概要
多臓器機能不全症候群(MODS)は、重篤な急性疾患や外傷の後に、2つ以上の臓器系の機能が進行性に低下する状態を指す。MODSでは、障害を受けた臓器が、標的を絞った介入なしには生理学的な平衡を保てない。多くは集中治療の現場でみられ、全身性の炎症を引き起こす状態や組織灌流の不足に続いて発症する。
原因と病態生理
代表的な誘因には、重症感染症(敗血症)、大きな外傷、広範な熱傷、膵炎、大量輸血、そして長引く低血流状態(ショック)がある。背景には通常、宿主反応の制御異常があり、全身性炎症、内皮障害、微小循環障害、ミトコンドリア機能障害が重なって、酸素供給と細胞代謝を低下させる。こうした過程により、複数の臓器へ障害が連鎖的に広がる自己増幅的な悪循環が生じうる。
臨床像と診断
MODSは、単一の臓器不全ではなく、臓器系ごとの進行性の異常として認識される。典型的には、肺、循環器系、腎臓、肝臓、脳、凝固系が関与する。よくみられる臨床所見・検査所見としては、呼吸不全、昇圧薬を要する低血圧、クレアチニン上昇や腎代替療法の必要性、意識変容、肝機能検査異常、凝固障害などがある。
- 影響を受けやすい系統:呼吸器、循環器、腎、肝、神経、血液凝固。
- 診断は臨床的に行い、検査や画像所見で支持される。重症度の評価にはスコアリングシステムが用いられる。
臓器別の判定基準を簡潔に確認するには、臓器機能障害の定義を参照するとよい。
管理と重要性
治療は、発端となった原因の特定と修正、障害臓器の支持、さらなる損傷の予防に重点を置く。支持療法には、人工呼吸管理、昇圧薬、静脈内輸液、腎代替療法、感染に対する標的治療などが含まれる。多職種による救命救急集中治療は、継続的な医療介入を通じて生理学的安定を回復・維持し、恒常性を達成することを目指す。
歴史、用語、予後
この病態は歴史的に multiple organ failure(MOF)や multisystem organ failure と呼ばれてきたが、現在は臓器が不可逆的に「失敗」していなくても障害されうるため、「dysfunction(機能不全)」という表現が好まれる。予後は、関与する臓器の数と重症度、そして基礎原因に左右され、影響を受ける系が増えるほど死亡率は上昇する。予防では、敗血症の早期認識と迅速な蘇生が重視され、炎症反応を調整し臓器機能を保護する治療法の研究も続けられている。