同期とは?コンピュータサイエンスでのプロセス同期とデータ同期を解説
コンピュータサイエンスでの同期を図解でわかりやすく解説。プロセス同期とデータ同期の違い・実装例・課題を初心者向けに整理した入門ガイド
コンピュータサイエンスにおいて、同期とは、プロセスの同期とデータの同期という、異なるが関連する2つの概念のうちの1つを指す。
- プロセスの同期とは、複数のプロセスがある時点でリンクまたはハンドシェイクし、合意に達するか、ある一連の動作を約束することである。
- データ同期とは、データセットの複数のコピーを互いにコヒーレンス(不変性)に保つこと、またはデータの完全性を維持することを指す。
データ同期を実現するために、プロセス同期がよく使われます。
プロセス同期(目的と代表的手法)
プロセス同期は、同時に動作する複数のスレッドやプロセスが共有資源を安全に扱えるようにする仕組みです。主な目的は競合状態(race condition)の回避と、操作順序の制御です。
- 代表的なプリミティブ: ミューテックス(mutex)、セマフォ(semaphore)、モニタ(monitor)、条件変数(condition variable)、バリア(barrier)、ロックフリーのアトミック操作(atomic operations)など。
- 同期モデル: 共有メモリによるロック方式(排他制御)と、メッセージパッシング(チャネルやキュー)方式。言語やランタイムによって提供される機能が異なります(例: pthreads、Javaのsynchronized、Goのチャネルなど)。
- 分散システムでの同期: ネットワーク越しに動作するプロセス間では、時刻同期(NTPなど)や合意(consensus、例: Paxos・Raft)、二相コミット(2PC)などが必要になる場合があります。
プロセス同期で注意すべき問題
- デッドロック: 複数のプロセスが互いに資源を待ち続ける状態。資源取得順序の統一やタイムアウト、デッドロック検出アルゴリズムで対策。
- ライブロック・スタベーション(飢餓): 処理が進まないが実行は行われている、あるいは特定のスレッドがずっと実行機会を得られない問題。
- 優先度の反転: 低優先度タスクがリソースを保持することで高優先度タスクが阻害される。優先度継承などで対策。
- メモリモデルと可視性: CPUやコンパイラの最適化のせいで共有メモリの更新が他スレッドにすぐ見えないことがある。メモリフェンスやvolatile/atomicが必要。
データ同期(レプリケーションと整合性)
データ同期は、複数の場所に存在するデータの整合性を保つことを指します。分散データベースやファイルレプリカ、キャッシュとオリジナル間の整合性など、用途は多岐にわたります。
- 同期方式: 同期レプリケーション(書き込みを全レプリカに反映してから応答)と非同期レプリケーション(先に応答し、後でレプリケーション)。
- 整合性モデル: 強い整合性(strong consistency)、線形化可能性(linearizability)、順序整合性、最終的整合性(eventual consistency)など。用途に応じてトレードオフを選ぶ。
- トランザクションと保証: ACID(原子性、一貫性、隔離性、耐久性)を提供する方式と、可用性やスケーラビリティを優先するBASE的アプローチ。分散トランザクションや2PCのコストと障害耐性を考慮する必要があります。
- コンフリクト解決: タイムスタンプ/ベクタークロック、最終書込み勝者(LWW)、オペレーションの順序化、CRDT(Conflict-free Replicated Data Type)など。
- 同期手法: フル同期(全データコピー)、差分同期(delta sync)、イベント駆動による変更伝播(CDC: Change Data Capture)、定期的なスナップショットやチェックポイント。
分散システムに特有の概念
- CAP定理: 一貫性(Consistency)、可用性(Availability)、分断耐性(Partition tolerance)のうち、ネットワーク分断が起きる環境では同時に3つを満たすことは困難。システム設計でどれを優先するかの判断が必要。
- 合意アルゴリズム: Paxos、Raft などは、分散ノード間で状態やログの一致を取るために使われます。これらはデータ同期の基礎を作る重要技術です。
- 運用上の考慮: レイテンシ、帯域、フェイルオーバー、監視、バックアップ、ロールバック戦略などを含めて設計することが重要です。
実践的なベストプラクティス
- 共有可変状態を最小化・不変データ(immutable)を活用する。副作用を減らすと同期コストも下がる。
- 小さいクリティカルセクションに限定し、ロック競合を避ける。必要なら読み取り優先・書き込み優先の戦略を使い分ける。
- 分散環境ではアイドポテンシー(冪等性)を設計し、再試行(retry)を安全に行えるようにする。
- 監視とメトリクスを整備し、遅延や不整合を検出したら自動で復旧・アラートできる仕組みを持つ。
- 用途に合わせた整合性モデルを選ぶ(例: 金融トランザクションは強い整合性、ログ集計は最終的整合性で十分)。
まとめ(チェックリスト)
- まず「何を同期したいのか(プロセスの順序か、データの整合性か)」を明確にする。
- 競合やデッドロックなどのリスクを設計段階で評価する。
- 性能(レイテンシ・スループット)と一貫性(整合性)とのトレードオフを理解して選択する。
- 既存の信頼できるライブラリやアルゴリズム(mutex/sem、Raft、CRDTなど)の利用を検討する。
プロセス同期とデータ同期は密接に関連しますが、目的・スコープ・障害モデルが異なる点に注意してください。設計時にその違いを踏まえることで、より堅牢でスケーラブルなシステムを構築できます。
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