レイノー症候群(レイノー病)とは:症状・原因・予防・治療
レイノー症候群(レイノー病)は、手指や足趾など末梢の細い血管が一時的に収縮(血管攣縮)して血流が悪くなる状態を指します。典型的には寒さやストレスで誘発され、指先が白(蒼白)→青紫(チアノーゼ)→赤(再灌流)と色が変化することが特徴です。女性に多く、若年成人で発症することが多い傾向があります。
症状
- 色の変化:指や足の指が白くなり、その後青紫色になり、回復時に赤くなる。
- 冷感・しびれ・痛み:冷たさやチクチク、しびれ、痛みを伴うことが多い。
- 回復時の灼熱感:温まるとジンジンした熱感や疼痛を感じる場合がある。
- 皮膚や爪の変化:長期間の重症例では皮膚潰瘍や爪の変形が起きることがある。
原因と種類
レイノー現象には大きく分けて二つあります。
- 原発性レイノー(レイノー病):特別な基礎疾患がない孤立性のもの。一般に比較的軽症で予後良好。
- 続発性レイノー(レイノー症候群):全身性硬化症(強皮症)や狼瘡(SLE)などの膠原病、血管閉塞、動脈硬化、ある種の薬剤や振動器具の使用に伴って起こるもの。続発性は重症化しやすく潰瘍や壊疽に至ることがあるため注意が必要です。
誘因(トリガー)
- 低温(冷たい風、冷水)
- 精神的ストレス
- 喫煙(ニコチンは血管収縮を促す)
- 一部の薬剤(β遮断薬、エルゴタミン、デコンゲスタントなど)
- 振動工具の長時間使用
診断
問診と症状の経過が重要です。医師は以下を行うことがあります。
- 発作の様子(色の変化・頻度・誘因)の確認
- 爪周囲毛細血管観察(ネイルフォールド毛細血管鏡検査)で毛細血管の異常を評価
- 血液検査(抗核抗体など)で続発性疾患の有無を検索
- 必要に応じて血流評価(ドップラー検査など)
治療
治療は重症度と原因によって異なります。基本は生活習慣の改善と誘因回避です。
- 生活指導:保温(手袋・靴下・暖房の使用)、冷水や冷風を避ける、喫煙中止、ストレス管理。
- 薬物療法:カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)が第一選択で、血管拡張により発作を軽減します。重症例では局所硝酸塩、PDE5阻害薬、プロスタグランジン製剤(静脈内投与)などが用いられることがあります。
- 局所療法:傷や潰瘍がある場合は創傷ケアと感染予防。
- 外科的治療:重度で薬物療法に抵抗する場合は交感神経切除(交感神経遮断術)などが検討されることがあるが慎重に判断されます。
- 続発性の場合:基礎疾患(膠原病など)の治療が重要です。
予防と日常生活での対策
- 寒さ対策:重ね着、保温性の高い手袋・靴下、カイロの活用。
- 急激な温度変化を避ける:冷水に手を入れない、屋内外での温度差に注意。
- 禁煙:ニコチンは血管を収縮させるため悪化因子。
- カフェインや一部の薬剤の影響に注意(新しい薬を始める際は医師に相談)。
- 指先マッサージや温める習慣で血行を促す。
受診の目安(医師に相談すべきとき)
- 指先に潰瘍や壊死(黒くなる)がある
- 発作が強く日常生活に支障がある
- 片側だけでなく両側で強く出現、または発症年齢が高い場合(続発性の可能性)
- 膠原病など他の症状(関節痛、発疹、倦怠感など)がある場合
合併症と予後
原発性レイノーは一般に軽症で生命予後は良好ですが、生活の質に影響を与えることがあります。続発性の場合は基礎疾患の種類や重症度によって、指先の潰瘍や組織壊死に進行するリスクがあり、早期発見と治療が重要です。
症状が気になる場合や、発作が頻繁・重度である場合は皮膚科・循環器科・リウマチ科などの医師に相談してください。適切な診断と治療で多くの場合は改善が期待できます。


女性の2本の指に起こるレイノー現象