サーキットブレーカーの選択性(保護協調)とは:原理・時間-電流・Ipeak/I²T解説

サーキットブレーカーの選択性(保護協調)を実務視点で徹底解説。時間-電流特性やIpeak・I²Tの原理と設計ポイントを図解でわかりやすく紹介。

著者: Leandro Alegsa

選択性(弁別)の原理は、いくつかのサーキットブレーカの特性の分析に基づいています。これには、時間-電流(トリップ)曲線、ピークレットスルー電流(Ipeak)、エネルギーレットスルー(I²T)などがあります。

短絡状態での2つの直列に指名されたブレーカを使用した場合の最大選択レベルは、ベンダーが技術参考マニュアルに記載することが多い。

選択性は、適切に選択された上流側ブレーカによってバックアップされていれば、下流側ブレーカの遮断能力を超えて高めることができ、指定された短絡電流の下でトリップ(ラッチ解除)しないようにします。

選択性は、故障時に上流側のブレーカーが加熱され、故障回路にインピーダンスを与え、全体的な故障の深刻さを軽減するために働きます。

基本原理の補足

選択性(保護協調)とは、故障が発生したときにその故障区間に直列で存在する複数の保護機器のうち、できるだけ下流(故障点に近い)側の装置だけが動作して回路を遮断し、上流側の保護器は動作しないようにすることです。これにより、供給の遮断範囲を最小化し、系統の信頼性を高めます。

時間‑電流特性(トリップ曲線)

時間‑電流曲線は、ある電流値に対してブレーカが何秒後に動作するかを示す特性です。主に以下の要素で構成されます。

  • 瞬時(インスタント)トリップ:極短時間で遮断する部分。瞬時設定があるブレーカでは、この閾値より高い電流が流れると即時に遮断されます。
  • 短時間(短遅延)トリップ:短時間の遅延を持つ遮断。選択性を取る際には、下流側の短時間トリップで速やかに遮断させ、上流側は遅延するよう設定することが多いです。
  • 長時間(過負荷)トリップ:長時間で動作する過負荷保護の領域。通常、運転条件に応じて余裕を持たせて設定します。

選択性を確保する代表的な手法は時間差(タイムグレーディング)で、下流器のトリップを先に働かせ、その後一定時間内に上流が働かないように上流側の動作時間を長くまたはしきい値を高くすることです。実際の余裕(時間差)は系統規模や機器によって異なりますので、メーカー推奨や設計基準に従います。

Ipeak(ピークレットスルー電流)とI²T(エネルギー)の意味と役割

Ipeak(ピーク)は、遮断時に装置を通過する瞬間的な最大電流(山の値)で、特に電流制限器能(カレントリミッタ)や遮断動作に関わる機器で重要です。ダイレクトに機械的ストレスや絶縁への影響を与えます。選択性の観点では、下流の遮断動作で発生するIpeakが上流側の瞬時トリップ閾値を超えるかどうかで、上流が不意に動作するかが決まります。

I²Tはエネルギー指標で、電流の二乗に時間を掛け合わせた値(熱エネルギーに相当)です。導体や機械的・熱的部品に対するダメージ(過熱)を評価する際に使われます。選択性では、下流側が遮断する際のI²Tが上流側の許容トリップエネルギーを超えないことを確認する必要があります。言い換えれば、下流の遮断で放出される熱エネルギーが上流の保護器を作動させない限界であることが必要です。

選択性の分類(実務上の表現)

  • 完全選択性(フルセレクティビティ):ある短絡電流レンジまで、下流装置のみが確実に遮断し、上流は絶対に動作しないとメーカーが保証する状態。通常はメーカーの協調表(selectivity table)で確認します。
  • 部分選択性(セミセレクティビティ):ある範囲の短絡電流までは選択性が成立するが、より高い電流では上流も動作する可能性がある状態。
  • 非選択性:事実上選択性が取れていない、あるいは全短絡レンジで上流下流ともに同時に・不確定に動作する状態。

選択性の判定・設計手順(実務的フロー)

  • 対象となる回路の短絡解析(フォルトカレントの計算)を行い、各点の予想故障電流を求める。
  • 下流側ブレーカのトリップ特性(時間‑電流曲線)、Ipeak、I²Tなどのデータを入手する(メーカー資料が最も確実)。
  • 上流側ブレーカの瞬時しきい値、短時間時間遅延、長時間特性およびI²T耐量を確認。
  • 判定:
    • 瞬時(Ipeak)による判定:下流のIpeak < 上流の瞬時遮断閾値 → 上流は瞬時で動作しない。
    • I²T(エネルギー)による判定:下流のレッ トスルー I²T(故障時) < 上流が許容する作動エネルギー(またはトリップ判定に必要なI²T)→ 上流は熱的に作動しない。
    • 時間特性による判定:下流の動作時間 + 安全マージン < 上流の動作時間 → 時刻的に選択性が保たれる。
  • 必要に応じて上流側の短時間遅延を引き延ばす、瞬時しきい値を上げる、あるいは下流を制限器能のある装置に変更する(例:遮断能の高い遮断器や制限機能付ブレーカ)などの調整を行う。
  • 最終的にメーカーの選択性チャートや専門ソフト(例:ETAP、SKM 等)の協調解析で検証する。

実務上の注意点・留意点

  • メーカー資料を必ず参照する:同種でもシリーズや定格によってIpeak/I²T特性が大きく異なるため、実装機器のデータで判断すること。
  • 遮断器が電流制限特性を持つ場合、Ipeakが大幅に低減されるため選択性が取りやすくなるが、逆に制限しない機器との組合せでは上流機器が動作しやすくなる。
  • 時間差の設定は、遮断の遅延が系統の安全や重要設備の停止時間に与える影響を考慮して決める。単に選択性を追求して過度に遅延させるのは避ける。
  • 配線や接続部の熱耐量(I²T)も考慮する:下流ブレーカが遮断するまでのエネルギーが導体や負荷に与える影響を評価する。
  • 現地試験・保守:設計上選択性を取れていても、設定変更や経年変化で成立しなくなることがあるため、定期的な確認・試験が必要。

まとめ(実務チェックリスト)

  • フォルトカレントを計算したか?
  • 下流・上流それぞれの時間‑電流曲線、Ipeak、I²Tデータを入手したか?
  • Ipeak と I²T の両面で上流が下流のレッ トスルーを超えないことを確認したか?
  • 時間グレーディング(マージン)を確保しているか?(メーカー推奨・規格に従う)
  • 最終的にメーカーの選択性表や専用ソフトで検証したか?

最終的には、理論的な判定(Ipeak、I²T、時間特性の比較)とメーカー/規格に基づく実証(選択性表、協調試験)の両方で確認することが安全かつ確実です。設計変更や負荷追加の際には、再評価を行ってください。

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