プチテアトル・ド・ラ・レーヌとは マリー・アントワネットのヴェルサイユ小劇場の歴史と見どころ
王妃の小劇場(英語:The Petit Théâtre de la Reine)は、ヴェルサイユ宮殿の小トリアノンの近くにある小さな私的劇場です。1780年、マリー・アントワネットの命により設計・建設され、王妃お気に入りの宮廷建築家リシャール・ミックが担当しました。定員はおよそ100席と非常に小規模で、王妃とその家族、親しい友人たちのための私的な上演や余暇の場として使われました。当時、多くの貴族が田園趣味の中で演劇や音楽を楽しむためにこうした小劇場を邸内に設けていました。
建築と内装の特徴
外観は控えめで簡素な造りでありながら、上質さを感じさせます。ミックの設計による外観は「プレーンでシンプル、そして落ち着いた印象」を与え、周囲の庭園と調和するよう配慮されています。内部は一転して豪華で、金箔、青、白を基調とした装飾が施され、木造の壁や天井は大理石のように塗装される〈トロンプ・ルイユ(だまし絵)〉の技法が用いられています。王妃のためのボックス(王妃席)や小さな観客席、舞台を囲む化粧窓(ボックス席)など、18世紀の宮廷劇場の親密さがそのまま残っています。
舞台装置と残されたセット
この劇場のもう一つの魅力は、当時の舞台装置や装置技術が現存している点です。古典的な滑車・カウンターウェイトを用いた舞台転換の仕組みや、絵で描かれた「袖(ウイング)」や背景画(バックドロップ)が保存されています。1780年にはピエール=アレクサンドル・モンシニーのLe Roi et le fermier(『王と農夫』、1762年)などが王妃とその仲間たちによって上演されました。劇場内には「森のセット」や「素朴なコテージ(農家)」を描いたオリジナルの舞台装置が残されていますが、これらは19世紀に修復・補修されたものです。近年でも保存修復のための調査や一部修復が行われ、歴史的な舞台機構の価値が見直されています。
歴史的・文化的意義
王妃の小劇場は、マリー・アントワネットの趣味と当時の宮廷文化を象徴する場所です。彼女は田園趣味(パストラル)を愛し、自らの私的空間で演劇や音楽を楽しむことで知られていました。この劇場は単なる観賞空間ではなく、宮廷の人間関係や社交、文化的実践が行われた舞台でもあり、当時の演劇装置や舞台美術の史料としても貴重です。また、ヴェルサイユ宮殿全体がユネスコ世界遺産に登録されていることもあり、宮廷建築・庭園・付属施設の一環として高い評価を受けています。
見学のポイントと注意
- 所在とアクセス:小トリアノンの敷地内に位置するため、ヴェルサイユ宮殿本体の見学と合わせて訪れることが多いです。公開・非公開のスケジュールがあるため、訪問前に公式サイトや現地案内で開館状況を確認してください。
- 保存のための制限:舞台装置や内装は繊細な保存対象のため、内部の立ち入りや写真撮影が制限される場合があります。ガイドツアーでのみ見学できることもありますので注意してください。
- 見どころ:小さな空間に凝縮された18世紀の舞台美術、王妃席から眺める舞台の構成、塗装による「大理石表現」や金箔装飾、そして残る舞台機構(滑車や背景画)などをじっくり観察すると良いでしょう。
- ガイドと解説:専門ガイドによる解説では、マリー・アントワネットの関わり方や当時の上演の様子、保存・修復の経緯についてより深く学べます。
2012年2月には、こうした歴史的な舞台装置や雰囲気が、ヴェルサイユ宮殿の関連公演や特別イベントで再現・活用されることがあり、現代の演出や音楽家によって当時の上演様式に光が当てられる機会もあります。訪問の際は事前に公開情報を確認し、可能であればガイド付きで観賞することをおすすめします。


マリー・アントワネット、1780-5
ギャラリー
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エントランス
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天井
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インテリア
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インテリア
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インテリア
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Le Roiとle fermierのためのコテージセット
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外装
質問と回答
Q:プチ・テアトル・ド・ラ・レーヌとは何ですか?
A: プチ・テアトル・ド・ラ・レーヌは、ヴェルサイユ宮殿のプチ・トリアノンの近くにある小劇場で、1780年にマリー・アントワネットの命により、彼女の家族や友人たちの公演用に建てられました。
Q:誰が設計・建設した劇場なのですか?
A: マリー・アントワネットのお気に入りの建築家、リシャール・ミクが、プチ・テアトル・ド・ラ・レーヌを設計・建設しました。
Q: 劇場はどのような目的で作られたのですか?
A: この劇場は、当時の貴族の別荘によく見られたように、王妃とその家族、友人による公演を目的としていました。
Q: 劇場の収容人数はどれくらいですか?
A: 劇場は100人しか座れません。
Q: 劇場内はどのような感じですか?
A: 劇場の内部は、金、青、白を基調とした大理石のような豪華な装飾が施されています。舞台装置も現存しています。
Q:この劇場で最初に上演された作品は何ですか?
A: この劇場で初めて上演されたのは、ピエール=アレクサンドル・モンシニー作の『王と農夫』(1762年)で、1780年にマリー・アントワネットとその友人によって演じられました。
Q: 劇場にはオリジナルのセットが残っているのでしょうか?
A: はい、この劇場で最初に上演されたときに使われたオリジナルの森のセットと素朴なコテージのセットが残っており、19世紀に修復されました。これらは、2012年2月にヴェルサイユ・オペラ座で上演された『ル・ロワ』でも使用されました。