漿膜(しょうまく)とは:心膜・胸膜・腹膜の構造と機能をやさしく解説

漿膜とは何かを心膜・胸膜・腹膜ごとにわかりやすく解説。構造・潤滑作用・臨床の要点까지図解でやさしく理解

著者: Leandro Alegsa

漿膜しょうまく)とは、腹腔内などの体腔に存在する臓器の外表を覆う、薄く滑らかな膜です。表面は単層扁平上皮(メソセリウム=間皮細胞)でできており、その下に薄い結合組織層があって、少量の漿液(潤滑液)を分泌します。漿液は臓器どうし、臓器と壁との摩擦を軽減し、運動や呼吸時の摩擦を抑える役割があります。

構造(組織学)

漿膜は大きく次の層から成ります。

  • 間皮細胞層(メソテリウム):単層扁平上皮で、漿液の分泌や選択的な物質移動に関与します。
  • 基底膜・下層結合組織:コラーゲンや弾性線維、血管・リンパ管・神経を含み、支持と栄養供給を行います。

結合組織にはリンパ孔(stomata)を介して腹腔や胸腔の液体を吸収する経路があり、炎症時の液体の排除に重要です。

主な種類とそれぞれの特徴

  • 心膜(pericardium):心臓を包む漿膜。心臓の運動にともなう摩擦を減らし、心膜腔という微量の漿液を含みます。心膜炎や心嚢液貯留(心膜腔液)が起こると胸痛や心膜摩擦音、重篤な場合は心タンポナーデを引き起こします。
  • 胸膜(pleura):胸腔内壁および肺表面を覆う漿膜。胸膜腔の漿液が呼吸運動を円滑にします。胸膜炎(胸膜炎症)や胸水(胸腔内に液体が貯留)などが臨床的に重要です。
  • 腹膜(peritoneum):腹腔の内面と多くの腹腔内臓器(胃、小腸など)を覆う漿膜。臓器の支持、血管・神経の通り道、免疫応答や液体交換(腹水の形成・吸収)など多様な機能を持ちます。大網(おうもう)は腹膜の肥厚で、腹腔内の炎症部位を覆って隔離する働きがあります。

漿膜と副膜(adventitia)の違い

漿膜は滑らかな膜で、臓器が自由に動けるようにするのが主目的です。一方、臓器を周囲に固定する結合組織層は一般に副膜(adventitia)または被膜と呼ばれ、漿膜とは構造も機能も異なります。例えば食道や大部分の呼吸器、後腹膜臓器(腎臓、膵臓、十二指腸の一部、上行・下行結腸など)は表面が漿膜でなく結合組織性の副膜を持ち、周囲に付着しています。

消化管で漿膜を持たない部位

消化管では、臓器の位置関係によって漿膜の有無が異なります。一般に

  • 食道は胸腔内で主に副膜(結合組織)に覆われ、明確な漿膜はありません。
  • 直腸は部位によって異なり、上部は腹膜に覆われるが、中部・下部は腹膜がない部分が多く、特に下部(遠位部)は漿膜に覆われていません。
  • 後腹膜臓器(腎臓、膵臓、上行・下行結腸など)は漿膜を持たないことが多いです。

主な機能

  • 摩擦低減:漿液の分泌により臓器の運動を滑らかにする。
  • 保護・支持:臓器表面の保護と位置保持、血管・神経の通り道を提供する。
  • 液体・免疫の調節:炎症時の細胞移動や漿液の吸収・排除、腹腔内の感染防御(大網が炎症を封じ込める等)。
  • 診断・治療上の利用:腹膜を透析膜として用いる腹膜透析や、体腔への穿刺(胸腔穿刺・腹腔穿刺・心嚢穿刺)で液体を抜去・検査することができる。

臨床で問題となる状態

  • 漿膜の炎症:腹膜炎、胸膜炎、心膜炎。疼痛や発熱、運動時の痛みが生じる。
  • 漿液貯留(胸水・腹水・心嚢液):感染、心不全、肝硬変、悪性腫瘍などが原因で生じ、圧迫症状や呼吸困難を起こす。
  • 癒着:手術や炎症で漿膜が障害されると、臓器同士が線維性に癒着して腸閉塞などの合併症を招くことがある。

まとめ

漿膜は臓器の表面を覆う薄い膜で、滑らかな動きを助け、液体・免疫の調節にも関わる重要な組織です。心膜・胸膜・腹膜が代表例で、損傷や炎症は臨床的に重大な問題を引き起こします。漿膜と副膜(結合組織による被覆)の違いを理解することは、解剖学的・臨床的理解に役立ちます。

質問と回答

Q: 漿膜とは何ですか?


A: 漿膜とは、漿膜腔と呼ばれる腹腔内の臓器の外壁にある、薄い細胞層と薄い結合組織層からなる平滑な膜のことです。

Q: 漿膜は何を分泌するのですか?


A: 漿膜は漿液を分泌し、筋肉の動きによる摩擦を軽減します。

Q: 漿膜と外膜の違いは何ですか?


A: 漿膜は構造物間の摩擦を軽減し、外膜は構造物同士を結合します。

Q : 心膜とは何ですか?


A: 心膜は心臓を覆い、縦隔を覆っている漿膜です。

Q: 胸膜とは何ですか?


A : 胸膜とは、胸腔を覆い、肺を包んでいる漿膜です。

Q: 腹膜とは何ですか?


A:腹膜は腹腔と内臓を覆っている漿膜です。

Q: 消化管のどの部分に漿膜がないのですか?


A: 食道、中・遠位直腸には漿膜がありません。


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