p型半導体とは?定義・ドーピング(正孔の生成)と主な用途
p型半導体とは、半導体の一種で、純粋なシリコンやゲルマニウムなどの半導体結晶に3価元素の不純物(アクセプター)を微量に導入することで作られる材料です。典型的なアクセプターとしては、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)などが使われます。これらの不純物原子が結晶中のシリコン原子と置換すると、もともとあったはずの4つ目の価電子が欠けた状態、すなわち「正孔(ホール)」が生じます。p型半導体では、この正孔が多数キャリア(多数担体)となり、電子は少数キャリア(少数担体)となります。
定義と基本的な性質
p型半導体は、電気伝導において正孔が主役になる半導体です。純粋な半導体は、電流を流しにくい中性な状態ですが、ドーピングによってキャリア密度が増え、導電性が高まります。半導体は一般に、導体と絶縁体の中間に位置する材料で、温度や不純物濃度に応じて導電性が大きく変化します。
正孔の生成(ドーピングの仕組み)
シリコンは外殻に4個の価電子を持つ元素です。そこに価電子が3個しかないアクセプター原子が1個入ると、結合を満たすために電子が1つ不足し、結果として結晶中に正孔が生まれます。この正孔は「電子の欠けた場所」であり、隣接する電子が移動して正孔を埋める動きを繰り返すことで、見かけ上は正の電荷を持つ荷電担体が移動しているかのように振る舞います(つまり電流は「穴が移動する」ように見えます)。
アクセプター不純物は価電子帯近傍にアクセプターレベル(受容準位)を作り、この準位から価電子帯へ電子が移ることで正孔が生成されます。ホウ素のような一般的なアクセプターのエネルギーレベルは価電子帯のすぐ上にあり、室温では多くがイオン化して正孔を供給します。
キャリア濃度と電気伝導
p型半導体の導電率は主に正孔の濃度 p と正孔の移動度 μp に依存します(伝導度 σ ≈ q·p·μp、q は素電荷)。シリコンでは正孔の移動度は電子の移動度より小さいため、同じ濃度であればn型(電子が多数キャリア)に比べて伝導性はやや低くなることが多いです。典型的なドーピング濃度は、用途に応じて約10^14〜10^19 cm^-3程度の範囲で設計されます。
多数キャリア/少数キャリア:p型では正孔が多数キャリア、電子が少数キャリアです。温度が上がると熱生成により固有キャリア(電子と正孔)が増え、極端に高温ではドーピング効果が相対的に小さくなります(固有キャリア濃度の影響)。また、ドーピングにより半導体のフェルミ準位は価電子帯側(下)へとシフトします。
ドーピングの方法(製造技術)
- 拡散法:高温中でアクセプター原子を表面から拡散させ、所望の深さ・濃度に制御する古典的手法。
- イオン注入:加速したイオン(ホウ素イオンなど)を半導体に打ち込み、エネルギーにより深さを制御する方法。注入後にアニール処理で結晶欠陥を修復し不純物を活性化する。
- インゴット成長時のインゴット均一ドーピング(例:チョクラルスキー法でのバルクドーピング)やエピタキシャル成長中のインサイチュードーピング。
p型半導体とp–n接合の振る舞い
p型とn型を接合するとp–n接合(ダイオードの基本構造)が形成され、接合部でのキャリア拡散により空乏層と内部電場(ビルトイン電位)が生じます。これが整流作用(片方向に電流を流しやすくする)や光起電力(太陽電池)など多くの半導体デバイスの基礎となります。単独のp型材料自体は電圧の極性にかかわらず電流を流すが、p–n接合などの構造によって一方向性の特性が得られます(元の説明にあった「一方向にしか流れない」は接合構造に依存する点を補足します)。
主な用途
- ダイオード(整流、保護回路)やトランジスタ(PNP型トランジスタやバイポーラ素子のp領域)
- CMOS素子ではpウェルやpチャネルMOSFETのソース・ドレイン領域(p型寄せ)
- 太陽電池:p型基板上にn型薄膜を作る方式など、光電変換における接合形成
- 発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード:p層は正孔注入の役割を持つ
- センサー類(フォトセンサー、温度センサー等)やアナログ素子
測定と評価
ドーピング濃度やキャリアの種類・濃度は、ホール効果測定や抵抗率測定、キャリア寿命測定などで評価されます。ドーピングによる欠陥や不純物の分布、再結合中心の有無はデバイス性能に影響するため、製造工程での制御が重要です。
まとめ(ポイント)
- p型半導体はアクセプター(3価不純物)導入で正孔が多数となる半導体。
- 正孔は「電子の欠損」として振る舞い、電流に寄与する。電子とは異なる移動度特性を持つ。
- ドーピング方法や濃度によって電気的性質が設計でき、ダイオード・トランジスタ・太陽電池など多くの半導体デバイスで重要な役割を果たす。
製造
P型半導体は、純粋な半導体材料にドーピングすることで作られる。添加される不純物の量は、半導体の量に比べて非常に少ない。添加される「ドーパント」の量を変化させることで、半導体の正確な特性を変えることができる。P型半導体では、正孔の数が熱で生成される電子の数よりもはるかに多い。
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質問と回答
Q: p型半導体とは何ですか?
A: p型半導体とは、シリコンやゲルマニウムのような固有または純粋な半導体に3価の不純物を添加した半導体の一種です。
Q: アクセプター不純物とは何ですか?
A:ボロン(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)などの3価の不純物をアクセプタ不純物と呼びます。
Q: 通常の半導体は何でできているのですか?
A:普通の半導体は、導体と絶縁体の中間のような物質でできていて、電流をあまり流さないのが特徴です。
Q: 物質の中で電流が流れる仕組みは?
A:電流が流れるためには、物質中を電子が移動し、物質中に電子が移動するための電子ホールが存在する必要があります。
Q: p型半導体はどうして電流を流すことができるのですか?
A: p型半導体は、電子よりも正孔が多いため、電流は正孔から正孔へと材料に沿って流れますが、一方向にしか流れません。
Q: シリコンとはどのようなもので、どのように半導体を作るのですか?
A: シリコンは外殻に4つの電子を持つ元素で、半導体の材料として最もよく使われています。p型半導体を作るには、シリコンにホウ素やアルミニウムなどの物質を加えて、4番目の電子の代わりにホールを作るのです。
Q: 純粋な半導体に3価の不純物を添加する目的は何ですか?
A: 純粋な半導体にホウ素やアルミニウムなどの3価の不純物を加えることで、電子の穴ができ、p型半導体で電流を流すことができるようになります。