯には、縦30km、横15kmの範囲に13の噴出口があります。
Q: クリンカーピークから流れた溶岩はどんなものですか?
A:クリンカーピークから流れた溶岩流は、リングクリーク流と呼ばれるデイサイト流で、長さは15kmにも及びます。
Q:ガリバルディ山では、どのような噴火が知られていますか?
A:ガリバルディ山の噴火には、プリニアン式噴火とペリアン式噴火があり、大量の火山灰を発生させ、火山の上空数百メートルにまで上昇することがあるそうです。
Q: 噴火がバンクーバー近郊の航空交通に与える影響は?
A: バンクーバー近郊で噴火が発生した場合、火山灰や破片が大気中に放出され、視界が遮られたり、航空機のエンジンやその他の部品に損傷を与える可能性があるため、航空交通に深刻な脅威を与えることが考えられます。
Q: ガリバルディ山周辺の地域社会には、どのような潜在的な危険がありますか?
A: ウィスラー、スコーミッシュ、ブラッケンデール、ピットレイクなどの地域社会は、洪水、ラハール、土石流、氷河の融解による春の洪水の増加、降灰による近隣河川の水供給や漁業の影響、ガリバルディ山の噴火による地滑りや土石流によるハイウェイ99のセグメントの破壊によって脅かされる可能性がある。