英国王室の紋章とは:意味・構成・歴史・スコットランド版の違いを解説
英国王室の紋章は、英国の君主が公式に用いる国章的な紋章で、本文中にあるように現行デザインはエリザベス女王2世の在位時に広く用いられていました。公式には『女王(君主)の王権の紋章(The Royal Arms of the Sovereign)』と呼ばれ、王室個人の象徴であると同時に、国家の公的機関や政府の一部用途にも派生版が使われます。スコットランドでは、歴史的・象徴的理由から別の版が公式に使用されており、英国本国で用いられる版とはいくつかの相違点があります。
紋章の基本的な構成
紋章は複数の要素で構成され、主なパーツは次のとおりです。
- 盾(シールド):4分割されているのが一般的です。第1・第4四分円にはイングランドの「三頭のパサント・ガーディアント(歩く姿で正面を向く)ライオン」、第2にはスコットランドの「ランパント(立ち上がった)ライオン」とその周囲を囲む二重のフルーリー・トレッサー(=二重の花飾り縁取り)、第3にはアイルランドのハープが描かれます。
- クレスト(冠上飾り)とヘルメット(兜):盾の上に王冠とその上のライオン(王冠の上に立つライオン)が置かれることが多く、王権を象徴します。
- 支持獣(サポーター):盾の両側を支える動物。一般的な英国版では右側(向かって左)に獅子、左側(向かって右)にユニコーン(角のある馬)が置かれます。ユニコーンはスコットランドの象徴です。
- モットー(標語):盾の下にはフランス語の「Dieu et mon droit(神と私の権利)」が置かれ、盾を囲むガーター(紋章を囲むベルト)には「Honi soit qui mal y pense(悪意を抱く者に災いあれ)」が使われます。スコットランド版や関係版では異なるモットーが用いられる場合があります。
歴史的な変遷(概略)
王室の紋章は中世以来、王朝の変遷や領土の変化に応じて何度も修正されてきました。主なポイントは次のとおりです。
- 「三頭の獅子」はプランタジネット朝(中世)の時代から用いられてきた古い象徴です。
- 1603年の同君連合(ジェームズ6世/1世によるスコットランドとイングランドの同君統治)以降、両王国を反映する要素が紋章に組み込まれました。
- 1707年の合同(イングランドとスコットランドの合同王国)や1801年の大きな政治変動に伴い、四分割の構成や外周の飾りが調整されています。
- 王朝交代や制度的変更に応じて、細かな表現(王冠の形、モットーの配置、軍装飾など)が時代とともに変化してきました。
スコットランド版の違い
スコットランドで使われる王室紋章(しばしば「スコットランド用ロイヤルアームズ」と呼ばれる)は、英本土での標準版と比較していくつかの相違があります。代表的な違いは次の通りです。
- 盾の配置:スコットランド版では第1四分円にスコットランドのランパント・ライオンが置かれ、イングランドの三獅子は第2に移動するなど、四分円の優先順が入れ替わります。これはスコットランドにおける王権の優先を示すためです。
- 支持獣の位置や表現:支持獣(獅子とユニコーン)の扱いや向きが異なることがあり、スコットランドの公式用に合わせて微調整されます。
- モットーや外周飾り:スコットランド版では別のモットー(例:「In my defens God me defend」などの古い英語の表現が伝統的に併用されたり)や、ガーターの有無・配置が変わる場合があります。
- 使用場面:スコットランドの国務や行政(スコットランド庁など)では、現地版の紋章が公式に用いられます。
政府版・私的使用・見分け方
王室の紋章には用途によっていくつかの変種があります。
- 王室個人用(君主用):最も装飾的で、ヘルメットやクレスト、支持獣、モットーなどが完全に揃った形で示されます。
- 政府用(行政/庁の公式版):官庁が用いるバージョンでは、ヘルメットやクレストが省かれたり、装飾が簡略化されることが一般的です。公式章(government arms)は文書や公式サイト、建物の標章に適した簡潔なデザインになっています。
- 王室の他のメンバー:王族各自は家紋的な「差し絵(差し紋)」を加えた変種を用いることがあり、これによって個人を識別します。
見分け方としては、盾の第1象徴(どの王国の紋章が上位に来ているか)、支持獣(ユニコーンの有無・位置)、モットーの表示、クレストやガーターの有無をチェックすると、どの版かがおおむね判別できます。
現代における用途
現在、王室の紋章は以下のような場面で見られます。
- 政府発行の公式文書、法令、裁判所の紋章
- パスポート、硬貨、記念メダル
- 役所や大使館、州施設の看板やウェブサイト
- 王室関連の公式物品・式典での展示
用語メモ(簡単な解説)
- パサント(passant):四つ足動物が歩く姿で、前脚の一つを上げる姿勢。
- ランパント(rampant):後足で立ち上がり、前脚を上げた攻撃的な姿勢。
- トレッサー(tressure):盾の周囲にめぐらせる飾り縁。フルーリー(花形飾り)付きの二重線がよく使われます。
以上が英国王室の紋章の構成・意味・歴史的背景、及びスコットランド版との主な違いの概説です。紋章は長い歴史と細かな慣例に基づくため、細部(色彩、王冠の形、モットーの正確な文言など)は時代や用途によって異なります。専門的な図解や各時代の変遷を詳述する場合は、図版や年代ごとの比較表を併せて参照すると理解が深まります。
質問と回答
Q: イギリスの王室紋章とは何ですか?
A: イギリスの王室紋章は、イギリスの君主(現在の国王チャールズ3世)の公式紋章です。
Q: イギリスの王室紋章は誰が使っているのですか?
A: 国王は、イギリスの君主として公式な立場でイギリスの王室紋章を使用しており、正式には「ドミニオンの紋章」として知られています。他の王室メンバーや英国政府が国の運営や行政に関連して使用する場合は、異なるバージョンが使用されます。
Q: スコットランドで女王が使用している王家の紋章のバージョンは何が違うのでしょうか?
A: スコットランドでは、女王は別のバージョンの王家の紋章を持っており、その変形版がスコットランド事務局で使用されています。盾は4分割され、スコットランドの暴れん坊ライオンやダブルトレスフルーリー-カウンターフルーリーなど、さまざまな要素が描かれています。
Q: イギリスの王室紋章の盾に描かれている4分の1とは何ですか?
A: 盾は4分割されており、第1と第4にはイングランドの3頭のパッサント・ガードン・ライオン、第2にはスコットランドのランパント・ライオンとダブル・トレスル・フルリー・カウンター・フルリー、第3にはアイルランドのハープが描かれています。
Q: 政府が使用している王家の紋章には、何が欠けているのでしょうか?
A: 政府が使用している紋章には、ヘルメットとライオンがありません。
Q: スコットランドで政府が使用している王家の紋章には何が欠けていますか?
A: スコットランド政府が使用している紋章には、ライオンと "In Defens "のモットーがありません。
Q: 英国君主の王室紋章の正式名称は何ですか?
A: 英国君主の王室紋章は、正式には "Arms of Dominion "と呼ばれています。