サイリスタ(シリコン制御整流器・SCR)とは|構造・動作原理と主な用途

サイリスタ(SCR)の構造・動作原理と主要用途を図解でわかりやすく解説。高電力整流、モータ制御、溶接機など実用例と選び方まで。

著者: Leandro Alegsa

シリコン制御整流器(SCR)はサイリスタの代表的な一種で、4層(PNPN)構造を持つ固体の電流制御デバイスです。端子は通常、アノード(A)カソード(K)ゲート(G)の3つで構成され、ゲート電流によってオン(導通)を開始できる一方向性の素子です。高電圧・大電流の整流や電力制御に広く使われます。

構造

SCRは内部にPNPNの4層半導体領域を持ち、外形的にはディスク型やモジュール、シャーシマウントなどさまざまなパッケージがあります。等価モデルとしては、PNPトランジスタとNPNトランジスタが相互にフィードバックする回路で表され、ある条件で再生性(正帰還)を示して一気に導通状態になります。

動作原理(概略)

SCRの基本的な動作モードは次の3つです。

  • 順方向ブロッキング(オフ): アノードがカソードより正であってもゲートにトリガが入らない限り、順方向の電流はほとんど流れません(ただし逆方向と同様に耐圧限界があります)。
  • 順方向導通(オン): ゲートに一定以上の電流(I_GT)を流すか、順方向ブレークオーバ電圧に達すると素子は導通し、低いオン抵抗で大電流を流します。導通後は内部の再生作用により自己保持され、外部の回路電流が所定の保持電流(I_H)以下に下がるまでオン状態が続きます。
  • 逆方向ブロッキング: カソードがアノードより正のときは逆方向に電流を流さず、逆耐圧(V_RRM)まで耐えます。

要点として、SCRは一度オンになるとゲートでオフにできない(自己消弧しない)ため、直流回路でのオフには強制的に電流を遮断する回路(強制復帰・強制消弧)が必要です。交流回路では商用周波数の零交差で自然にオフになります(零位相で電流がゼロになるため)。

重要な特性値

  • V_DRM / V_RRM: 順方向・逆方向の最大ブロッキング電圧
  • I_T (平均整流電流): 継続して流せる電流(ヒートシンク等の冷却条件による)
  • I_GT / V_GT: ゲートトリガに必要な電流・電圧
  • 保持電流 I_H / ラッチ電流 I_L: オン保持やラッチするために必要な電流
  • dv/dt, di/dt: 電圧・電流の立ち上がりに対する耐性。高いdv/dtで誤動作(誤トリガ)を起こす場合がある

駆動と保護

  • ゲートにはトリガパルスを与えるためのドライバ回路が必要です。ゲート抵抗やシャント、プルダウンなどで誤動作防止や感度調整を行います。
  • 高速な電圧変化(高dv/dt)による誤トリガを防ぐために、RCスナバ回路やダンピング回路、サージ吸収用のサージアレスタ(バリスタ)を併用します。
  • 高電力用途では放熱が重要で、ヒートシンクや冷却システムでの温度管理が必要です。
  • 複数素子の並列・直列接続では電流・電圧の均等化のためにバランス抵抗や専用回路が必要になります。

主な用途

SCRは大電力を扱える特性から、次のような用途で広く用いられてきました。

  • 直流整流器(産業用整流)や高電圧直流送電(HVDC)の整流器
  • 溶接機(溶接)やヒーター制御、電力ヒータの電力制御
  • 電動機の速度制御・トルク制御、パワーコンバータ
  • ランプの調光、位相制御を用いたパワーレギュレータ
  • バッテリーチャージャー、産業用電源の保護回路(クラウバー、シャットダウン)
  • サージ制御や大型スイッチング回路(特に中〜高圧・大電流領域)

一般家庭用の低電力分野では、TRIACやトライアック系素子、あるいはIGBTやMOSFETに置き換えられることも多くなっていますが、数百〜数千ボルト、数百〜数千アンペアの領域では依然としてSCRが有利です。

派生・関連素子

  • GTO(ゲートターンオフサイリスタ): ゲートでオフ操作が可能なサイリスタ。高電力用途で使われるが駆動が複雑。
  • IGCT, MCTなど: 高速性やゲート制御性を改善したタイプ。現代ではIGBTやパワーMOSFET、IGBTモジュールとの競合が進んでいます。
  • TRIAC: 双方向の位相制御に使える素子で、交流ランプの調光などに用いられます(SCRは一方向のみ)。

選定上の注意点と安全

  • 用途に応じた耐圧・定格電流(およびサージ対応)を確認すること。
  • 放熱対策、過電流保護、誤トリガ防止(ゲート保護・スナバ回路)を設計に組み込むこと。
  • 直流回路でのOFF操作が必要な場合は強制消弧回路や別素子との併用を検討すること。
  • 高電圧・大電流を扱うため、安全規格・絶縁距離・接地などの対策を厳守すること。

まとめると、SCR(シリコン制御整流器)は大電力・高電圧の制御に強く、整流や位相制御、産業用電力制御で長く使われてきた信頼性の高い素子です。一方で、オン後はゲートでオフできない点や高速スイッチングでの制約があり、用途によってはIGBTやMOSFETなど別のパワーデバイスと使い分けられます。

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