iOSマルチタスクとは|機能・対応機種・歴史をわかりやすく解説
iOSマルチタスクの仕組み・対応機種・歴史を図解で簡潔解説。使い方や対応モデルの違いまで初心者でも理解できるガイド。
マルチタスクとは、iOSで利用できる機能で、複数のアプリケーションを同時に起動して異なる処理を並行して行える仕組みの総称です。ユーザーがアプリを切り替えたり、音楽再生やナビのようなバックグラウンド処理を継続したりできる一方で、OS側はバッテリーやメモリを考慮してアプリを「実行」「一時停止(サスペンド)」「終了」のいずれかに管理します。iOS 4以降で基本的なマルチタスク機能が導入されましたが、具体的な機能や挙動はiOSのバージョンや機種によって変わります。
マルチタスク機能は、2010年6月にリリースされたiOS 4.0で初めて公開されました。iPhone 4、iPhone 3GS、iPod Touch第3世代だけがマルチタスクを使うことができました。iPadは、2010年11月にリリースされたiOS 4.2までマルチタスクを使用することができませんでした。現在では、ほとんどの現行iPhone・iPadモデルでマルチタスクの各種機能(Appスイッチャー、バックグラウンド実行、Split View、Slide Over、Picture in Pictureなど)がサポートされていますが、機能の対応状況は機種とiOSのバージョンによって異なります。
主なマルチタスク機能(ユーザー向け)
- Appスイッチャー:直近に使ったアプリの一覧から速やかに切り替えられます。ホームボタン機種ではダブルクリック、ホームボタンがない機種では画面下から上へスワイプして一時停止します。
- バックグラウンド実行:音楽再生、ナビゲーション、通話、音声通話や一部の位置情報更新など、特定のタスクはアプリがバックグラウンドでも継続できます。
- バックグラウンドフェッチ:OSが定期的にアプリを起動してデータを取得し、次回起動時の表示を素早くする仕組みです(設定でオン/オフ可能)。
- Slide Over / Split View(iPad):複数のアプリを同時に画面上で操作できます。Split Viewは画面を分割して2つのアプリを並べて使う機能、Slide Overは片側に小さく別アプリを呼び出す機能です。
- Picture in Picture(PiP):動画やビデオ通話を小窓で表示しながら別アプリを操作できます(iPadではiOS 9以降、iPhoneではiOS 14以降で対応機種あり)。
歴史の主なポイント
- 2010年(iOS 4.0):iPhoneでの基本的なマルチタスク機能を導入。
- 2010年(iOS 4.2):iPadでもマルチタスクが利用可能に。
- 2015年(iOS 9):iPad向けにSplit View、Slide Over、Picture in Pictureなどのマルチタスク機能が強化。
- 2019年(iOS 13):開発者向けにBGTaskSchedulerなど、バックグラウンド処理の新しいAPIが導入され、より効率的なバックグラウンド処理が可能に。
- 2020年(iOS 14):Picture in PictureがiPhoneにも対応(対応は機種による)。
使い方(基本ジェスチャ・操作)
- Appスイッチャーの起動:ホームボタン機種はホームボタンをダブルクリック、ホームボタンがない機種は画面下から上へスワイプして一時停止。
- アプリを終了する:Appスイッチャーでカードを上へスワイプ(常用しているアプリを不用意に終了すると起動が遅くなったり、バッテリー効率が悪化する場合があるので注意)。
- Split View(iPad):Dockからアプリをドラッグして画面端にドロップ、位置や幅は調整可能。
- Slide Over(iPad):別のアプリを小さく重ねて表示し、スワイプで呼び出し/隠す。
- Picture in Picture:動画再生中にホームボタン操作やホームジェスチャで戻ると小窓再生に切り替わる(対応アプリ・設定による)。
開発者向け:APIと制限
- バックグラウンドモード(Capabilities):音声再生、位置情報、Bluetooth、外部アクセサリ通信、Newsstand、VoIP(扱いが変化)、背景転送(URLSession)など、明示的に許可されたモードのみ長時間実行が可能です。
- BGTask(BGTaskScheduler):iOS 13以降で導入されたバックグラウンド処理スケジューラ。長時間処理や定期更新をOSのスケジュールで効率的に実行できます。
- バックグラウンドフェッチとプッシュ通知:短時間の更新はバックグラウンドフェッチやリモート通知で行うのが一般的。VoIPはPushKit→CallKitの組合せへ設計変更が推奨されています。
- 制限:iOSはメモリとバッテリーを重視するため、フォアグラウンド優先でバックグラウンド実行は厳しく制限されます。アプリは要求に応じて短時間で処理を終える設計が必要です。
注意点・バッテリー管理
- 常にアプリを強制終了する必要はほとんどありません。iOSは不要なバックグラウンドアプリを自動でサスペンド/終了します。頻繁に強制終了すると、次回起動時に余計な電力を消費することがあります。
- 設定→一般→Appのバックグラウンド更新でアプリごとのバックグラウンド更新のオン/オフが可能です。バッテリーを節約したい場合は不要なアプリをオフにしましょう。
- 位置情報の常時利用や音声ストリーミングなどはバッテリー消費が大きくなるため、権限や実行時間を最小化する設計が推奨されます。
まとめ
iOSのマルチタスクは、単に複数アプリを同時に動かすだけでなく、バッテリーやメモリを考慮したOS側の管理と、開発者向けの専用APIによって成り立っています。ユーザー側はジェスチャや設定で快適に使い分け、開発者側はOSの制約を理解して効率的なバックグラウンド処理を設計することが重要です。
特徴
高速なアプリの切り替え
アプリの高速切り替えにより、アプリの一時停止と再開をすばやく行い、他のアプリに簡単に切り替えられます。画面上にあるアプリは「実行中」。画面上にあるアプリケーションは「実行中」、画面上になくメモリ内にあるアプリケーションは「中断中」です。iOS 4 SDKでビルドされたすべてのアプリケーションは、iOS 4と互換性のあるデバイスで実行されている場合、高速アプリ切り替えをサポートしています。ユーザーは、マルチタスクバーを開くことで高速アプリ切り替えを使用できます。マルチタスクバーは、ホームボタンをダブルタップすることで表示できます。
タスクの完了
タスクの完了は、アプリが中断された後に、あるタスクを継続させるものです。iOS 4.0以降では、アプリはバックグラウンドでタスクを完了するために最大10分まで要求することができます。
バックグラウンドで動作している
アプリは、バックグラウンドAPIを使用することでバックグラウンドで動作させることができます。以下は、iOS 4.0以降で利用可能です。
- オーディオ-音声を再生する
- 位置情報-位置情報サービスを利用する
- VOIP-VOIP通話を行う
iOS 5.0では、以下の2つのAPIが追加されました。
- Newsstand-Newsstand向けコンテンツダウンロード
- External accessory-外部アクセサリーと連動する
関連ページ
- マルチタスク
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