体液調節(オスモレギュレーション)とは|浸透圧・水分塩分の調整機構(腎臓・ADH・アルドステロン)
体液調節(オスモレギュレーション)の仕組みをわかりやすく解説。腎臓・ADH・アルドステロンが浸透圧や水分・塩分をどう調整するかを図解付きで詳述。
体液調節(オスモレギュレーション)とは、体内の水分と電解質(主にナトリウムなど)を調節して、細胞外液・細胞内液の浸透圧(体液の「濃さ」)と体液量を一定の範囲に保つ生理機能です。適切な浸透圧と体液量は細胞の形態・代謝・血圧維持に必須であり、この機能は腎臓・内分泌系・中枢の協調によって成り立っています。
基本の概念:浸透圧と体液区画
- 浸透圧(osmolality/osmolarity):溶質粒子によって決まる水の移動の“駆動力”。血漿浸透圧の正常範囲はおおむね285–295 mOsm/kg。
- 体液区画:体内の水は細胞内液と細胞外液(血漿+間質液)に分けられ、ナトリウムは主に細胞外液の主要陽イオン、カリウムは細胞内液の主要陽イオンである。
- 等張変化(体液量の増減)と等張でない変化(ナトリウム濃度の変化→浸透圧変化)は異なる調節機構を誘導する。
腎臓の役割:濾過・再吸収・分泌による水と塩の調節
腎臓はネフロン(糸球体+腎尿細管)で血液を濾過し、尿細管で必要に応じて水分や電解質を再吸収または分泌して尿を作ります。再吸収の部位と性質は以下の通りです。
- 近位尿細管:濾液の多くの水・ナトリウム・グルコースを受動的・能動的に再吸収する(等張再吸収の主場)。
- ヘンレのループ(特に太い上行脚:TAL):NaClを能動的に再吸収するが水には不透過。これが髄質の浸透圧勾配(糸球体濃縮の基盤)を作る。
- 遠位尿細管・集合管:ホルモン依存的な最終的な水・塩の調節部位。ADHやアルドステロンの作用点であり、尿の濃縮やナトリウム保持・カリウム排泄を調整する。
主要ホルモンとその作用
- 抗利尿ホルモン(ADH = バソプレシン、下垂体後葉から分泌)
- 視床下部のオスモレセプターが血漿浸透圧上昇(=水分不足)を感知するとADH分泌が増加する。
- 腎集合管の主細胞のV2受容体に結合し、cAMPを介してアクアポリン-2(AQP2)を細胞膜に移動させることで水透過性を上げ、尿から水を再吸収して尿量を減らし尿を濃縮する。
- さらに高ADH状態では髄質での尿素の透過性が上がり、髄質浸透圧を維持して濃縮能を高める。
- アルドステロン(副腎皮質・球状帯から分泌)
- 遠位尿細管・集合管の主細胞に作用してENaC(上皮性ナトリウムチャネル)やNa+/K+ ATPaseの発現を促進し、ナトリウムの再吸収とカリウムの分泌を増加させる。
- 結果として体液量(血漿量)を維持・増加させ、血圧の調整に寄与する。
- レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)
- 腎の傍糸球体装置が低血圧・低NaCl流量を感知するとレニン分泌が増加。レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIへ変換し、ACEによりアンジオテンシンII(Ang II)に変換される。
- Ang IIは強力な血管収縮作用を持ち、また副腎からアルドステロン分泌を促すことでナトリウム保持と血圧上昇をもたらす。
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP):心房伸展(容量過剰)で分泌され、ナトリウム排泄を促進しRAASやADHを抑制して体液量を減らす。
尿の濃縮機構(対向流増幅と血管直流系)
ヘンレ係蹄の対向流システムと髄質の高浸透圧が尿濃縮の基礎です。主な要点:
- 下行脚は水透過性が高くNaCl透過性は低い。上行脚(TAL)はNaClを能動輸送するが水透過性は低い。これにより髄質に浸透圧勾配が生じる(対向流増幅)。
- 髄質の浸透圧は尿素の再循環にもよって維持され、ADHは集合管での尿素透過性を高めてこの勾配を強化する。
- 髄質の血管(vasa recta)は対向流交換でこの勾配を崩さないように保つ。
中枢の感知(浸透受容体と渇き)
視床下部のオスモレセプターは血漿浸透圧の微小な変化を感知し、ADH分泌や摂水行動(渇き)を調節します。血圧・血液量の低下は動脈圧受容器や右心房受容器、腎からのシグナルを通じてRAASやADH経路を活性化します。
臨床での重要ポイント(疾患と検査)
- 検査:血漿浸透圧(血清ナトリウム+尿素+グルコースを使った推定値)、尿浸透圧・尿比重、血清Na濃度。これらで脱水・過水和・希釈性低Naなどを評価する。
- 代表的な病態
- 中枢性尿崩症(central DI):ADH欠乏で尿量増加・尿希薄化。治療はバソプレシン類似薬(デスモプレシン)。
- 腎性尿崩症(nephrogenic DI):腎がADHに反応できない状態。原因は薬剤(リチウム等)や遺伝性疾患。
- SIADH(不適合なADH分泌):ADH過剰で低ナトリウム血症と低浸透圧が生じる。原因は中枢疾患、腫瘍、薬剤など。
- 原発性アルドステロン症(Conn症候群):高アルドステロンで高血圧・低カリウム血症。
- 心不全や肝硬変:有効循環血漿量の低下によりRAAS・ADHが亢進し、希釈性低ナトリウムや浮腫が生じやすい。
まとめ(要点)
- 体液調節は主に腎臓・ADH・アルドステロン・RAAS・中枢の渇きシグナルの協調により行われる。
- ADHは集合管の水透過性を上げて尿を濃縮し、アルドステロンはナトリウム保持とカリウム排泄を促す。
- ヘンレのループと髄質の浸透圧勾配(および尿素の再循環)が尿の濃縮能の基盤である。
- 臨床では血清・尿の浸透圧やナトリウム、臨床症状から疾患(尿崩症、SIADH、アルドステロン異常など)を鑑別する。
腎臓は、抗利尿ホルモン(ADH)、アルドステロン、アンジオテンシンIIなどのホルモンによって、腎尿細管で糸球体濾液から再吸収される水分量を調節し、人間の体液調節に非常に大きな役割を担っています。例えば、視床下部のオスモレセプターによって血漿浸透圧の上昇(=水ポテンシャルの低下に相当)が検出されると、下垂体からADHの放出が促され、腎臓の集合管の壁の透過性が上昇します。そのため、腎臓は体液から多くの水分を再吸収し、水分が過剰に排泄されるのを防いでいます。
質問と回答
Q:オスモレギュレーションとは何ですか?
A:生物が体内の塩分と水分を適量に保つことを「体液調節」といいます。
Q:誰が体液調節をするのですか?
A:バクテリアから人間まで、すべての生き物が行っています。
Q:レギュレーターとコンフォーマーって何?
A:調節型は体内の塩分濃度を一定に保つよう積極的に働き、適合型は環境に合わせます。
Q:海産魚はどうやって浸透圧を保っているのか?
A:海水魚は海水で生活すると塩分を取りやすいので、エラから積極的に塩分を出す(排泄する)。
Q:川魚はどのようにして浸透圧を保っているのか?
A:川魚は水を排泄する前に塩分を取り出している。
Q:淡水と海水の両方の環境に適応できる動物はいるのですか?
A:はい、ヒラメのように淡水と海水の両方で生活できる魚がいますが、一生のうちで異なるステージでそれに応じて適応します。
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