サットン・フー:サフォークで発掘された6〜7世紀アングロサクソンの船葬遺跡
サットン・フー発掘:サフォークで見つかった6〜7世紀アングロサクソンの豪華な船葬と出土品、大英博物館所蔵の稀有な遺物を詳説。
サットン・フーは、イギリス・サフォーク州ウッドブリッジ近郊にある、紀元6世紀から7世紀初頭のアングロサクソン時代の2つの墓地遺跡である。合計で18基前後とされる塚群のうち、特に有名なのが1939年に発見・発掘された「船葬」を伴う塚である。その船葬は手つかずの状態で埋葬されており、美術史的・考古学的に極めて重要なアングロ・サクソンの遺物を豊富に含んでいる。出土品の大半は大英帝国期以降にロンドンの大英博物館に収蔵・展示されており、イングランドのみならずヨーロッパ初期中世研究における基礎資料となっている。他の塚からも重要な発見がある一方で、19世紀以前に略奪されて遺物が失われていた塚も存在した。
発見と発掘経緯
船葬を含む主要な発掘は1939年に始まり、地元の土地所有者と考古学者の関与のもとで行われた。発掘は当初は民間の仕事として始まり、その後第二次世界大戦の影響で一時中断・再編成されながらも、重要な遺物が発見された。船の木材そのものは腐食で失われていたが、土壌中に残されたリベット(鋲)の痕跡や舷側の痕跡から船型の痕跡が明らかになり、全長はおよそ約27メートル程度と推定される復元模型が知られている。
出土品と考古学的意義
出土した遺物は多岐にわたり、武具(剣、盾、ヘルメット)、豪華な装身具(肩章、宝飾品、金銀の器物)、布地や植物性遺物の痕跡、貨幣類などが含まれる。特に有名なのは装飾が施された鉄製ヘルメットや、金とガーネットを用いたクロワゾネ(象眼)技法の装飾品、精緻な銀器類、さらに異国的な金貨などである。これらの遺物は、当時の工芸技術の高さ、大陸およびビザンツやスカンディナヴィア方面との交流・影響、東アングリア王権の富と国際性を示す証拠とされる。
学術的には、サットン・フーの船葬はイングランドにおける権力者の葬送慣習や、6〜7世紀という転換期における宗教(異教からキリスト教への移行)・政治・国際関係の理解に重要な光を当てた。埋葬が王格の人物、例えば東アングリア王ライドウォルド(Rædwald)に関連する可能性が指摘されており、これは王権と儀礼の結びつきを考える上での手がかりを与える。
保存・公開と現代への影響
発掘された遺物は大英博物館で重要な展示コレクションとなっており、一部は地方博物館や巡回展でも公開されることがある。出土品の保存と修復作業は専門家によって継続的に行われ、金属の腐食除去や装飾の復元、出土状況の記録保存が進められている。サットン・フーはイギリスの国民的遺産としても高く評価されており、考古学教育・観光資源としての側面も大きい。
まとめ
1939年に発掘されたこの船葬は、その規模と保存状態、出土品の質と美しさ、そして埋葬儀礼が伝える歴史的・文化的意味から、イングランドで最も重要で壮観な考古学的発見の一つに数えられる。サットン・フーは当時の王権、交易、技術、芸術様式の複合した証拠を提供し、初期中世イングランドを理解するための鍵となっている。

復元された儀式用ヘルメットは、サットン・フーを代表する出土品の一つです。

1939年の発掘調査で、埋没船の幽霊のような形跡が発見された。その後、石膏が採取され、グラスファイバーで作られるようになった。

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