サルベージとは|意味・種類・海難救助や引揚げの基礎知識
サルベージの意味・種類から海難救助や引揚げの基礎知識まで、図解でわかりやすく解説。事故対応や法律・手続きのポイントも押さえる入門ガイド。
サルベージとは「救助」を意味し、そのような意味で使われることがある。
サルベージの意味と範囲
サルベージ(salvage)は本来「救助・救援」を意味し、海難に遭った船舶や積荷、人命、さらに海域の環境を保護するための一連の作業を指します。一般には海上での救助・引揚げ・曳航・残骸除去などの活動をまとめて「サルベージ」と呼びますが、文脈によっては「人命救助」と限定して用いられることもあります。
主な種類
- 人命救助(Search and Rescue, SAR):遭難者の捜索・救出。最優先される活動で、国際的にはSAR条約に基づいて実施されます。
- 船舶救助(浮揚・安定化・曳航):沈没・座礁・浸水した船の浮揚、漏水の止水、安定化、出航可能にするための曳航など。
- 引揚げ(raise/salvage lift):海底や浅瀬にある沈没船や大型残骸を実際に持ち上げて陸上へ戻す作業。専門的機材や大規模な計画を要します。
- 貨物・積荷のサルベージ:沈没船からの積荷の回収や漂流貨物の回収。
- 環境保全を目的としたサルベージ:油濁や有害物質の流出を防ぐための応急措置や回収作業。近年、重要度が増しています。
- 残骸除去(wreck removal):航路保安や環境保護のために沈没船や残骸を除去する法的義務に基づく作業。
サルベージと「引揚げ」の違い
サルベージは救助全般を指す広い概念で、人命救助、曳航、応急修理、浮揚などを含みます。一方、引揚げ(引揚)は「沈没物を物理的に引き上げる行為」に重点を置く用語で、サルベージ作業の一部分あるいは派生作業として扱われます。
法律・報酬の仕組み
海上サルベージには民事法的な報酬体系があり、救助を実施した側(サルヴァー)は相応の報酬(サルベージ報酬)を請求できます。国際的な枠組みとしては1989年の国際サルベージ条約(Salvage Convention 1989)があり、環境保護のための救助に対する報酬制度の整備などが盛り込まれています。また商慣行としては、Lloyd's Open Form(LOF)のような定型契約が広く用いられます。
一般に「No cure, no pay(救助が成功しなければ報酬なし)」の原則が基本ですが、環境被害を防止するための作業に対しては特別報酬(特殊補償)が認められる場合があります。保険やP&Iクラブ(船主相互保険組合)も重要な役割を果たします。
作業方法と主な装備
- 浮揚用気袋(lift bags)や空気注入による浮力回復
- クレーン船・フローティングクレーンによる吊り上げ
- ポンプやデウォータリング(dewatering)での浸水排出
- パッチやプラグによる漏水箇所の一時補修
- 曳航装備や引き起こし装置(pulling gear)
- ROV(無人潜水機)や水中ドローン、深海作業船
- 潜水士(ダイバー)による水中作業、切断、溶接
手順と安全上の注意点
- 初動対応:遭難情報の収集、関係機関(海上保安庁、沿岸当局、P&Iクラブ等)への通報と連携が重要。
- 安全管理:作業員の人命・潜水士の減圧管理、作業に伴う火災・爆発・有害ガス対策。
- 現場指揮系統の確立:サルベージマスターや船長、管轄当局との指揮命令系統を明確にする。
- 環境対策:油回収や流出防止フェンスの設置など、環境被害の拡大を防ぐ措置を優先。
- リスク評価と計画:潮流・天候・海底地形・構造的損傷を評価した上で作業計画を作成。
関係条約・制度
- 国際サルベージ条約(Salvage Convention 1989)
- SAR条約(海上捜索救助に関する条約)
- MARPOL(海洋汚染防止に関する条約)関連規定
- ナイロビ条約(2007年の残骸除去に関する条約)など、残骸除去に関する国際法
- Lloyd's Open Form(LOF)等の商業的契約方式
実務上の注意点(保険・費用)
サルベージは費用が大きくなりがちで、事前の費用負担や報酬請求に関して船主・保険者・サルヴァー間で合意が必要です。P&Iクラブや船舶保険が関与することが多く、報酬請求は裁判や仲裁になることもあります。環境保護に資する作業については、条約に基づく特別補償が検討されます。
代表的な事例と学び
実際の大規模サルベージ事例は、専門船や多国籍チームによる長期作業を必要とします。難易度が高い事案では、天候や深度、構造的脆弱性により技術的挑戦と高いリスクが伴います。こうした事例から、迅速な初動、明確な指揮、環境対策、適切な契約と保険がサルベージ成功の鍵であることが示されています。
まとめ
サルベージは単なる「救助」という言葉以上に、海上での人命保護、船舶・貨物の回収、そして環境保全を含む総合的な活動です。法的・技術的・安全面の課題が多く、関係者間の連携と適切な計画が欠かせません。海難現場ではまず人命救助を優先し、その後に船舶や残骸の処理、環境対策が行われます。
ビジネスにおいて
- 廃棄物分別
- サルベージ・バリュー(Salvage value):所有者にとって使い物にならなくなった時の推測価値
文化において
- サルベージ(映画)2006年公開の米ホラー映画
- "サルベージ" オーソン・スコット・カードの短編小説
- メアリー・ロバーツ・リネハートによる1919年の小説「サルベージ
関連ページ
- レッキング
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