ストレンジクォーク(奇妙なクォーク)とは:基礎解説と性質・崩壊のメカニズム
ストレンジクォークの基礎から性質、奇妙な崩壊メカニズムまで図解でわかりやすく解説。カオンやハイペロンの観測史も網羅。
ストレンジクォークとは、3番目に軽いクォークの1種で、非常に小さく分割できないと考えられている素粒子です。電荷は他のダウンクォークと同様に-1/3eで、フェルミオンとしての性質を持ち、スピンは1/2です(ダウンクォークと同じスピンと電荷を持つ点は共通です)。質量はダウンクォークよりかなり大きく、おおよそ数十倍(標準的な評価では数十MeV〜100MeV程度)とされています。古典的な表現では「ストレンジネス(奇妙さ)」という量子数を持つことが特徴です。
ストレンジネス(奇妙さ)とは何か
ストレンジネスは量子数で、強い相互作用や電磁相互作用のもとでは保存されます。すなわち、偶発的に生成されたストレンジクォークを含むハドロンは、強い力や電磁気によってそのストレンジネスを変える崩壊はできないため、これらの相互作用による速い崩壊経路を取れません。結果として、ストレンジネスを持つ粒子は強い崩壊が抑えられ、より遅い弱い相互作用による崩壊を経ることが多くなります。これが「奇妙(strange)」と名付けられた由来です(名前の歴史的背景は後述します)。
ハドロン内での役割 — カオンやハイペロン
ストレンジクォークは単独では自由に存在せず、常にハドロン(複合粒子)の内部に閉じ込められます。代表的な含有例は、カオン(K粒子)やハイペロンのような粒子です。例えば:
- カオン(K+ = u s̄、K0 = d s̄ など)— ストレンジ(または反ストレンジ)を含むメソン
- Λ(ラムダ)、Σ(シグマ)などのハイペロン — バリオンで、内部に1個以上のストレンジクォークを含む
強い相互作用下ではストレンジネスは保存されるため、衝突でストレンジ粒子が生成されるときは必ずストレンジと反ストレンジが対で生成されます(s と s̄ の対生成)。
崩壊のメカニズム
ストレンジクォークを含む粒子の崩壊は、多くの場合弱い相互作用を介して起きます。弱い崩壊ではクォークのフレーバーが変わることが可能で、典型的にはストレンジクォーク s がアップクォーク u に変わる過程(s → u + W−、その後 W− がレプトン対や他のハドロンに変わる)を通じて起こります。これにより、カオンやハイペロンは比較的長寿命(強崩壊に比べて)になります。具体例:
- K+ → μ+ νμ(代表的な半レプトン崩壊) — K+ の平均寿命は約1.2×10−8秒
- K0_S → π+ π−(速い成分) — K0_S の寿命は約0.9×10−10秒、K0_L(長寿命成分)は約5×10−8秒
- Λ → p π−(ハイペロンの代表崩壊) — Λ の寿命は約2.6×10−10秒
これらの寿命は強い崩壊が支配する場合に比べて長く、実験的には飛跡や崩壊点のずれとして観測できるため、発見当初から「奇妙な」挙動として注目されました。
量子数と符号
ストレンジネスの定義は通例次の通りです:ストレンジクォーク s は S = −1、反ストレンジ s̄ は S = +1。したがって、ハドロン全体のストレンジネスは内部に含まれる s と s̄ の数の差で決まります。
生成と観測
ストレンジクォークは高エネルギーの衝突や宇宙線相互作用で簡単に生成されます。実験装置では、生成されたストレンジ含有ハドロンの飛跡、崩壊点(頂点)や崩壊生成物のエネルギー・運動量を解析することで間接的に検出されます。ストレンジネス保存則により、生成反応では必ず対応する反粒子も生成されるため、これを利用した同時検出が行われます。
歴史的背景と理論的位置づけ
1940〜50年代の宇宙線実験で、生成は容易だが崩壊が遅い粒子が発見され、「奇妙(strange)」と呼ばれるようになりました。Murray Gell-Mann や Kazuhiko Nishijima らはこれを説明するためにストレンジネスという量子数を導入し、後にクォーク模型の発展によりストレンジクォーク(s)が理論的に位置づけられました。弱い崩壊の選択則や崩壊率の違いは、カビボ混合(後のCKM行列)などの枠組みで定量的に説明されます。
まとめ(ポイント)
- ストレンジクォークは電荷 −1/3、スピン 1/2 のフェルミオンで、ダウンクォークより重いクォークの一つ。
- ストレンジネスは強い相互作用と電磁相互作用で保存される量子数であるため、ストレンジ粒子は主に弱い相互作用で崩壊する。
- カオンやハイペロンなど、ストレンジクォークを含むハドロンは実験的に重要で、寿命や崩壊様式の違いが素粒子物理の基本的理解に寄与している。
- 自由なクォークは観測されず、常にハドロンとして間接的に検出される(クォークの閉じ込め)。

3つの奇妙なクォークが一緒になってオメガバリオンと呼ばれる粒子を形成する
質問と回答
Q: ストレンジクォークとは何ですか?
A: ストレンジクォークとは、基本粒子と考えられているほど小さい素粒子です。3番目に軽いクォークで、電荷は-1/3、スピンは1/2です。
Q: ストレンジクォークはダウンクォークとどう違うのですか?
A: ストレンジクォークはダウンクォークの25倍の質量を持ち、また "ストレンジネス "と呼ばれる性質を持っています。
Q: 奇妙さとは何ですか?
A: ストレンジネスとは、ストレンジクォークが持つ、強い力や電磁気に対する崩壊抵抗のことです。つまり、ストレンジクォークを含む粒子は、強い力や電磁気力では崩壊せず、より遅い弱い力で崩壊するということです。
Q: どのような粒子にストレンジクォークが含まれているのですか。
A: カオンやハイペロンなどの粒子に見られます。
Q: 科学者が奇妙さに気付き始めたのはいつですか?
A: 科学者が奇妙さに気付き始めたのは、奇妙なクォークを含む粒子が、その質量から想像されるほど早く崩壊しないことを観測したときです。
Q: なぜ科学者たちはこの粒子に "奇妙 "という名前をつけたのですか?
A: 科学者がこれらの粒子に「奇妙」という名前を付けたのは、奇妙さによる崩壊の遅さが奇妙な現象であると考えられたからです。
Q: カオンの発見後、科学者がストレンジネスを予測するまでにどれくらいの時間がかかりましたか?
A: カオンの発見後、科学者が奇妙さを予測するのに16年以上かかりました。
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