タキオンとは?光速超過の仮想粒子 — 定義・歴史・物理学的意義
タキオンとは何か?光速超過の仮想粒子の定義から歴史、実験論争と現代物理学における意義までを分かりやすく解説。
タキオンとは、光速よりも速く移動するとされる仮想的な粒子(もしくは場)のことを指す用語である。通常の素粒子とは異なり、タキオンは「常に光速より速い速度を持つ」と想定されるため、直感的には特殊相対性理論の枠組みと矛盾するように見える。「タキオン」という言葉は1967年にGerald Feinbergによって広められた。
定義と数学的性質
タキオンを議論する際に重要なのは「質量」がどのように扱われるかである。通常の粒子(正則質量を持つ粒子)は運動方程式において質量二乗 m^2 が正であり、光子のような質量ゼロ粒子は m^2 = 0 である。タキオンは形式的には m^2 < 0、すなわち質量が虚数(または負の質量二乗)として表される場の励起として記述されることが多い。元の古典的な解釈では「速度 v が c より大きい粒子」を指したが、量子場の言葉では「不安定(励起が指数的に増大する)ことを示す負の質量二乗をもつ場」を意味する場合が多い。
歴史的経緯
- 1960–70年代にかけて、特殊相対性理論の枠内での超光速運動について理論的探求が行われ、Feinberg らの仕事で「タキオン」の語が定着した。
- 2011年9月、実験的な話題としては、CERNはのOPERA実験が一時的に「ニュートリノが光速を超えた」との結果を報告し話題になった(報道でしばしばタウニュートリノなどと混同して伝えられた例もあった)。しかしその後の詳しい調査で、観測された超光速は「実験装置の光ファイバー配線や機器のタイミングの不具合」による測定誤差であることが判明し、超光速ニュートリノの主張は撤回された。
物理学における意味と応用
現代の場の理論では「タキオン的振る舞い」は必ずしも「実際に超光速で飛ぶ粒子」の存在を意味しない。むしろ、負の質量二乗(m^2 < 0)をもつ場は系の不安定性を示し、安定な真空(基底状態)へ向かう過程を表すことが多い。代表的な例として:
- ヒッグス場:ヒッグス機構の扱いでは、対称性の破れを伴うポテンシャルの頂点近傍で形式的に「タキオン的」な(負の質量二乗をもつ)項が現れる。これは不安定性を意味し、場が揺らいで対称性を破ることで実際には正の実質的質量を持つ粒子になる。
- 弦理論:ボソニック弦理などでは基底状態にタキオン(不安定モード)が現れ、これは理論が不安定であることを示す。タキオン凝縮(tachyon condensation)はその不安定性を解消して安定な真空を導く過程として研究されている。
理論上の問題点と因果律
もし実際に情報やエネルギーを超光速で伝達できる「実粒子」タキオンが存在すると、特殊相対性理論が許す時空構造の下で因果律(原因が結果に先行する原則)が破れる可能性が生じる。具体的には、適切な慣性系を選ぶことでタイムトラベルや自己矛盾する因果連鎖(パラドックス)を作れてしまうため、多くの理論家は実在するタキオンが観測されることに懐疑的である。
一方で理論的には「再解釈原理」(Stueckelberg–Feynman の解釈)により、ある超光速解を逆向きに運動する反粒子として扱うことで一部の矛盾が回避できる場合も示されているが、これは完全な解決策ではなく、一般的な受容には至っていない。
実験と観測
これまでに確立された実験的証拠として物質や情報が光速を超えた例はない。光速を超えるように見える現象(例えば位相速度や群速度が超光速になる場合)はあるが、これらは信号速度(情報伝達速度)が光速を超えないため因果律を侵さない。したがって「位相速度>c」の観測はタキオン存在の証拠とはならない。
まとめ(現状の理解)
- タキオンという概念は理論物理学で有用な道具であり、場の不安定性や対称性破れ、真空の選択などを記述する際に使われる。
- しかし、実験的に実在する超光速粒子が確認された事例はなく、特殊相対性理論の因果律と矛盾するため、多くの物理学者は実在を疑っている。
- 弦理論や場の理論における「タキオン」は通常、理論の不安定性を示す信号であり、適切な物理過程(タキオン凝縮など)を通じて安定化される。
このように、タキオンは単に「光速を超える実粒子」というよりも、理論の性質(安定性・対称性)を診断するための重要な概念として現代物理学で扱われている。実験的な検証がなされない限り、タキオンが実在の粒子であるという結論には達しない。
質問と回答
Q:タキオンとは何ですか?
A:タキオンとは、光速よりも速く移動できる仮想的な粒子です。
Q:ほとんどの科学者はタキオンが存在すると信じているのでしょうか?
A: いいえ、ほとんどの科学者はタキオンが存在するとは思っていません。
Q: アインシュタインの特殊相対性理論とはどのようなものですか?
A:アインシュタインの特殊相対性理論では、光速より速く加速できるものはないとされています。
Q:タキオンはどのように移動していると考えられているのですか?
A:タキオンは常に光速より速く移動していると考えられています。
Q: もしタキオンが存在するとしたら、その質量はどのくらいになるのか?
A:もしタキオンが存在するとしたら、その質量は虚数である。
Q:光速より速く移動するものは存在するのか?
A:アインシュタインの特殊相対性理論によれば、光速より速く加速できるものはない。
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