パトリック・ヴィクター・マーティンデール・ホワイト(Patrick Victor Martindale White、1912年5月28日 - 1990年9月30日)は、オーストラリアの作家であり、20世紀を代表する英語圏の小説家の一人である。1935年以降、亡くなるまでに12の長編小説、2つの短編集、8つの戯曲などを発表し、深い精神性と厳しい観察眼を伴う独自の文学世界を築いた。

作品と作風

ホワイトの作風は、豊かな修辞とユーモア、叙述視点の頻繁な転換、内的独白や意識の流れ(stream of consciousness)の技法を取り入れたことで知られる。人間の孤独、精神的葛藤、オーストラリアの風土や社会的疎外といったテーマを繰り返し探求した。

代表作には以下が含まれる:

  • The Tree of Man(『人の木』、1955年)
  • Voss(『ヴォス』、1957年) — オーストラリア文学の名作とされる
  • Riders in the Chariot(1961年)
  • The Solid Mandala(1966年)
  • The Vivisector(『ビビセクター』、1970年)
  • The Eye of the Storm(1973年)

これらの作品では、人物造形の深さと倫理的・美的問題への問いかけが特に評価される。ビビセクターは強烈な芸術家像を描いた作品として注目され、2010年にはロストマン・ブッカー賞(Lost Man Booker Prize)のショートリストに入った。

受賞と評価

1973年、ホワイトはノーベル文学賞を受賞し、国際的な名声を確立した。1974年にはオーストラリアン・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。長年の功績を讃え、1973年には自身の寄付によりオーストラリア文学者を対象とした「パトリック・ホワイト賞(Patrick White Award)」が創設された。

ホワイトは1973年の受賞以来、1990年の死去まで「ノーベル文学賞を受賞したオーストラリア人作家」として広く知られていたが、2006年に南アフリカ出身のJ.M.クッツェーがオーストラリア国籍を取得するまで、その地位は唯一のものであった。

私生活と遺産

ホワイトはロンドン生まれだが幼少期をオーストラリアで過ごし、成人期にはイギリスやギリシャでも生活した。生涯を通じて私生活は控えめで、長年にわたってギリシャ系のパートナー、マノリ・ラスカリス(Manoly Lascaris)と共同生活を送り、二人は結婚しなかったが深い絆で結ばれていた。

ホワイトは生前からオーストラリア文学の発展に尽力し、自らの名を冠した賞や寄付によって若手作家を支援した。没後も作品は翻訳・再評価が続き、オーストラリア文学の中心的存在としてその影響は現在まで続いている。彼の遺稿や書簡類はオーストラリア国立図書館などで保存され、研究資料として活用されている。

位置づけ

パトリック・ホワイトは、同時代の作家クリスティーナ・ステッドと並んで、20世紀を代表するオーストラリアの小説家として広く評価されている。彼の作品は国内外で読み継がれ、オーストラリア文学を国際的に押し上げた業績として高く評価されている。