サイード・ワリウラ:バングラデシュの小説家・劇作家|代表作『ラルサルー(根のない木)』と受賞歴
サイード・ワリウラ—バングラデシュを代表する小説家・劇作家。処女作『ラルサルー(根のない木)』やバングラ・アカデミー賞、Ekushey Padakなどの受賞歴を詳述。
Syed Waliullah(ベンガル語: সৈয়দ ওয়ালি উল্লাহ)は、バングラデシュ出身の小説家、短編作家、劇作家で、20世紀のベンガル文学を代表する一人です。写実と象徴を織り交ぜた独特の文体で、農村社会の迷信や人間心理を鋭く描き出した作品群で知られます。代表作にして広く読まれている長編小説は、『ラルサルー』(原題: Lalsalu)です。
経歴と創作活動
故郷と移動生活の中で育まれた観察眼を生かし、短編・長編・戯曲の分野で活躍しました。作品は宗教的迷信、社会的抑圧、個人の孤立といったテーマを繰り返し扱い、登場人物の内面に深く入り込む心理描写と象徴的なモチーフが特徴です。詩的で抑制の効いた語り口によって、ベンガル語文学に新しい風を吹き込みました。
代表作『ラルサルー』について
『ラルサルー』は、宗教的権威や村の慣習が個人と共同体に及ぼす影響を描いた作品で、中心にあるのは信仰と虚飾の問題です。作中では、赤い布(= lalsalu)や祠といった象徴を通して、権威の構築とその脆さ、そして人々の無知や恐れが社会をどう形作るかが問われます。この小説は英語に訳され、"The Rootless Tree"(「根のない木」)といったタイトルで紹介されています。物語の社会批評的な視座と文学的完成度の高さから、南アジアの古典的作品の一つと見なされています。
作風と影響
ワリウラの作風は、象徴主義的な要素と写実的描写が融合している点が特徴です。物語の舞台となる田園風景は単なる背景にとどまらず、登場人物の精神状態や社会的状況を映し出す鏡として機能します。また、彼の作品は後続のベンガル語作家たちに広く影響を与え、バングラデシュ近代文学の形成に寄与しました。
受賞と評価
- 1961年に小説に対する貢献が認められ、バングラ・アカデミー文学賞を受賞しました。
- 1984年には没後にバングラデシュ政府からEkushey Padakを授与され、国の文化的貢献が顕彰されました。
- また、彼の代表作は映画化もされ、その功績により2001年にバングラデシュ国民映画賞(最優秀ストーリー部門)が死後に授与されています。
主要な著作と遺産
長編のほか、多数の短編・戯曲を残しており、いくつかは他言語に翻訳されて読まれています。社会の不条理や個人の孤独を描き続けた彼の作品は、今日なお学術的・文学的な関心を集めており、演劇や映像作品への翻案も行われています。ワリウラの文学は、地域的な題材を越えて普遍的な人間理解を促すものとして評価されています。
幼少期
1922年8月15日、チッタゴン郡ショーラシャハーで生まれる。父親の名前はSyed Ahmadullahである。彼は公務員であった。幼少期をミメンシン、フェニ、クリシュナガル、クリグラム地区で過ごす。1939年にクリグラム高校を卒業し、1941年にダッカ・カレッジでIAを取得した。1943年、アナンダ・モハン・カレッジを卒業。その後、カルカッタ大学に入学したが、大学院は修了していない。
作品紹介
小説
- ラルサル(根のない木)、1948年
- チャンダー・アマボセイ(暗黒の月)1964年
- カンド・ナディ・カンド(泣けよ、この川)』1968年
- 醜いアジア人』(1959年
ドラマ
- バヒピル(1960年)
- タランガバンガ(1964年)
- スダンガ(1964年)
短編集
- ナヤンチャラ(1951年)
- Dui Tir O Anyanya Galpa(ドゥイ ティル オ アニャーニャ ガルパ
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